【コラム】韓中の「求同化異」

【コラム】韓中の「求同化異」

 中国の「永遠の総理」周恩来は1949年から58年まで外相を兼任した。革命の指導者だった周恩来が中国外交の象徴となったのは55年4月にインドネシア・バンドンで開かれた「アジア・アフリカ会議(バンドン会議)」だった。参加29カ国は西側列強の植民地支配に苦しんだという共通点があるが、政治体制などで違いが大きいため、なかなか合意点を見いだせなかった。そこで周恩来は「求同存異(共通点を探り、対立点は棚上げする)」という言葉を使った。その一言で会議は急進展し、非同盟、内政不干渉、相互不可侵などを盛り込んだ「平和10原則」が採択された。

 求同存異は周恩来以降、中国の最高指導者が外交上の難題に直面するたびによく使う用語となった。トウ小平は79年の米国との国交正常化に際し、台湾問題が争点となった際にも、92年の韓国との国交正常化を控え、北朝鮮が障害になった際にも求同存異を掲げた。2011年初めにホワイトハウスを訪れた胡錦濤元国家主席は「求同存異精神で高所から遠くを眺めよう」と述べた。60年前に周恩来が説明した「求同存異」とは「大きな共通点にも小さな相違点があり、大きな相違点にも小さな共通点がある。問題や対立にばかりこだわれば、共通の利益を逃すことになる」というものだ。

 終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐり、韓中関係が「過去最高」から「過去最悪」へと転落しかねない状況で、今月5日に朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と中国の習近平国家主席が杭州で首脳会談を行った。予想通り朴大統領はTHAADの正当性を、習主席はTHAAD反対の立場を強調した。両国間に「接点」は見えなかった。習主席は「飲水思源(水を飲むときに源を考える)」という成語まで使って、中国が韓国独立を支援した歴史に言及した。韓国がTHAADを配備するのは中国の昔の恩を忘れた行動だという意味だ。朴大統領は「私の小さな肩に5000万国民の安全がかかっている」と応酬した。

 しかし、THAAD問題で韓中関係がこじれた場合、お互いの損になるという点は韓国も中国も承知だ。中国が最後までTHAAD問題で強硬な主張を続ければ、中国の「朋友」は徐々に米国に接近してしまうはずだ。中国がそれをけん制しようと北朝鮮を抱き込めば、「核のドミノ」が韓国、日本だけでなく台湾にも達しかねない。韓国も中国を遠ざけてしまっては統一時代への準備が難しくなる。

 今回両首脳が「求同存異」に言及したこ背景には、THAAD問題で韓中関係が崩れてはならないという共通認識がある。習主席は副主席時代の2009年に韓国を訪れた際にも「求同存異」を強調した。朴大統領は5日、「求同存異」を超え、「求同化異(共通点を探り、相違点でも共通認識を拡大する)」を呼びかけた。今こそ韓中双方がそれを実践すべき時だ。解決できない問題は一番後回しにするのがよい場合もある。

アン・ヨンヒョン政治部次長
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