悪性リンパ腫の兆候って?早く見つけるために、覚えておきたい症状
全身の病気だがら体のどの部分でも発症する可能性がある悪性リンパ腫。でも、セルフチェックで早期発見できる場合もあるんです。悪性リンパ腫にかかる方は増加しています。悪性リンパ腫のことを知って、セルフチェックしていこう!
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫とはリンパ球系組織から発生する血液のがんのこと!
悪性リンパ腫は、人の免疫システムを構成するリンパ系組織から発生する血液のがんです。
リンパ系組織の主な細胞は、白血球からできており、リンパ系組織は全身に分布し、いずれ血液と合流します。そのため、悪性リンパ腫は、全身の組織や器官すべてに発症する可能性があります。
悪性リンパ腫は年々増加傾向にあります。2014年の統計では、悪性リンパ腫の人口10万人当たりの罹患率(1年間に人口10万人あたり何例がんと診断されるか)は男性24.7、女性17.3となり、簡単に言えば1年間のうちに、人口10万人当たりに、男性は24.7人、女性は17.3人の割合で、新しく「悪性リンパ腫」の診断を受けたことになります。
発症年齢は65~74歳がピークです。悪性リンパ腫には、非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫に分離され、日本人は約90~95%が非ホジキンリンパ腫であると言われています。
また、非ホジキンリンパ腫は更に、Bリンパ球由来のB細胞性、Tリンパ球(T細胞)由来のT細胞性、NK細胞性に分類されます。
日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン
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悪性リンパ腫の症状とは?
1.リンパ節の腫脹
代表的な症状の一つとして、首、脇の下、足の付け根などに、痛みを伴わないリンパ節が腫れることがあります。
2.B症状
悪性リンパ腫の症状の中で、典型的で重要な3つ(発熱・体重減少・盗汗)のことをB症状と呼びます。
この症状があるかどうかで、病期分類も変わってくることがあります。
その他に皮疹や全身のかゆいが出現することもあります。
3.消化管などのしこり
悪性リンパ腫は、大腸や胃に腫瘍ができたり、肝臓や脾臓などの内臓臓器が腫れることもあります。また、脳や皮膚、鼻腔や咽頭といった耳鼻科領域、縦隔などの色々な場所の臓器や器官にしこりができるため、腫瘍を切除した病理結果で悪性リンパ腫と診断されることもあります。
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悪性リンパ腫の原因とは?
多くの場合は原因不明です
なぜ、悪性リンパ腫になるのかは原因は判っていません。
しかし、一部の悪性リンパ腫は、ピロリ菌やHTLV-1等のウィルス感染が関連しているのではないかと言われています。
悪政リンパ腫の治療・対策
1.抗がん剤治療
悪性リンパ腫の主な治療法の1つになります。
悪性リンパ腫はホジキン病と非ホジキン病で効果のある薬剤が違ますし、非ホジキン病は更にタイプによって治療方針が違いっていくそうです。
●ホジキンリンパ腫の場合
・ABVD療法と呼ばれる化学療法がおこなわれます。(ABVDは抗がん剤の頭文字になるそうです)
・病状の広がりによって、抗がん剤の回数や放射線治療の併用が決まっていきます。
●非ホジキンリンパ腫の場合
・分類によって使う抗ガがん剤が変わってきますが多くの非ホジキンリンパ腫の場合は
CHOP療法がおこなわれることが一般的です
・抗がん剤治療に加えて、CD20抗体が陽性であればモノクローム抗体療法の追加が考慮されます
・病状の広がり等によって、放射線治療と並行して行われることがあります
悪性リンパ腫は、病期分類や病気の広がり等によって、ガイドラインに沿いながら適切な抗がん剤やその他の治療を併用していくことになります。
2.放射線治療
放射線治療も悪性リンパ腫の主な治療法の一つになります。
●ホジキン病の限局期であれば、ABDV療法の回数を減らして、病巣となるリンパ領域に放射線治療を並行して行います。これは、ガイドラインに沿った治療になりますが、一番効果的な方法を医師と相談しながら決めていくことになります
●非ホジキン病の場合は、病型や病期、患者病状などによって放射線治療を行います
放射線治療は、照射した部位に効果を認める局所療法でもあります。抗がん剤治療と違い、高齢者や心疾患などの合併症を持っていても治療が可能なこともあります。リンパ腫の広がりや部位、年齢、本人の希望等により、治療適応かどうかを医師が判断し、治療を決定していきます。
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3.モノクローム抗体療法
抗体とは、抗原(異物)に対して特異的に結合できるタンパク質で、B細胞が産生すると言われています。ある抗原に対して特異的な単一抗体のことを【モノクローム抗体】と呼ぶそうです。
非ホジキンリンパ腫の中のB細胞リンパ腫にはそのがん細胞表面にCD20という蛋白がある場合があります。その蛋白を標的とする治療をモノクローム抗体療法と呼び、その分子標的薬(抗抗体療法)をリツキシマブと言います。この抗体療法が確立したことで治療効果上昇したと言われています。
また、2012年に再発成人T細胞性リンパ腫に対する抗体薬モガルリズマブも保険適応になりました。
抗体療法は、特定の蛋白に効果的に作用するため、治療効果も期待されます。現在も、研究や臨床試験が進行中のものもあります。
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4.造血幹細胞移植
標準的な化学療法や放射線治療を行っても治療効果がなかったり、治療効果を認めても再発する可能性が高い場合に造血幹細胞移植を行うことがあります。
造血幹細胞輸血の適応は、病型・悪性度・年齢・病状・治療効果・治療歴・本人の希望などを考慮して行われます。
5.支持療法
