肺がんのステージ4とは?先ずは知識をしっかり身につけ、4つの症状と進行度をマスター!恐れずに病気と共に生きる方法を解説!
日本人のがんの死亡数第1位の「肺がん」そして「ステージ4」。がんにかかるだけでショックな上に「ステージ4」と告知された時の衝撃はとても大きいですよね。けれど、がんを根治することは難しですが、病気と共に生きる方法は、確実に増えてきています。「肺がん ステージ4」と言われた時の治療やケアについてご説明します!
肺がんのステージ4って?
肺がんと聞いただけで、治療が難しい印象があります。その上、更に「ステージ4」となると、更に治りにくく、治療法がないようにさえ感じますよね。けれど、それは感覚として持っているイメージではないでしょうか。イメージだけで病気を捉えてしまうと、必要以上に楽観的にも悲観的にもなり、治療や今後の生活に対するきちんとした判断ができなくなることになります。
今の肺がんのステージ4って、どんな治療や対策があるのか、どんな症状が起きるのか、正確な知識をもって、病気のこと、これからのことを考えてみませんか?
肺がんとは何ですか?
肺の細胞ががん化したもの
肺は肋骨に守られた空間にある、左右に1つずつある大切な臓器です。肺は、呼吸を通して体の中に酸素を取り込み、そして不要になった二酸化炭素を排出する役割をしています。
肺がんは、肺を構成する気管、気管支、肺胞の一部の組織ががん化したために発生する病気です。なぜ、肺にがんが発生するのか、原因はまだ判っていません。喫煙がリスクファクターであることは判っていますが、喫煙歴のない方も肺がんになることもあります。
また、肺がんは他の臓器に発生したがんが肺に転移した転移性肺がんと、原発性肺がんがあります。今回は、肺の細胞ががん化した”原発性肺がん”について説明をしていきます。肺がんは、日本人のがんによる死亡原因の1位であり、罹患率も第3位。今後さらに、肺がんにかかる患者さんは増加するとも言われ、日本人にとって気になるがん腫の一つです。
肺がんの分類って何があるのですか?
肺がんは、組織の形から、「非小細胞がん」と「小細胞がん」とに分類されます。
小細胞肺がん
小細胞肺がんは、肺がんの約15~20%をしめ、組織は「小細胞癌」となります。発生しやすい部位は、肺の中心部で、太い気管支が細かく分かれている手前付近になります。場所的に、喫煙との関連が大きいと言われています。
小細胞肺がんは、がんが増えるスピードが速く、脳や肝臓・骨などに転移をしやすいという特徴があります。けれど、非小細胞肺がんよりも、抗がん剤や放射線治療が効きやすいことも判っています。
非小細胞肺がん
非小細胞肺がんは、肺がんの約80~85%をしめ、組織分類は、小細胞癌でない他の「線癌」「扁平上皮癌」「大細胞癌」などの組織型を示す肺がんがすべて含まれます。そのため、非小細胞肺がんに分類されたとしても、組織型によって、発生する部位、進行する速さ、転移のしやすさが変わってきます。
たとえば、腺がんは女性に多いといわれる肺がんで、肺門部より末梢部分に発症し、症状が出にくいといわれています。治療法としては、その組織型も、抗がん剤や放射線はあまり効果的ではなく、可能であれば手術を中心に治療することが一般的です。
原因は不明、喫煙はリスクファクター
喫煙と肺がんの発症とは、関連が深いといわれています。けれど、必ず喫煙をする人が肺がんになるわけではなく、煙草を吸わない人でも肺がんになることもあります。日本人では、喫煙による肺がんのリスクは、非喫煙者と比較して、男性で4.8倍、女性で3.9倍という研究結果があるそうです。
また、他の人の煙草を吸う「受動喫煙」も、肺がんになるリスクを高めるといわれています。煙草は、他のがん(咽頭がん、食道がん、膀胱がんなど)のリスクファクターでもあります。喫煙はしないに越したことがないですね!
肺がんの検査には何がありますか?
