読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

小名浜あさひや食堂のめひかり定食

10年ひと昔。少々昔話を。

garadanikki.hatenablog.com

id:garadanikki さんが練馬という内陸の魚市場の話をしていらっしゃいます。このシリーズは(も)いつも楽しみに読んでいるんですが、今回とりわけ目をひいたのは「目光の唐揚げ」。これ、なんて読むかみなさんわかります? わかりますよね(笑)。

でも僕15年くらい前はわからなかったんですね。そのころ栃木で暮らしていて、内陸県は海魚に関する語彙が圧倒的に少ないんです。もちろんうまいものも知らない。それじゃいけないというので、最も行きやすい漁港は阿字ヶ浦か小名浜です。バイクで走って楽しいのは小名浜。で、魚のおいしい季節には日の出る前にちゃんと買ったバイクで走り出すー行きー先はーわかっててー内陸から卒業して一体何わかるというのかーふんふんとか歌いながらひとっ走り。

f:id:cj3029412:20031016103941j:plain

2003年秋ごろの写真です。往時の小名浜はこんな感じでした。

f:id:cj3029412:20031016104502j:plain

いい港でしょう?

f:id:cj3029412:20031016104434j:plain

漁港の市場食堂はどこもおいしいですが、ここ小名浜も例外でなく。あさひや食堂さんと、交互に食べに行っていました。

f:id:cj3029412:20031016095920j:plain

震災のとき、少し落ち着いてから、バイクに乗って、お手伝いしたんですね。ここではなく、もうちょっと街中の。思えば、あのときでした。タイカブの平たくなるように工夫を加えたリアに、あるときは座布団を縛り付け、あるときは箱を置いて結わいて、爺婆を、子供を、ねこを、大切そうなものを、泥や木くずの中からひったくるようにして、安全そうな場所へ、少しでも距離を稼ごうとした。駆け付けでもそんなことのできる、また許された、短いというのにはいささか長すぎる期間が、あのときにはあった。

ほんとはね、あさひや食堂の安否を確かめたかった。でもたぶん、流されちゃって、復旧はかなわなかったと聞いています。

tabelog.com

これは、残存記憶。

写真から、おいしさが漂ってくる。でももう、ないんだ。クラウドファンディングとからませて、だれか復活プロジェクト組んでくれないかな。

*

おいしかったんだよ。抜群に。朝のメヒカリ。店内に手書きの古いメニューが掲げてあって。「メヒカリ定食」。「なんですかこのメヒカリっての」「いいから頼んでみな。うめえから」。朝の仕事を終えた海の、陸(オカ。すなわちトラック運ちゃん)の屈強な男たちが一番に勧めるお店の1つだった。うまいんだよこれが。何のことはない、焼いたシシャモの外見が、衣の薄い唐揚げの姿形が、これが口に入れると味がまるで違う。「いわき市の市の魚なんだ。うまいべ」。うまいです!

買って帰ろうと思って市場に行くと「目光」とある。きらきらしてるんだ。「なんですかこれ」「めひかりっていうんだ」「これがあのめひかりですね」「あさひや食堂って行ってみな」「さっき行ってきてお土産にと思いまして。漢字で書くとは思わなかった。なるほど目が光ってますね。おいしそう」「うまいよ。うまかったろう」。はい。

*

夕べ、齊藤さん(@miraihack)と亀戸でホルモンをご一緒した折、肉をつまみながら彼の故郷の相馬の話から、小名浜の話に移り、あさひや食堂さんの話を出した。

「たまには都心に遊びにおいでよ」なんて餞別にならない馬のはなむけを致した。のだが、それじゃ俺だってつまらないってんで、記事を1本仕立てることにした。

知っている人は知っているように彼は実にだらしのない人物である(面と向かって何度も言っているので問題はなかろう。あるいは「きたない太宰」などとも呼んで喜んでもらっている)。それはそれとして、願わくは、相馬から出てくる彼のことを、あさひや食堂で迎えて、刺身でもつまんでみたかった。

*

(追記)

せっかくの、id:garadanikki さんの軽やかでおいしそうな記事を、申し訳ございません…