男泣きした。黒田の広島入団20年越しの思いが一気にあふれ出た。新井を見つけ、熱い抱擁を交わすと涙腺は決壊。盟友の胸に泣き崩れた。緒方監督の次に胴上げされ、5度宙を舞っても、顔を手で覆い、天井を見上げることもできない。日米通算200勝を重ねたシーズンにつかんだ25年ぶりの頂点は格別だった。
「最高ですね。新井とは『このチームを強くしたいね』と言っていた。今シーズンはいつ投げられなくなってもいい、常に集大成だと思って」
マジック「1」で先発の出番が回る運命の巡り会わせ。右肩は本調子ではない。それでも、2点を守る六回一死一、二塁のピンチをしのぎ、6回3失点と粘った。バットを握れば、0-2の三回先頭でマイコラスに11球を投げさせ、打線を鼓舞(結果は三振)。四回の逆転につなげた。
「一番は若い選手が優勝を経験したこと。野球人生に生かしてほしい」
復帰1年目に4位に沈み「このままでは終われない」と現役続行。変革へ、遠慮がちな若鯉にいたずらを仕掛けた。昨季5勝と苦しんだ野村には隙を見て、ランニングシューズの中にみかんを隠す“ドッキリ”を敢行。自ら距離を縮め、ノウハウを伝えた。調整法を助言した右腕はここまでリーグトップに並ぶ14勝。“雲の上の存在”だった男が後輩と同じ目線で戦った日々は報われた。