【球界ここだけの話(661)】
「本当に夢のようで、ちょっと出来過ぎ」。広島・黒田博樹投手(41)が10日の巨人戦(東京D)で、25年ぶりの優勝に目頭を熱くさせていた。
「優勝できる戦力が整っていると思う」。2016年シーズンが始まる前に右腕が話した言葉だが、それを聞いた自分を含めた記者たちは、やはり懐疑的だったと思うし、自分に限れば夢にすら優勝は出てこなかった。
4位で昨季を終えて15勝をあげたエース前田が米大リーグ、ドジャースに移籍した。どこを、どう考えても「優勝」の2文字ははるか遠くに離れたように思えた。
それでも8年ぶりに新井、黒田が広島に復帰して2年目。選手会長の小窪も含めてチームは一枚岩になった。田中、菊池、丸が1、2、3番で固定され、鈴木が6月のオリックス戦(マツダ)で3試合連続の決勝弾を放つなど、神った。
投げては新外国人のジャクソン、ヘーゲンズが仕事をこなし、守護神・中崎は60試合に登板。リーグ2位となる33セーブをあげ抜群の安定感を誇った。
「(優勝は)ここ10年間の成果よ」とは鈴木球団本部長。投打で若手、中堅、ベテランの選手が結果を残しリーグ制覇。ファンの気持ちは32年ぶり4度目の日本一に向いている。
「みんなで最後に日本一になって、松山のうちでビールかけしましょう。友だち3人まで、ビールも持ち込みで」と黒田はビールかけ会場で笑わせた。場所として自宅を指定された松山は「そんなにたくさんの人は入れませんから」。鯉党の夢はまだまだ続きそうだ。(玉木充)