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【首都スポ】

関東大学ラグビー 打倒帝京大へ東海大・木村季由監督の変身

2016年9月10日 紙面から

オーストラリア留学で刺激を受けたという木村監督。初戦はあす11日の関東学院大戦だ=相模原市で(大友信彦撮影)

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 打倒帝京大へ、東海大は指揮官も変身! 大学ラグビーは関東大学リーグ戦が10日の流通経大−日大(ニッパツ三ツ沢)、対抗戦グループは11日の筑波大−青学大(秩父宮ラグビー場)などで開幕する。大学選手権7連覇の帝京大の1強時代が続く大学ラグビーだが、対抗馬の一番手とみられるのが日本代表5人を擁する東海大だ。指揮官の木村季由監督は、今年4月から4カ月オーストラリアに留学。指揮官も選手も一回り大きくなって、ブルー軍団が初王座取りのシーズンに発進する。東海大は11日に関東大学リーグ戦で関東学院大と対戦する(浜川競技場)。

 「留学する前はちょっと迷いましたね。4カ月もチームを離れるなんて一度もなかった。1カ月離れたことさえなかったですから」

 こう語った東海大の木村季由監督は、今年4月から4カ月間、大学の派遣研究という制度でオーストラリアに留学した。この制度は、50歳までの教員が対象だった。

 「僕は今年で50歳。ラストチャンスだったんです。若いコーチも育ててきたし、任せることで彼らを育てたいという思いもあった」

 木村監督自身も、チームを離れることで、新しい刺激を受けられると思った。

 留学先はゴールドコーストにあるグリフィス大。だが研究のフィールドは大学の研究室だけではなかった。強豪クラブのボンド大で運営を学び、小中高一貫の名門サウスポート校で、ジュニアから高校生まで各年代の強化プログラムをつぶさに観察した。

 「海外の高校生は練習が少ないというのは大ウソですね(笑)。週に3日は朝からウエートトレーニングをするし、その後もグラウンドでスキル練習をしてから授業に出る。チームはいくつかのカテゴリーがあるけれど、各チームに複数人のコーチがつく。午後もほぼ毎日、練習していました」

 近年はプロ化が進み、高校卒業時にU−20代表に選ばれないと、スーパーラグビーから国代表を目指す道はほぼ消滅する。そのため、高校時代の競争が激化しているのだ。

 一方、印象的だったのはスクラム練習だった。日本では「スクラムは崩れないように組む」が金科玉条だが、「向こうでは『崩れたときはどうするか』をまず教えて、合図には『メーデー』という緊急用語を使う。危険防止の考え方の違いを感じました」

 ラグビーを楽しむ文化も興味深かった。広大な敷地に芝のグラウンドが9面。大会を開けば輸入自動車会社から地元のピザ屋まで大小のスポンサーがブースを出し、会場には子どもの遊具も設置される。選手や家族の参加の仕方も自由で、自分の試合が終わった選手や家族はさっさと帰宅してしまう例も。

 「参加に制約が少ない。多くの人がそれぞれの立場で関われる。大学の指導には直接つながらなくても、クラブ運営にはヒントになりました」

 無論、指導面でも学んだことは多かった。高校生が「ヒデ!」と呼び捨てしてくるフラットな人間関係の中、練習中もミーティングでも、誰もが積極的に発言して、意思の共有を図っていく様子を見るのは新鮮だった。8月に帰国、夏合宿に合流した木村監督は、すぐ指導に反映させた。

 「以前は、自分たちはこうするというシナリオを優先してきた面があったけど、今は『どういう状況だからどうすべき』という原理原則を共有するよう意識してます。その結果、ピッチの中のコミュニケーション力があがり、ひとつのミスが連続しなくなった。自分たちで解決できるようになったんです」

 日本代表5人を擁する強力布陣に、コミュニケーション力がつけば鬼に金棒。15人制W杯主将のリーチマイケルや7人制日本代表の豊島翔平ら、スケールの大きな選手を育ててきた東海大が、いよいよ日本一のタイトル取りへ。機は熟した!

 ◆木村季由(きむら・ひでゆき) 1966(昭和41)年5月13日、東京都江戸川区生まれの50歳。本郷高校1年でラグビーを始め、日体大に進学。ポジションはWTB。日通航空、サンリオ勤務を経て26歳で日体大大学院へ。98年、日体大元監督の故・綿井永寿氏の勧めで2部に降格した東海大の監督に就任。翌年1部に復帰し、5年目の02年度に大学選手権初出場ベスト8、10年目の07年度に関東大学リーグ戦初優勝を飾り、10年度まで4連覇。大学選手権では09年度と15年度に準優勝。家族は妻と二男。

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