胸部X線検査、胸部CT検査で肺に病変があるかを見ます
胸部X線検査や胸部CT検査は、肺に病変があるかどうかを調べる最初の検査になります。胸部X線検査は、肺がん検診でも行われる苦痛の少ない検査です。まずは、肺に異常があるかどうかを見極める検査をして、肺に腫瘍があるか、胸水などがたまっていないかを確認します。
気管支鏡や喀痰検査などで、肺にがんがあるかを調べます
胸部X線やCT検査で肺がんが疑われたら、腫瘍マーカー検査、気管支鏡検査、喀痰細胞診検査、胸水検査、経皮的肺生検など、肺にがんの細胞があることを調べる検査を行います。
がんはがん細胞があることが判ってはじめて、がんである事が確定され、更にがんがどの組織型であるのが判って初めて、治療を効果的に行うことことになります。そのため、がん細胞が気管支鏡や生検などでうまく取れなかった場合には、全身麻酔をかけて、直接肺などの組織を取って診断することもあります。
がんが転移していないかを調べる検査です
肺がんがあることが確定したら、更にがんの広がりを調べるために、脳のMRI検査、腹部CT検査や超音波検査、PETCT、骨シンチグラフィーなどを行います。肺がんがほかの臓器に転移しているかどうかで、抗がん剤などの全身治療なのか、放射線治療や手術などの局所治療が良いのかを選択することになります。
肺がんの進行度 ステージとは?
ステージ1
肺がんのステージでは初期になり、手術適応の状態となります。ステージ1は、更に1A・1Bに分類されます
ステージ1A
がんは肺の中にとどまり、腫瘍の最大径が2センチ以下
ステージ1B
がんが肺の中にとどまり、腫瘍の最大径が2センチを超え3センチ以下
ステージ2
ステージ1Aよりも腫瘍や病気が広がっているが、主な治療は手術であり、必要に応じて術前化学療法などを行います。
ステージ2A
○腫瘍の最大径が3センチを超え5センチ以下で、同じ側の気管支周囲や肺門リンパ節に転移がある場合
○がんは肺の中にとどまっているが、腫瘍の最大径が5センチを超え7センチ以下の場合
ステージ2B
○腫瘍の最大径が5センチを超え7センチ以下で、同じ側の気管支周囲や肺門リンパ節に転移がある場合
○腫瘍の最大径が7センチを超え胸膜や横隔膜などに浸潤があるが、リンパ節への転移がない場合
ステージ3
更にがんが広がった状態で、手術だけで根治は難しいため、抗がん剤治療や放射線治療などを併用して治療を行います。ステージ3も3A・3Bに分類されます。
○がんが肺がんにとどまらず、周囲の臓器への浸潤やリンパ節転移、反対側の肺のリンパ節や頸部リンパ節への転移はありますが、肺周囲以外の臓器・リンパ節への転移はありません。
ステージ4
ステージ4は、肺のがんの大きさに関わらず、脳・骨・副腎・肝臓などの臓器に転移している場合です。肺だけを治療対象としてもがんを抑えることができないため、抗がん剤や緩和ケア、症状コントロールのための放射線治療などを行います。
生存率はまだ一桁でも、これから「のびしろ」があります
生存率は、肺がん全体では5年生存率 39.5%、10年生存率 33.2%になります。けれど、ステージ4の場合には、まだ病状をコントロールする事が難しく、5年生存率でも一桁台にとどまっております。
ですが、次々と肺がんに効果的な抗がん剤、分子治療薬、遺伝子治療などが開発されています。また、症状コントロールをする集学的治療の技術も向上しています。これから生存率に「のびしろ」があります。
余命は、一人ひとりで違ってきます
5年生存率が低いことと、その患者さん一人ひとりの余命は変わってきます。同じステージ4と診断されても、体力があり病状がコントロールされている方は、がんと共に普通の生活を送っている方もおられます。
大切なのは、生存率の値だけに振り回されず、免疫力を高め、病気と共に生きることになります。医師が「あと半年」と余命を告げたとしても、それ以上に生きる方も沢山いますし、必ずしもがんで亡くなるとも決まったわけではありません。生存率はあくまでも平均化した値ですので、これからどう生きるのかを、考えていくことが大切です。
肺がんステージ4の症状とは?
