「人は視覚優位の生き物」と言われるとおり、目は、感覚器官の中でも私たちの生活に特に重要な役割を果たしています。
また、目の機能を向上させることが、他の能力を効率よく向上させることにもつながります。
赤ちゃんの目は、生まれたての頃から器官としてはほとんど完成していますが、視力、視野、色覚、追視などの機能は未熟で、月齢を経るにつれて少しずつ向上していくものです。
そのため、目に働きかける知育も、赤ちゃんの機能の向上に合わせて行う必要があります。
この記事では、新生児期から乳児期の赤ちゃんの目に働きかける知育について紹介します。
新生児期から乳児期の赤ちゃんの視力
まず、新生児期から乳児期の赤ちゃんの目の機能を確認しておきましょう。
- 新生児期:視力は0.03くらいで、顔の正面にある物をじっと見つめるものの、左右の目の協調性はまだない。白黒のコントラストは認識しており、髪の生え際や目をじっと見つめる。
- 生後1ヶ月:視力と視力がやや向上し、動く物を目で追う追視が機能する赤ちゃんもいるが、すぐに見失う。
- 生後2ヶ月:追視の機能が向上し、パパママが顔を動かすと瞳を上下左右に動かす。人の顔と物を区別し、赤など原色系の色を認識する
- 生後3ヶ月:視力は0.04~0.08(0.1以下)。左右の目の焦点が合うようになり、人や物の輪郭がぼんやりと分かる。
- 生後4ヶ月:目、鼻、口など顔のパーツが認識できるようになる。
- 生後5ヶ月:視力は0.06~0.08。物が立体的に見え始める。
- 生後6ヶ月:視力は0.1で、数メートル先の物を認識できる。視野が広くなり、人の表情の変化をぼんやりだが認識する。人見知りが出始める。
- 生後7ヶ月:視力は生後6ヶ月と大差ないが、一人でお座りできるようになると視野が一気に広がり、興味関心の向く範囲が広くなる。
- 生後8ヶ月:視力は0.1~0.15。人の顔をはっきり認識し、焦点が合う位置なら細かい物も認識する。
- 生後9ヶ月:視力は約0.2。目で見た人の表情や動きを、身体で表現しようとする(マネ)。また、後追いを始める赤ちゃんも増えてくる。
- 生後10ヶ月:視力は0.2~0.25。人の表情や動きをしっかり認識して、マネや後追いをする。
- 生後11ヶ月:視力は0.3前後。クリップ、ヘアピン、食べかすなど細かい物まで認識している。奥行きがしっかり分かるようになってきて、物や空間を立体的に認知する力がついてくる。
赤ちゃんと視線を合わせる(新生児期~)
赤ちゃんと視線を合わせることで、人や物をジッと見つめる(凝視)の練習になります。
また、目から周囲の情報を取り入れて正しく認知する力も育まれていくと考えられています。
赤ちゃんと視線を合わせる時のポイント
- パパママと赤ちゃんの鼻をピタッとくっつけ、赤ちゃんの注意をパパママに向けさせる
- 赤ちゃんの焦点が合う位置まで顔を遠ざけていく(赤ちゃんの顔の真正面30~50cmくらい)
- 赤ちゃんの目を見つめながら、声をかけたり笑顔を見せたりする
動く物を目で追わせる(追視)(生後1ヶ月~)
追視とは、動く物を目で追うことです。
赤ちゃんは、追視の機能を生まれつき持っていますが、機能するようになるのは生後1ヶ月頃からです。
動く物を目で追わせる練習を繰り返すことで、追視の機能を向上させるだけでなく、首の筋肉を鍛えられて、首すわりの時期を早める効果も得られます。
動く物を目で追わせる(追視)時のポイント
- 目で見て追視しているのが分かる前から始める
- 赤ちゃんの目の前で、おもちゃを軽く揺らして注意を引く
- 赤ちゃんがおもちゃに注意を向けたら、おもちゃをゆっくり上下左右に動かす
- 赤ちゃんが追視できるようになったら、おもちゃを動かす幅を大きくしていく
おもちゃの代わりにパパママの顔や、赤ちゃんの身近にある物を見せてあげても良いでしょう。
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赤ちゃんに鏡を見させる(生後3ヶ月~)
