新耐震基準で犠牲1軒 倒壊家屋を静岡大調査
熊本地震(最大震度7)では倒壊して犠牲者が出た家屋は34軒あったが、大地震でも致命的な損害が出ないよう1981年に導入された国の新耐震基準に基づき建てられたと推定されたのは1軒だけだったとする調査結果を、静岡大防災総合センターなどのチームがまとめた。新耐震基準の減災効果を示す成果で、20日に静岡県で開かれる日本自然災害学会の学術講演会で報告する。
耐震基準は建物が地震の揺れに耐えられる能力を定めたもの。震度5程度の地震での倒壊を防ぐため、50年に建築基準法で設けられたが、78年の宮城県沖地震を機に震度7〜6強の大地震でも倒壊しないよう現行の新基準へと見直された。
熊本地震で犠牲者が出た34軒の家屋は熊本県益城町や西原村など6市町村内にあり、震度7〜6弱の揺れに見舞われた。そこで、チームは、登記簿の記録や空中写真などから34軒の家屋の建築年を推定。その結果から新耐震基準を適用して建てられた家屋と考えられるのは1軒しかなかった。
また、34軒の家屋では計37人の犠牲者が出たが、報道や行政資料などの検証から少なくとも27人が1階にいたと推定。前震でいったん避難し、帰宅後に本震に襲われ亡くなった人が少なくとも13人いることも突き止めた。
熊本地震では、新耐震基準導入後に建てられた家屋などに大きな被害が出ているとの指摘があるが、調査チームの牛山素行・同大教授(災害情報学)は「新耐震基準が人的被害を軽減する面で効果があったと考えられる」と指摘。1階で多くの犠牲者が出ていることについて「無防備になりやすい就寝時は1階を避けることも重要な防災対策となる」と話した。【飯田和樹】