発射の3発、奥尻島沖西のEEZに落下
【町田徳丈、内橋寿明、ソウル大貫智子】北朝鮮は5日午後0時13分ごろ、北朝鮮南西部・黄海北道(ファンヘプクド)黄州(ファンジュ)付近から日本海に向けて、弾道ミサイル3発を発射した。防衛省などによると、ミサイルは約1000キロ飛び、北海道・奥尻島(北海道奥尻町)の西約200〜250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。日本のEEZ内にミサイルの弾頭や本体部分が落下したのは、8月3日に続いて2回目。日本、米国、韓国は国連安全保障理事会決議違反だと強く批判している。
菅義偉官房長官は、中国訪問中の安倍晋三首相の指示に基づき、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して迅速・的確に情報提供するよう関係省庁に指示した。政府は国家安全保障会議(NSC)を開いて対応を協議するとともに、北京の外交ルートで北朝鮮に厳重に抗議した。岸田文雄外相は「至急、(安保理の)緊急会合招集を呼びかけたい」と記者団に語り、国連でも北朝鮮への圧力を強める考えを示した。
防衛省は、飛距離からみてスカッドER(射程約1000キロ)かノドン(射程約1300キロ)の可能性が高いとみている。スカッドやノドンは移動式発射台(TEL)から発射されることが多く、事前に発射を探知するのが難しいため、自衛隊には8月8日に弾道ミサイルを迎撃する破壊措置命令が出ており、常時、迎撃態勢をとっている。
海上保安庁は、日本近海を航行する船舶に注意を呼びかける「航行警報」を出し、奥尻島沖の落下地点に航空機と巡視船を派遣した。弾道ミサイルの破片など落下物がないか調べる。国土交通省も日本周辺を飛行する航空機に対し、航空情報(ノータム)を出して注意を呼びかけた。船舶や航空機などの被害情報は入っていない。
韓国軍は、中国・杭州市で開かれている主要20カ国・地域(G20)首脳会議や、北朝鮮の政権樹立記念日(9月9日)に合わせて核・ミサイル能力を誇示することにより、朝鮮半島の軍事的緊張を高めるため狙いがあるとみている。聯合ニュースによると、韓国軍はこの時期の挑発行為があるとみて警戒態勢を強め、5日は発射前に兆候をつかんでいたという。
北朝鮮の朝鮮中央通信は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射翌日の8月25日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が国防科学部門に対し、弾道ミサイルへの核弾頭搭載や運搬手段開発を急ぐよう指示したと伝えていた。