私は基本的に酒を飲んで文章を書くことはない。しかし昨夜はチューハイ(ストロングゼロ)を一缶あけた状態で少しだけ文を書いたようだ。自分のことなのに推定口調なのは記憶が曖昧だからである。テキストファイルに見慣れない一文が残っていた。
こんなふうに書いてあった。
だめ。百円玉と数枚の茶色い硬貨でこんなに酔わせちゃだめ。
なぜか女口調になっている。これだけ書いて寝たようだ。自分の文章に言うのも馬鹿みたいだが、この色っぽさはなんなのか。「だめ。」である。「こんなに酔わせちゃだめ。」である。昨夜の私はストロングゼロに抱かれでもしたのか。「数枚の茶色い硬貨」という妙な言い回しも気になる。ふつうに十円玉と言え。
しかしまあ、昨夜の私の言いたいことも分かる。たしかにストロングゼロというチューハイは危険で、あれはものすごく酔いがまわる。百円玉と数枚の茶色い硬貨でベロベロになるのである。しかも口あたりがよくて飲みやすい。そのうえコンビニで簡単に買える。危険である。
ストロングゼロというのはアルコール界のチンピラである。本当にストロングスタイルでブン殴ってくる。アルコールという名のメリケンサックを拳につけてボコボコにしてくる。そしてボコボコにされた私の断末魔とでも呼ぶべきものが先の一文なんだろう。
私の場合、ここに「aikoを聴く」という行為が入ってくるとますます危険で、ストロングゼロを飲みながらaikoを再生した時はいつも異常な多幸感に襲われている。aikoはaikoで、音楽というメリケンサックで私をボコボコにしてくるからである。それは幸せすぎてヤバイという状態である。
「身体が弾ける!」
そんな感覚になる。
自分の身体がパァーンと弾け飛んで、無数のつぶつぶになって、部屋のあちこちに飛散して、床をビー玉のように転がっていき、肉体を失なって意識だけになった自分がそれを他人事みたいに上空から眺めている。ほとんど神秘体験である。ストロングゼロとaikoの併用はやめたほうがいいかもしれない。幸福で破裂して粒になって死ぬ。
だめ。
それが断末魔である。
余談だが、私がいちばん好きなストロングゼロはコンビニ限定の梅味である。正確な商品名は『しょっぱい梅干し』で、昨夜の私はこれを飲みながら「そりゃ梅干しはしょっぱいだろ!」と一人で爆笑していた。知能の低下がいちじるしい。本当に、百円玉と数枚の茶色い硬貨でこんなに酔わせちゃだめ。