赤ちゃんは、鏡に映る自分や周囲をみるうちに、まず「自分」を認識し、それから自分と他人を区別するようになります。
生後3ヶ月の赤ちゃんは、まだ、鏡に映る可愛い赤ちゃんが自分だとは分かっていませんが、繰り返し見るうちに自分であることに気づきます。
赤ちゃんに鏡を見させる時のポイント
- 赤ちゃんに鏡の前に座らせる(首がすわっていない場合は、赤ちゃんをあお向けに寝かせ、)鏡に映った自分の姿を見せる
- パパママなど色々な人と一緒に鏡に映る
- 鏡に映っているのが自分だと気付いたら、鏡に向かって色々な動作をして赤ちゃんの反応を見る(手を振る、ほっぺを膨らませる、微笑みかける、大きく口を開けて声を出すなど)
赤ちゃんが鏡に慣れてきたら、マークテストで自分を認識しているかどうかチェックしてみましょう。
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色々な表情を見せる(生後4ヶ月~)
赤ちゃんは、パパママの顔をじっくり観察してマネしながら表情を獲得し、同時に、表情に合った感情も覚えていくものです。
また、赤ちゃんに色々な表情を見せてあげることで、ミラーニューロンが刺激されて脳の前頭前野が鍛えられると考えられています。
にらめっこしたり、話しかけたりしながら表情を変えると、赤ちゃんとのコミュニケーションをとることもできて一石二鳥です。
赤ちゃんが反応するのは生後4ヶ月頃からですが、新生児期から色々な表情を見せてあげることで、赤ちゃんはパパママの声やその場の雰囲気を敏感に感じ取ります。
赤ちゃんに色々な表情を見せる時のポイント
- 「にらめっこしましょ、笑っちゃだめよ、あっぷっぷ!」で表情を変える(驚いた顔、怒った顔、困った顔、笑顔など、普段あまりしない表情をたくさん見せる)
- 赤ちゃんがマネするようになったら褒める(「同じ顔できたね~」、「パパのマネだね~かわいいねえ!」など)
怒った顔や困った表情を見せて、赤ちゃんが怖がった時は、すぐに笑顔になり、「怖かったね~ごめんね~」と言いながら抱きしめてあげましょう。
いないいないばあ、おもちゃはどっち、おもちゃはどこだ?で遊ぶ(生後5ヶ月~)
いないいないばあ、おもちゃはどっち、おもちゃはどこだ?は、いずれも赤ちゃんのワーキングメモリー(ある作業を行うために必要な情報を、その作業をこなす間だけ覚えておく記憶)を鍛える遊びです。
物事の流れや展開を予測する力も養われていきます。
「いないいないばあ」で遊ぶ時のポイント
- 赤ちゃんが見ている前で、「いないいない~」と言いながら両手で顔を覆って隠す
- 「ばあ!」という声と同時に両手を広げる
- 赤ちゃんが驚いたり笑顔になったりしたら、笑顔で声をかける
- 赤ちゃんが慣れたら、タオルで顔を隠す、赤ちゃんの顔の方を手やハンカチで覆う、パパママの顔を隠す時間を長くするなどバリエーションを増やす
「おもちゃはどっち」で遊ぶ時のポイント
- おもちゃを手の平に置いて、赤ちゃんに見せる
- 両手を閉じて、「おもちゃはどっち?」と質問する
- 赤ちゃんにどちらの手におもちゃがあるか当てさせる
- 赤ちゃんが慣れたら、見せたのと逆の手でおもちゃを握って隠す、おもちゃを見せる時間を短くしたり、手の中に隠す時間を長くしたりする
「おもちゃはどこ?」で遊ぶ時のポイント
- カップと、その中に入るおもちゃを赤ちゃんに見せる
- おもちゃを床に置いて、赤ちゃんの関心を引く
- カップでおもちゃを覆い隠し、「おもちゃはどこ行った?」と質問する
- 赤ちゃんがカップを開けておもちゃを見つけたら褒める
- 赤ちゃんが慣れてきたら、カップに隠すふりをして、机の下やパパママの身体の後ろなど隠す場所を変える
まとめ
赤ちゃんの目に働きかける知育について紹介しました。
いずれも自宅で簡単に実践できるものばかりなので、試してみてください。