悪性リンパ腫に用いる抗がん剤によって、吐き気や便秘、脱毛、手のしびれなどの有害症状が出現することがあります、また、放射線治療時も、皮膚炎や粘膜炎等の症状が出現することもあります。
そのため、可能な限り、その症状を少なくするために、支持療法がおこなわれます。制吐剤を使用したり、便秘対策や、手足のケア、頭皮ケア等をあらかじめ行うことで、患者さんが治療継続できるようにサポートを行うことが一般的です。
悪性リンパ腫の検査
リンパ節または腫瘍生検
腫れているリンパ節や腫瘍の一部を採取して、その組織を病理学的に検査し、悪性リンパ腫かどうかを調べます。
悪性リンパ腫であると診断されたら、さらに、そのがん細胞の顔つきを調べたり、染色た検査や遺伝子検査を行うこともあります。
その検査の結果を総合し、リンパ腫の病型が決定されて行きます。
全身状態や感染症を調べる検査
採血を行い、全身状態やウイルス感染の有無を把握します。
・血液像(赤血球・白血球・血小板など)、肝機能、腎機能など
・肝炎ウイルス、HTLV-1、EBV、HIVなど
また、病気の勢い見る検査として
・乳酸脱水素酵素(LDH)
・C反応性たんぱく(CRP)
・可用性インターロイキン2(IL-2)受容体
等を調べます。
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病気広がりをみる検査
悪性リンパ腫は血液のがんであり、他の臓器や器官にリンパ腫が発症していないかを調べる可能性もあります。そのため、必要に応じた検査を行うことが必要になります。
・胸部X線検査
・超音波検査
・骨髄検査(骨髄の中に悪性リンパ腫が浸潤しているかをみます)
・消化管内視鏡検査 (リンパ腫は消化管粘膜にも発症します)
・ガリウムシンチグラフィー
・MRI
・PETCT (リンパ腫の全身への広がりを調べるのに適しています)
などの色々な検査を、患者さんの病状や必要性を医師が判断して行うこともあります。
・脳脊髄液検査(神経症状があり、脳や脊髄への悪性リンパ腫への浸潤の可能性がある場合に行います)
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悪性リンパ腫の予防法とは?
1.しこりに気が付いたら早めに病院を受診しましょう!
なぜ、悪性リンパ腫になるのか、その原因の多くは不明です。
がんは遺伝子に傷がついて発症する疾患で、その原因としては加齢・食生活・環境・物理的刺激等の要因が重なりあって発症します。
古い研究結果ですが、アメリカ人でがんで死亡した方の死亡原因となった要因の割合を調べたものがあります。
結果、喫煙が約30%、食事・肥満が約30%ががん死亡の要因として関わっていたそうです。
公益財団法人 がん研究振興財団から、「がんを防ぐ新12か条」が発表されています。
その中にも
●たばこは吸わない
●バランスの取れる食生活を
●適度に運動
の項目があります。
それに加えて、悪性リンパ腫は、首・脇の下・そけい部の痛みのないリンパのしこりを自分自身が見つけることもあります。
●身体に異常に気付いたらすぐに受診を
急にしこりが出てきて大きくなってきている、左右差がある 等に気が付いたら、念のため受診することをお勧めします。くれぐれも、気にしすぎてしこりを強くもんだり、刺激するのは避けるようにしてください。
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2.感染症の治療をする
悪性リンパ腫の多くは原因がはっきりせず発症しますが、胃に発症したMALTリンパ腫はピロリ菌感染が原因ではないかと言われています。
ピロリ菌は胃がんの原因の一つでもあります。ピロリ菌を調べて除菌をすることは、胃に発症するリンパ腫の予防にもつながる可能性があります。
3.定期検査を受ける
悪性リンパ腫は長期で経過観察を必要とする疾患です。
手術や放射線治療・化学療法が一段落したあとも、再発の有無を継続的に観察していく必要があります。
自己判断せず、定期的に受診することを続けることも再発を早期に見つけることにつながります。
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悪性リンパ腫は血液内科を受診します!
悪性リンパ腫は全身の臓器や器官に発症する病気です。
最初から、血液内科に受診するというよりも、他の症状で他の科にかかることの方が多いと思われます。
そのため、【なんで血液科?】と思われる方もおられると思いますが、組織検査で悪性リンパ腫と診断された場合は、その後の治療や経過観察をするのは、血液内科の医師になります。
また、首や、脇の下、鼠蹊部で、押しても痛みがないのにしこりが急にできた等の変化に気が付いた時は、早めに受診しましょう。
内科や外科・耳鼻咽喉科なども、リンパ節が腫脹した際には対応しています。
悪性リンパ腫は患者数が増加している腫瘍のひとつです
悪性リンパ腫は罹患数が増加している腫瘍の一つです。また、悪性リンパ腫は多くの病型や病気の進行度も違います。そのため、まわりの方が同じ「悪性リンパ腫」であっても、病気が見つかった場所も、病型も進行度も変わってきます。色々な情報や違いに振り回されず、疑問に思った時は主治医に確認しましょう。
悪性リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫・ホジキンリンパ腫ともにガイドラインに沿って治療が開始されていきます。そのため、治療回数なども決まっており、治療期間の目安も立ちやすいのが特徴です。抗がん剤治療も外来化学療法室で行う場合も多くなっています。仕事と闘病を両立している方もおられます。自分の生活や仕事内容を主治医等に説明し、自分の生活も楽しめるように配慮してもらうことも大切です。
セルフケアをしっかりと行いながら症状とうまく付き合うこと、無理をしないことが、効果的に治療を行う上でとても大切です。
そのためには、病気を理解する、治療内容を理解することから初めて下さい。
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