せきは、出現しやすい症状の一つ
肺がんができた場所にもよりますが、病状が進行することによって一番出現しやすい症状が咳です。特に太い気管支の近くに腫瘍がある場合やリンパ節や胸膜に転移をした場合には、咳が出現しやすくなります。がんによって引き起こされる咳は、治りにくく、病状の進行によってさらに強くなることや止まりにくくなることがあります。
咳は体力を消耗しますし、不眠や食欲不振の原因にもなります。また、咳をすることで不安が誘発されることもあります。咳を我慢することは、他の様々な症状を引き起こしてしまうため、早めに医師に症状を伝えて、鎮咳薬を処方してもらうようにしてください。
体中の痛みが起こる事がある骨転移
肺がんは、骨に転移をしやすい傾向があります。骨は、全身になるため、背中や腰、手足など、どの部分でも痛みが出現する可能性があります。
また、胸膜や肋骨にがんが広がることもあります。その場合にも呼吸によって胸膜が引っ張られ痛みが出現したり、肋間神経痛様の痛みを感じることがあります。その場合、深い呼吸をすると痛みが出現してしまうため、呼吸が浅くなり、結果として呼吸状態が悪くなることもあります。
鎮痛薬や医療用麻薬を使用することを嫌がる方もおられますが、痛みを我慢することは、不眠やイライラ、活動力の低下を引き起こし、生活の質を下げることになります。また、痛みは、我慢しすぎると、痛みをコントロールすることが難しくなることもあります。
痛みがある時は、我慢することや、必要以上に怖がることなく、痛みの部位やどんな痛みなのか、いつから痛むのかなどを医師や看護師に伝えて下さい。早めに対処する事が大切です。
病状の進行によっておこる呼吸困難
がんが大きくなり太い気管支を塞ぐようになると、空気の通り道が細くなってしまうために呼吸困難の症状が出現することがあります。また、胸水がたまり、肺が十分に広がらない場合や、肺炎を起こしたり、たんがうまく出ないなどの原因によっても、呼吸困難が引き起こされる場合もあります。
体を動かすと症状が強くなるため、ベッドにいることが多くなり、また横になるよりも、体を起こす方が呼吸が楽になることもあります。
発熱が起こることが多い
がんにかかると微熱が出出やすくなります。また、腫瘍が大きくなることで、腫瘍熱なども起こることがあります。肺がんは、肺炎や胸水貯留、無気肺などの肺に関する合併症を起こす安いため、熱が出たり下がったりを繰り返す場合もあります。その場合には、体力の消耗を避けるために、解熱剤や消炎鎮痛剤、ステロイド剤を使用して、発熱をコントロールしていきます。
肺がんステージ4の治療
放射線治療で症状をコントロール
根治を目的にするというよりも、腫瘍のコントロールや転移巣による症状緩和のために行います。脳転移に対しては、転移の大きさや数によりますが、ガンマーナイフや外照射などを行う事があります。肺がんの中には、脳転移があるためステージⅣと診断された場合でも、脳転移をっコントロールすることで、長期に状態が安定する方もおられます。
骨転移に対しても、痛みや麻痺などの症状を抑えたり骨折を予防する目的で、放射線治療を行うこともあります。この場合には、照射回数も少なく、皮膚炎なども少なくなります。放射線治療を上手に利用する事は、生活の質を向上させることにもつながります。
抗がん剤治療がメインの治療法
ステージ4で行う主な治療になります。ステージ4は、肺以外に転移巣があるため、全身治療による抗がん剤治療が効果的です。主に入院しての治療になりますが、状態に応じて外来通院でもできる治療を選択することも可能です。また、がん細胞の分子を標的とした薬剤も次々と発売され、治療効果が上がってきています。
抗がん剤に対する副作用に対するケアも向上しています。自分の体力と生活に合わせながら、医師とよく相談して治療を選択してください。
免疫療法
免疫は、がんに対していも攻撃性がある場合があります。この体に備わった免疫力を強化して、がんを抑える効果を狙ったものが免疫療法になります。体の免疫力を高めたり、がん細胞を特異的に選択して殺す免疫細胞などを点滴したり注射をする方法があります。また、抗がん剤を併用することで、相乗効果を図る治療も試みられています。
けれど、今の時点では、肺がんに効果が高い免疫療法は見つかっていません。自費診療や臨床試験などで免疫療法を受ける時には、過剰な期待を持たず、十分に説明を聞いてから選択してください。
肺がんステージ4の緩和ケアとは?
