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広島カープ ファンと走ったVじゃけえ

 プロ野球の広島東洋カープがセ・リーグ王者に輝いた。四半世紀もの空白を埋めての優勝だ。その瞬間、赤いユニホームを身にまとった「カープ女子」も歓声を上げた。

     一度はチームを去って昨年戻ってきた黒田博樹投手、新井貴浩内野手という40歳前後の2人と、生きのいい若手、中堅の力がかみ合い、6月初めから首位を独走した。

     高額年俸の選手を数多く抱える余裕のある巨人やソフトバンクなどに比べ、資金面での劣勢は否めない。中心選手がフリーエージェント権を行使して他球団に移籍するのは止められず、その度にファンは悔しい思いをしてきた。だが、球団はドラフト会議で指名した無名の高校生らを地道に育てる方針は変えなかった。

     東京一極集中が進む中、地方で頑張っている姿は広島ファン以外の共感を呼んでいる。

     広島は原爆投下4年後の1949(昭和24)年、市民の出資で設立された。12球団で唯一、赤字を埋めてくれる親会社がなく、独立採算制を採用している市民球団だ。

     それでも、古葉竹識(こばたけし)監督が胴上げされた75年のリーグ初優勝以来、40年以上も黒字経営を続けている。昨年度の売り上げは約148億円、最終(当期)利益は約7億6000万円といずれも過去最高を記録した。観客動員も約211万人と球団史上初めて200万人を超えた。

     球団経営を支えるのが、2009年春、JR広島駅近くに完成したマツダスタジアムだ。

     米大リーグを参考に遊び心満載の仕様になっている。選手の目線で臨場感を味わえる「砂かぶり席」、赤いクッションソファに寝そべりながら観戦できる「寝ソベリア」など多彩な観客席はその一例だ。今春にはお化け屋敷を開設した。

     孫から祖父母まで楽しめる「3世代」を念頭に置いた球場運営を目指し、野球に興味のない人も楽しめるような工夫を怠らないことが右肩上がりの観客数につながっている。

     松田元(まつだはじめ)オーナーはかつて「広島ではカープは空気みたいな存在」と話していた。だが、いざとなれば「カープのためなら一肌脱ぐ」という市民は少なくない。

     総工費約90億円を要したマツダスタジアムの建設に際し、市民は1億2600万円を寄付した。設立間もない時期に経営難に陥った時は「たる募金」で乗り越えたこともあった。物心両面で市民から支えられている球団なのだ。

     スポーツには人々の気持ちを沸き立たせる効果があり、地域経済をも活性化させる。野球やサッカーなどプロチームが本拠を構える地域にとってカープの優勝と球団経営は大きな刺激になるだろう。

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