性犯罪の親告罪削除を 刑法改正の要綱を答申

性犯罪の親告罪削除を 刑法改正の要綱を答申
法務大臣の諮問機関・法制審議会は、明治時代の刑法制定以来、初めて、性犯罪の構成要件などを見直す法改正の要綱を採択して金田法務大臣に答申し、被害者らの告訴が無くても強姦罪や強制わいせつ罪などで容疑者を起訴できるようにすることなどが盛り込まれています。
性犯罪をめぐっては、去年8月、法務省の有識者による検討会が、「強姦罪や強制わいせつ罪などに問う際、被害者の告訴を必要とするのは、被害者の負担が大きい」などとして、「告訴が無くても起訴できるようにすべきだという意見が多い」などとする報告書をまとめました。その後、法制審議会の刑事法部会が見直しの在り方を検討し、12日開かれた法制審議会の総会で、性犯罪をめぐる刑法改正の要綱の採択と、金田法務大臣への答申が行われました。

要綱は、強姦罪や強制わいせつ罪などに問う際、被害者らの告訴が必要だとする「親告罪」の規定を削除して、告訴が無くても容疑者を起訴できるようにするとしています。
また、強姦の法定刑の下限を現在の3年から5年に、強姦傷害と強姦致死については、現在の5年から6年に引き上げるとしています。
さらに、強姦罪の被害者を女性に限っている規定を改め、男性が被害者の場合でも罪に問えるとしています。

法務省は、答申を受けて、来年の通常国会にも刑法の改正案を提出する方針で、仮に成立して、「親告罪」の削除や性犯罪の構成要件の見直しが実現すれば、明治40年に刑法が制定されて以来、初めてのことになります。

刑法改正 要綱のポイント

要綱では、強姦罪や強制わいせつ罪などに問う際、被害者らの告訴がなくても容疑者を起訴できるようにするとしています。これまでは、「性犯罪の被害にあったことは名誉やプライバシーに関わるため、一概に公にすべきではない」という考え方を背景に、容疑者の起訴に被害者らの告訴を必要としてきました。

これについて、法制審議会の議論では、「罪に問うかどうかを被害者に決めさせるのは負担が大きすぎる」、「性犯罪は重大な罪であり、国の責任で追及すべきだ」といった意見が出され、被害者らの告訴が必要だとする「親告罪」の規定の削除が要綱に明記されました。

また、「性犯罪が、社会で厳しく見なされていることを踏まえれば厳罰化が必要だ」という意見を踏まえ、強姦の法定刑の下限を、現在の3年から5年に、強姦傷害と強姦致死については、現在の5年から6年に引き上げることも盛り込まれました。さらに、「男性が、女性から性的な被害を受ける場合もある」という指摘などを踏まえ、強姦罪の被害者を女性に限っている規定を改めて、男性が被害者の場合でも罪に問えるとしています。

性犯罪めぐる議論の経緯

性犯罪をめぐる刑法改正の議論は、おととし、当時の松島法務大臣が、強姦致死傷の法定刑と強盗傷害などの法定刑を比較して、「物を取った罪のほうが、女性の人生を狂わせるかもしれない罪よりも刑が重いことに憤りを感じていた」として、法務省に有識者による検討会を設けたことで本格化しました。

大学教授や検事、それに被害者支援の専門家ら12人からなる検討会は8人が女性で、罰則の在り方に加え、強姦罪や強制わいせつ罪が、容疑者の起訴に被害者らの告訴を必要とする「親告罪」のままでよいのかなどについて、幅広く議論しました。

そして、去年8月、検討会は議論の過程で「罰則の下限を引き上げるべきだ」という意見や、「被害者が告訴しなくても起訴できるようにすべきだ」という意見が多く出されたとする報告書をまとめました。これを受けて、当時の岩城法務大臣が法制審議会に刑法改正を検討するよう諮問していました。