真っ赤な歓喜の渦に身を委ねた。1度、2度…7度。緒方監督が東京ドームの宙を舞った。神ってる勢いは敵地でも止まらなかった。眼下の敵、巨人を一発攻勢で沈め、今季42度目の逆転勝ち。自らの手で25年ぶりの優勝を勝ち取った。
「最高に気持ちよかったです。今シーズンずっと戦ってきた戦いがきょうもできました。広島の皆さん、そして全国のカープのファンの皆さん、本当に長い間お待たせしました。おめでとうございます」
球団のシーズン勝利数を日々塗り替える歴史的独走V。マジック初点灯から12勝2敗と足踏みなしで駆け抜けたが、1年目は空回りの連続だった。2014年10月15日、第19代監督に就任。理想に掲げたのは1994~98年に指揮を執った三村敏之元監督(2009年11月心不全で死去。享年61)だった。
厳しさを前面に打ち出し、守備でミスが出れば「なにやってんだ!」と叱り、マスコミを通じても怒りをあらわにした。コーチ陣と起用法でぶつかり、3年ぶりのBクラス。「緒方、辞めろ!」。球場を出るタクシーにファンからは容赦のない怒声が飛んだ。
イライラしている日は無邪気な長男(10)の出番。「きょうは5点も取られたじゃん。何やってんの」とズバッと切り込まれて「うるさい!」。遠慮のない息子の言葉に苦笑いを浮かべたが、ハッとした瞬間もあった。