野党の存在意義は何か。果たすべき役割とは何なのか。

 蓮舫、前原誠司、玉木雄一郎の3氏による民進党代表選を機に、野党について考えてみる。

 国会は自民党の1強が際だつ。安全保障関連法など対決法案で、野党は多数を握る与党にねじ伏せられ続けている。

 だが、与党の政策に反対する有権者はいる。その代弁者として与党に異議を唱える。このチェック機能が「争点の可視化」などと並ぶ野党の役割だと、北海道大の吉田徹教授は著書「『野党』論」で指摘する。

 7月の参院選で野党共闘が一定の成果をあげたのも、異議申し立てへの期待からだろう。

 もっとも、かつての社会党のように政権を狙わない「万年野党」なら、政権へのNOでよかったかもしれない。衆院への小選挙区制導入で、政権交代しやすい政治が実現したいま、野党第1党に求められるのは「政権の受け皿」づくりだ。

 与党が暴走したり、失敗したりすれば、いつでも代わって政権を担いうる野党がなければ、政治に緊張感は出てこない。

 では、どうするか。まず争点を明確に示すことだ。

 同一労働同一賃金など野党が唱えた政策を、自民党が取り込む例も目立つ。少子高齢化や財政難で、現実にとりうる政策の幅が広くはないことも事実だ。それでも「自民党の2軍」と見られない旗を鮮明に掲げたい。

 3氏は「人への投資」「消費増税分を教育へ」「5兆円のこども国債」などを訴える。これらをまとめて「国土強靱(きょうじん)化の自民」VS.「教育の民進」という対立軸を描いてもいい。

 業界や財界とのしがらみがある与党には手を伸ばせない民意をくみ上げることも、野党の役割だ。たとえば脱原発。原発維持の自民党には、民進党の「2030年代原発ゼロ」は取り込みえない政策である。支援を受ける電力労組を気遣って、民進党が主張を鈍らせるようでは、政権は遠のく。

 社会構造の変化にいち早く対応することも大事な視点だ。

 人々の価値観も生き方も多様化している。独り暮らしのお年寄りやひとり親世帯が増え、正社員と非正規労働者など社会の分断も深まっている。

 社会の変化に伴う新たな政治課題と向き合うためにも、NPOなど広範な市民活動との連携が重要だ。数で劣る国会での活動だけでは与党に勝てない、という現実もある。

 15日に選ばれる新代表は、軽いフットワークでその先頭に立つことをめざしてほしい。