それは復活の兆しなのか、迷走が続いていることの証左なのか――。
日本マクドナルドは9月12日から、平日ランチ時間帯のセット割引を復活させる。新たなランチセットの名称は「バリューランチ」。平日10時半~14時に限り、割安な値段でセットメニューを提供する。
【表】 迷走!マクドナルドのランチセット戦略の推移
■約1年ぶりにランチ割引を復活
目玉となるのは「コンビ」と呼ばれる商品。「ビッグマック」「チキンフィレオ」などのいずれかのハンバーガーとドリンクSサイズを400円で提供する。従来のバリューセットに対して、ポテトを省いた商品だ。会社の説明によれば、それぞれ単品で購入するよりも合計で80円、50円安くなるという。
また、「ダブルチーズバーガー」「てりやきマックバーガー」「フィレオフィッシュ」の3種類からハンバーガーをひとつ選び、サイドメニュー(ポテト、サラダなどから選択)、ドリンクMサイズを付けたセットを、通常時間帯より70円安い550円で提供する。
実はマクドナルドのランチ戦略はこれまで「値下げ、値上げ、撤回、再導入」というサイクルを繰り返してきた。同社がランチのテコ入れを図ったのは意外に新しく、2009年1月のこと。関東の約1500店舗で平日10時半~13時半限定で「MPowerランチ」と呼ばれるランチ割引セットを導入したことにさかのぼる。
当時の発表資料によれば、てりやきやフィレオフィッシュに加えて、「チキンフィレオ」や「えびフィレオ」といった商品のセットが490円で買えるというものだった。
この頃は原田泳幸氏が経営を主導し、驚異的な業績回復を遂げており、既存店売上高は2004年から前年超えを記録していた。ただ、客数に限っては、リーマンショックが影響してか2008年8月で連続記録更新が止まっていた。
当時の発表資料には「厳しい経済環境の中、ビジネスマンなどを応援するため」とキャンペーンの狙いを説明している。当初は関東限定で1カ月ほどのキャンペーンだったが、2009年3月に月間売上記録を更新するなど効果が見られたことから、同年5月から提供エリアを全国に拡大、終了期間も未定とし、実質定番化した。
その後、マクドナルドは2011年4月にはパワーランチを終了し、「マックランチ」を導入した。実施時間は午前11時~午後2時とほぼ変わらないが、ポテトとドリンクをMサイズからSサイズに縮小し、ダブルチーズバーガーや、てりやきを490円で提供するキャンペーンだ。同年6月からは実施時間を夜9時までに延長している。
■迷走するお昼のキャンペーン
だが、効果はいまひとつだったようだ。2012年に既存店の前年割れが定着し始め、原田マジックの終焉がひそかに語られ始めた。
会社側は同年5月頃、マックランチを終売し、「平日限定『500円バリューセット』」を開始した。こちらはポテトとドリンクがMサイズにアップし、午前11時~夜9時までセットが500円で食べられるという、かなり値頃感のあるもの。だが、このキャンペーンはわずか5カ月で終わりを告げた。
そして既存店売上高が8年ぶりにマイナスとなり、9期ぶりの減収減益決算が避けられなくなった。2012年秋、今度は「マックランチ」を導入する。実施時間を平日10時半~14時に縮小、一部の「ビッグマック」などの看板商品が550円と割安に設定したものの、平日限定バリューセットからみれば、大幅な縮小となった。
2期連続の減益が決定的となった2013年8月、原田氏が一部の職種をサラ・カサノバ氏に禅譲。カサノバ氏は当初、ランチ戦略を据え置いたが、2014年10月には「クォーターパウンダーチーズ」や「えびフィレオ」のセットも盛り込んだ、マックランチの拡大版といえる「昼マック」を開始した。
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