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決まっていない終了時刻 野球試合後の乗客集中、鉄道会社はどうさばく? その工夫とは

乗りものニュース 9月11日(日)11時32分配信

合計5種類のダイヤがある西武鉄道

 関東の私鉄で唯一、プロ野球チームをグループに持つ西武鉄道。その球団である「埼玉西武ライオンズ」の本拠地、西武プリンスドーム(埼玉県所沢市)近くに、狭山線と山口線の列車が発着する西武球場前という駅があります。

【画像】西武が導入予定の「光学迷彩」特急電車

 狭山線は単線で、普段は4両編成と8両編成の列車が日中1時間あたり4本しか走らない、いたってのどかな路線ですが、西武球場前駅には狭山線と山口線を合わせ、8番線までホームが存在。このうち狭山線の1番線から6番線のホームはすべて10両編成が停車でき、まるで都心の巨大ターミナル駅を見ているかのようです。

 これには、西武プリンスドームで試合がある場合の輸送ダイヤが大きく関係しています。実際にそのとき、狭山線と西武球場前駅はどのように運用されているのでしょうか。西武鉄道の計画管理部運行計画課、石田大志主任に話を聞きました。

――プロ野球の試合時は、一度に大勢の人を案内する難しさがあるかと思います。

石田さん「試合開始時刻はナイターもデーゲームも基本的に変わらないため、往路輸送は難しくありません。ただ復路は試合展開によって大きく変わるため、たくさんの臨時電車をあらかじめ準備しておき、終了時刻に合わせて運転する列車を決める『パターン輸送』を実施しています。弊社には平日ダイヤと土休日ダイヤのほかに平日ナイターダイヤ、土休日デーゲームダイヤ、土休日ナイターダイヤの計5つのダイヤがあります」

野球の試合展開で変わる混雑のピーク

――1試合あたりの降車人員などを教えてください。

石田さん「2015年、西武プリンスドームでのプロ野球公式戦は69試合開催され、平日ナイターの平均降車人員は約7500人、土休日デーゲームと土休日ナイターの平均降車人員は約1万4000人です。いずれも平均試合時間は約3時間20分です」

――降車人員は多いときでどれくらいでしょうか。

石田さん「2015年は6月13日(土)のデーゲーム、対東京ヤクルト戦が最大で、降車人員が約1万8000人でした。この日の入場者数は3万2876人、試合終了時刻は17時13分で、17時18分から18時34分のあいだに特急1本を含む10本を運行し、約1万9000人分の輸送力を確保しました。この日は17時20分ごろに乗車人員のピークを迎え、17時20分から17時40分の20分間に、約6500人が改札を通過しています。ピークの時間帯も試合展開によって左右され、負けが見えたら早く帰る人が増えます。お客さまの動きが一定でないのが難しいところですが、試合終了後1時間に集中する傾向はあります」

――ダイヤの計画を立案するのにあたって、どのような苦労があるでしょうか。

石田さん「試合がある日は池袋駅だけでなく、西武新宿駅や本川越駅、元町・中華街駅や新木場駅からも西武球場前行きの列車が運転されます。このとき問題になるのが、西所沢駅などの配線です。西所沢~西武球場前間は単線区間であるため、片道7分30秒間隔、上下線合計で1時間あたり最大16本までの運転に制限されています。また、狭山線から池袋線への上り(池袋方面)ルートは、池袋線の下り本線(秩父方面)と平面交差しているほか、西所沢駅の狭山線ホームのうち1線は、カーブのため営業列車は8両編成までの入線に制限されています。これらの要素を踏まえてダイヤを計画しています」

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最終更新:9月11日(日)22時29分

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