DeNA Westのマーケティングチームです。
今回は、2014年に投稿した「モバイルゲーム市場の欧米トレンド」の続編として、最新情報をディベロッパーの皆さまへお届けしたいと思います。
1, 市場規模
デロイトによると、2016年の市場においてPCゲームは$30億ドル、コンソールゲームの市場は28億に上ると予想されています。一方でモバイルゲームの市場規模は前年比20%増の35億ドルが見込まれています。
しかしながら、1ゲームあたりの平均売上を考えると、コンソールゲーム4.8Mドル, PCゲームが2.9Mドルに対し、モバイルゲームは40Kドルです。たった200のモバイルゲームが1Mドル以上の売上をあげている状態です。
この背景としては、PCやコンソールゲームに比べてモバイルゲームを構築する参入障壁が次第に低くなっていることから、モバイルゲーム数が増加し、競争が激化していることが考えられます。
では、インストール数を見てみましょう。
2016第一四半期のデータを見てみると、中国が断トツの31%、ついで、米国、ブラジル。また、iOSおよびGoogle Play別でみると、日本以外はGoogle Playが過半数を超えています。
出典:unity
一方、売上別にみてみると、iOSのほうが90%以上高く、おそらく課金率の高い米国、日本のiOS比率が高いことが要因であると想定できます。
中国がiOS売上でアメリカを抜く
2016年の第二四半期で初めて中国がiOSの売上で、アメリカを抜き首位となりました。またアメリカで上位のタイトルではなく、中国ローカルのタイトルが売上に大きく貢献したとのこと。欧米のタイトルが中国で受け入られるのは非常に難しく苦戦を強いられている状況にあります。
尚、現時点で、中国、米国、日本の3か国の売上が全体の75%を占めています。
出典:TechCrunch
また、Statistaによれば、ゲームユーザー1人あたりのクオリティ(ARPU)についても、2018年には33.54ドルと、米国を抜くと予測されており、中国が今後数年で市場をリードしていくことは明らかです。
(上)中国のARPU予測値
(下)米国のARPU予測値
出典:Statista
2,欧米市場トレンド
皆さんご存知のとおり2016年7月Pokemon GOが、ダウンロード数および売上ランキングの1位にランクインしました。これによって、米国、欧州ともに今まで売上ランキングで上位を占めていたGame of War, Candy Crush, and Clash of Clansなどがランクを下げました。しかしながらあくまでもこれは7月のランキングですので、2016年の年間ランキングがどのような変化を遂げるのかに注目が集まります。
出典:Newzoo
さて、ここ最近のトレンドをカテゴリに分けてお伝えします。
1). AR (拡張現実)
Pokemon Goで名を知られたジャンル。ランキングをみると、アメリカは8月の現在でもダウンロードおよび、売上ランキングともに1位を維持していますが、日本ではダウンロードランキングでは既に1位からは転落し、10位以下に下がっています。Pokemon Goがモバイルゲームの新しい遊び方を提供したことで爆発的なヒットとなったことは間違いないですが、文化的な違いがあるせいでしょうか、その結果はアメリカではポジティブに受け入れられている一方で、日本ではそこまでのヒットには至っていないと考えられます。
2). 複数ジャンルの融合
Clash of Clansで有名なSupercellが今年の初めClash Royaleをソフトローンチし、ワールドランキングでも上位にランクインしています。リアルタイムゲーム、戦略ゲーム、タワーディフェンス、トレーディングカードゲームの要素を組み合わせて複数の人気ジャンルを融合し、Clash of Clansの次なるヒットとなっています。
3). 育成ゲーム
日本では見られない傾向として、Fit The Fat 2やMy Talking Tomなどキャラクターの健康状態をサポートし、育成するゲームが流行しています。とくにFit The Fatは、今年8月、米国ではPokemon Goに続いてダウンロードランキングトップ10以内をキープしています。
4). eSports
PCゲームとともにモバイルゲームにおいてeSportsの市場規模が大きく伸びています。
アメリカにおいてはHearthstoneやLeague of Legendsが有名ですが、一方この1年で大きくモバイルの収益を伸ばした中国でもアリババやテンセントの投資によりeSportsが急成長を遂げています。収益源としてのeSportsは今後も主流になっていくと思われます。
出典:DOTA BLAST
出典:newzoo
今後のトレンドは?
1). 高機能化し、また接続速度も速くなったモバイルゲームですが、やはりユーザーにとっては、モバイルゲームはあくまでも余暇のために使用していて、時間があれば大きなスクリーンでゲームを楽しみたいと思っている人も多いようです。このようなニーズをくみ取り、モバイルゲーム会社がPCゲーム会社と手を組み、PC版を発売することが今後増えていくでしょう。
2). ビジュアルについては、3Dタッチのアートが今後増えていくでしょう。単に見た目の進化ではなく、操作性を高めることができることから、今後の主流となっていくのではないでしょうか。
3). モバイル世界でもVR(仮想現実)の期待は高まっていて、以下の図のとおり特に欧米がこのエリアをリードしていくようです。サムソンのGear VRによって、すでにYouTubeやStarWarsなどのアプリケーションでVRを体験することができますが、まだまだ課題は多くあります。近日中に発売予定のGoogle Daydream VRが登場することによって、この世界がさらに加速するのではないかと思われます。
出典:MMOs.com
3,日系コンテンツの躍進!?
Pokemon Goだけでなく他の日系のコンテンツがアメリカでヒットしていることをご存知でしょうか。ゲームとは外れてしまいますが、ショッピングアプリのメルカリはiOS総合ダウンロードランキングで最高3位まで躍進しました。これは、Twitter上でプロモーションコードが複数のインフルエンサーにより広がったという、マーケティング施策がもたらした結果と言われています。
一方、ゲームの分野では「ねこあつめ、NEKO ATSUME」が2015年からヒットしています。実は、英語版は当初用意されていなかったにも関わらず、CNNでその人気ぶりが放映されたり、Google Playのレビューに日本人以外の方の書き込みで溢れるなど勢いは止まらず、現在では売上の40%が海外ユーザーが占めています。ただこのゲームに関しては、CNNによると、開発者の方自体全く海外展開は意識しておらず、アプリ内の撮影機能を使ってユーザーがTwitter上で様々な種類の猫を#nekoatsumeのハッシュタグとともに拡散していったことで、徐々に韓国、中国、アメリカで有名になっていったとのことです。
4, 最後に
今回の続.欧米モバイル市場と今後についての記事はいかがだったでしょうか。1年半前に比べてもかなり市場が変化し、競争が激化していることがお分かりになったかと思います。
しかしながら、Pokemon Goやねこあつめのようにプレゼンテーションの方法やメルカリのようなマーケティングの手法によって、海外ユーザーの心を掴むことができるという道も見えてきています。
また、1年半前とは異なり、米国だけがゲーム業界を先導しているとは言えなくなってきています。AR/VRなど最新のテクノロジーは欧米がリードしていきそうですが、eSportsでは中国を含めたアジアが主体となっていくように思われますので、海外でのヒット作の出し方もジャンルごとに検討していくことが必要そうです。