政府税制調査会(首相の諮問機関)は9日午前、首相官邸で会合を開き、2017年度税制改正に向けた議論を始めた。安倍晋三首相は「働き方改革」につながる配偶者控除の見直しなどの所得税改革と、「パナマ文書」問題を受けた課税逃れ防止策の検討を指示した。年末に向けた調整が本格化する。
首相は専業主婦世帯の税負担を軽くする配偶者控除について「女性が就業調整することを意識せずに働くことができるようにするなど多様な働き方に中立的な仕組みをつくる必要がある」と指摘した。
現在は妻の年収が103万円以下であれば、夫の課税所得から38万円を差し引ける。控除適用を受けるためにパートで働く主婦らが賃金が上がっても働く時間を減らさざるを得ないといった弊害が出ている。
見直しでは、夫婦なら片働き世帯でも共働き世帯でも一定の控除を受けられる「夫婦控除」とする案を軸に検討する。ただ配偶者控除を廃止・縮小すれば税負担が増える世帯が出てくる可能性があるため、与党内には慎重論もある。
税逃れ防止の強化は、タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴いたパナマ文書の公表を受けて国内外で関心が高まっている。首相は「パナマ文書の公開で租税回避への問題意識が高まるなか、国際的なプロジェクトの着実な実施なども検討してほしい」と強調。法人税率が20%以上の国や地域にある子会社が得た配当や知的財産による所得を、日本の親会社の所得に合算して課税できるようにする仕組みづくりに入る。
会合では会長に中里実東大教授を再任した。政府税調と連動し、自民、公明両党の税調も今秋以降、協議を始める。