9月9日に北朝鮮が5回目となる地下核実験を行った模様です。北朝鮮の核兵器開発計画は、ここへきて加速している様子です。この調子でゆくとミサイルに核兵器を搭載し、それを近隣国へ撃ち込む能力が実証されるのは、時間の問題です。

米地政学サイト、ストラトフォアの主張では「この完成寸前のステージは、外国がそれにSTOPをかけることのできる最後のチャンスだ」そうです。

それには:

1)話し合いによる核兵器保有のスローダウン
2)実力行使による阻止

の二つの選択肢があります。

1)のネゴシエーションによる核兵器保有のスローダウンの例としては、イランの核兵器開発に対する各国の経済制裁という実例があります。結局、イランは核プログラムの変更に合意し、現在は経済制裁が解除されつつあります。

2)の実力行使による核の脅威の除去の例では1981年に実施されたイスラエルによるイラクの核施設爆撃(『オペラ作戦』)があります。

『オペラ作戦』ではサダム・フセインが核施設を稼働するというニュースに接したイスラエルが、シナイ半島の空軍基地から8機のF-16を飛ばします。

F-16は長距離爆撃のため通常の2倍のペイロードを積載しました。重すぎたので、滑走路が終わってしまうギリギリで、ようやく離陸できました。

この8機のF-16は敵のレーダーに捕捉されることを避けるため、地上30メートルという気違いじみた超低空で飛びます。

しかし編隊が離陸後数分して紅海のアカバ湾にさしかかったとき、想定外のことがおきます。

ちょうどアカバ湾ではヨルダン国王フセイン1世がヨット遊びをしていました。こともあろうに、そのフセイン1世のヨットの真上をかすめるようにして、8機のF-16が飛び去ったのです。

フセイン1世は英国の名門、サンドハースト王立陸軍士官学校で学んだ後、ヨルダンの空軍を作ることに尽力した人です。

みずからもパイロットとして戦闘機に乗るフセイン1世は、轟音を轟かせて超低空でイラク方面へ飛び去るイスラエルの戦闘機を目撃して、全てを悟ります。

フセイン1世はただちにヨルダン空軍に電話し、「もうすぐイスラエルがイラクの核施設を攻撃する」と伝えます。

イスラエルが1981年6月7日を選んだ理由は、それが日曜日で、イラクの核施設で働いていたフランス人アドバイザーたちがお休みの日だったからです。またF-16が核施設上空に姿を現す時間は、地対空ミサイルの兵員が夕食を取る時間にぴったり合うように計算されていました。

この周到な計算が功を奏して最初の2機は全くノーマークで爆弾を投下できました。残りの6機は高射砲の砲撃を受けましたが被弾しませんでした。

F-16の投下した16発の爆弾は全てターゲットに命中しました。

下は『オペラ作戦』のドキュメンタリーです。



さて、話を北朝鮮に戻すと、地政学サイト、ストラトフォアは「アメリカをはじめとした近隣国にとって難しいのは経済制裁や政治的圧力を北朝鮮に対してかけたところで、それでは不十分なだけでなく、それが北朝鮮の核開発を一層加速させる結果を招いていることだ」と指摘しています。

もし米国が先制攻撃を仕掛けたら、米国の友好国である韓国や日本は、北朝鮮からの攻撃の目標にされ、いわゆる「コラテラル・ダメージ」となるリスクがあります。

このような状況の中で、消極的な対応としては防衛ミサイル網に頼るという方法しかありません。

敵が核ミサイルを発射したかどうかを監視、追尾するレーダー・システムには「AN/TPY-2」というのがあり、これはレイセオン(ティッカーシンボル:RTN)が作っています。

また核ミサイルを空中で撃ち落とす迎撃ミサイルには「THAAD」があり、これはロッキード・マーチン(ティッカーシンボル:LMT)製です。

韓国政府は既にTHAADを配備しています。

ただTHAADは核ミサイルが打ち上げられた直後にそれを撃ち落すことはできません。着弾点近くになり、降下してくるところをインターセプトするだけです。