中央アジアのウズベキスタンでカリモフ大統領の死去に伴い、8日、大統領代行が任命された。また、カザフスタンとアルメニアでも同日に首相が交代した。これらは旧ソ連崩壊後の中央アジアで、最大の政治変動となる。
中央アジア最大の人口を有するウズベキスタンを旧ソ連から独立する前から統治してきたカリモフ大統領の死去は先週発表された。これを受けて同国議会の上下両院合同会議は、2003年から首相を務めてきたミルジヨエフ首相を大統領代行に任命した。
また、隣国カザフスタンを旧ソ連時代から統治してきたナザルバエフ大統領は2年以上ぶりに内閣大改造に着手し、カリム・マシモフ氏を首相からはずして保安当局の責任者に任命した。アルメニアでは、政権に対し国民の不満が拡大したことから、アブラハミャン首相が辞任した。
グラスゴー大学の中央アジア研究専門の講師、ルカ・アンセスチ氏は「今週は中央アジアの政治が大きく変動していることを示す出来事が続いた」と述べた。
■背景にロシアの景気後退
首脳の交代が相次ぐ背景には、同地域が20年来で最悪の経済低迷にあえいでいることがある。国際通貨基金(IMF)は、00年から14年まで平均8.3%だった同地域の成長率が、1次産品の価格低迷とロシアの景気後退の影響で、今年は1.2%にまで落ち込むと予想している。
ウズベキスタンでは、年内に実施される選挙に先立って議会がミルジヨエフ氏を大統領代行に選出したことは、同国の支配層がカリモフ氏の後継者に同氏を指名するとの明確な意思表示だといえよう。
同国の憲法では、大統領が死亡または職務遂行能力を失った場合、大統領職は上院の議長が引き継ぐと規定している。だが、同国上院は、ユルダシェフ上院議長(ほとんど無名とされる)は「ミルジヨエフ氏の政府職務での長い経験と、国民から尊敬を集めている点を」考慮して指名したと述べている。
カザフスタン政府の内閣改造も、同国が初の権力移行の準備を進める中で行われた。ナザルバエフ氏(76)は、後継者指名の計画はないと発表した。だが、アナリストらは、権力移行を見据え同国の支配層が駆け引きを既に始めているとみる。
リスクコンサルタント会社のGPWで中央アジアを専門とするリビア・パッジ氏は、マシモフ氏の解任の恩恵を主に受けるのはナザルバエフ氏の娘で副首相のダリガ・ナザルバエワ氏だと指摘した。「マシモフ氏の解任が示唆するのは、ナザルバエワ氏にまだ後継者の芽が残っているということだ」
マシモフ氏は、今年は同国にはまれな抗議行動が相次いだことで解任された。西部の都市アクトベで武装集団と警察との銃撃戦が発生したことから、同国政府はテロ攻撃の可能性について警告を発した。有能な管理者だとみられるマシモフ氏を保安当局の責任者に任命したのは、今後行われる権力移行にからんだ混乱を想定したものとアナリストは話す。
アルメニアのアブラハミャン氏の辞任は、議会選挙を来年に控えていることから、多方面で予想されていた。経済が減速し、また、飛び地のナゴルノ・カラバフを巡るアゼルバイジャンとの紛争再燃で政府の対応をめぐる緊張が高まる中、今年の夏には大規模な抗議行動が行われた。
By Jack Farchy
(2016年9月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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