鎮痛剤
肺がんは、転移を起こしやすいため、胸痛や骨転移を起こしている部位などに痛みが出現することがあります。その場合には、鎮痛薬を使用して、痛みをコントロールし、苦痛なく生活できるように工夫します。
また、鎮痛剤によっては、呼吸困難を軽減する効果がある種類もあります。痛みの種類や程度、そして患者さんの体調に応じて、内服、貼付薬、点滴、座薬などを使い分けて、苦痛を緩和していきます。
酸素療法
肺がんが大きくなると、腫瘍で空気の通り道が細くなってしまったり、胸水がたまり、肺が十分に広がらなくなってしまい呼吸困難を起こす場合があります。その時に、酸素を鼻やマスクから送ることで、呼吸が楽になることがあります。
酸素療法を行うことで、効率的に酸素を全身に届けやすくなり、呼吸困難が解消されたり、イライラや思考力の低下も改善することがあります。酸素療法を始めるうっとうしさはありますが、生活の質を上げる事になります。
対処療法
がん治療や病状の進行により、様々な症状が起こることがあります。その症状を緩和していることが対処療法と呼ばれるものになります。例えば、抗がん剤治療によって引き起こされる吐き気を抑えるために制吐剤を使うことや、徐々に病状が悪化した時に食欲や元気が出やすくするためにステロイドなどを使うことも、一種の対処療法になります。
胸水が貯留した場合には、胸腔穿刺を行うことで、呼吸が楽になることがありますし、脳転移のより頭蓋内圧が高くなった時に圧を下げる点滴を行い苦痛を取ることもあります。
対処療法は、その症状を引き起こす原因は治す事はできませんが、ご本人が感じている苦痛やこれから起こる可能性がある症状を未然に防ぐために治療やケアのことです。様々な症状を完全にとることはできない場合もありますが、お薬やケア、リハビリや補助用具を使うことで、生活がしやすくなっていきます。
看護方法
抗がん剤や放射線治療を行っている時の看護は、治療によって引き起こされる副作用の軽減とその対処が大切になります。たとえば、抗がん剤によっておこる脱毛や食欲不振、骨髄抑制に対するケアなどになります。
また、抗がん剤や放射線治療で起こる皮膚炎に対してもケアも大切です。皮膚の清潔や保湿をすることで、副作用が軽減できることも判っています。ご本人は治療を受けるだけで精一杯になってしまう時期もあり、その時にはご本人ができないスキンケアを行い、副作用の軽減に努めていきます。
看護は、日常生活を整える事が大切です。ベッドの周り、トイレに関する事、食事内容の工夫や食携帯の選択など、本人が過ごしやすく、そして自分でできることをより多くできるための工夫を行います。また、少しでもリラックスできるように空調や香りの工夫、入浴や足浴、マッサージなどを本人の体に負担をかけない工夫をしながら行っていきます。
心のケア
がんと告知されたことで、気持ちが落ち込みますし、「肺がん ステージ4」という完治はできない状態であることを告知されたため、自分の足場が崩れる感覚に襲われ、適応障害やうつ症状を発症することがあります。
その時は、心のケアがとても大切です。心と体は連動しているため、気持ちの落ち込みが、不眠や食欲不振、免疫力や活動性の低下を引き起こします。自分の辛さを誰かに話す、患者会などに出席して同じ思いを抱えている方と思いを共有するなどで心がケアされることもあります。
けれど、不眠が続く、食事がとれないなど身体の苦痛が続く時や、「このまま死んでしまいたい」などの思いが浮かんでくる時には、心の専門家にかかることがとても大切になります。適切な服薬やカウンセリングを受けることで、今感じている症状や思いが楽になります。これは、ご本人を支えるご家族にも言えることです。心が辛いと思った時は、医療者などに相談して下さい。
まとめ
肺がん、特にステージ4についてご説明してきましたが、参考になりましたでしょうか。肺がんは早期発見が難しく、発見された時には既に転移をしている方が多いのが今の現状です。けれど、抗がん剤や放射線治療などで病状の進行を抑えることで、根治はできないけれど、病気とともに生活することができるようになってきています。
頑張り過ぎず、そして治療のすべてを拒否しないで、自分の体調と生き方に合わせた過ごし方をみつけ、医医療者に自分の希望や意向を伝えて、これからのことを話し合って頂ければと思います。
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