【ニューヨーク=高橋里奈】約3000人が犠牲となった2001年9月の米同時テロから15年がたった11日、航空機2機が激突して倒壊した世界貿易センター(WTC)ビルの跡地で追悼式典が開かれた。厳戒態勢のなか、遺族や警官、消防士らが集まり、1機目が北棟に激突した午前8時46分に黙とうが始まった。犠牲者の名前が読み上げられ、現場は静寂に包まれた。
「今日は聖なる日。決してあの日を忘れない」。WTCで働いていた兄を亡くした52歳の男性はうつむきながらつぶやいた。式典には遺族や救助活動にあたった警察・消防関係者らのほか、限られたメディアしか出入りできなかった。ニューヨークが地元であり大統領選を争う民主党ヒラリー・クリントン、共和党ドナルド・トランプの両候補も参列した。
同時テロでは日本人も24人が犠牲になった。当時、WTC内の富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に勤めていて犠牲になった杉山陽一さんの妻、晴美さん(51)は、跡地にそびえ立つ新しい「ワン・ワールド・トレード・センター」を見上げて涙した。
昨年5月に開業した地上100~102階の展望台を10日に訪れ「複雑な気持ちもあったが、夫がオフィスから眺めていた自由の女神を同じ目線で眺めた」という。「前に進む米国の姿勢を感じた」一方で、「まだ犠牲者には無念が残っているはず」と涙をぬぐった。
当時3歳だった長男の太一さん(18)は大学1年生。母とともに式典に参加したのはこれで3度目だ。なぜ同時テロが起きたのかを知るため「アラビア語を勉強している。いつか中東、特にパレスチナに行ってみたい」と話す。父が犠牲となった事件がイスラム教徒によるものだからこそ「憎しみを超えるには相手を理解しないと」と話した。
式典には限られた人しか参列できなかったが、現場周辺には多くの市民が訪れ、ワン・ワールド・トレード・センターを見上げながら15年前の「あの日」に思いをはせていた。