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| 参考文献:大熊輝雄 臨床脳波学 第5版(医学書院)
末永和栄・岡田保紀 最新脳波標準テキスト(メディカルシステム研修所) 解析データは、脳波解析プログラムATAMAP U(キッセイコムテック)による。 |
| Q1;アルファ(α)波とはなにか? |
| 1929年にドイツのHans Bergerによってベータ(β)波とともに命名された。
脳波の中でもっともポピュラーな名前であり、あまりに有名でかつ覚醒時の正常脳波の中で唯一はっきりした波形をとるがゆえに、医学分野以外においては、時としてその本質を逸脱した扱いをされていることもある波形でもある。 アルファ波は、覚醒、安静、閉眼の条件下で後頭部優位に出現し(ただし、開眼でも特に刺激がなく活動レベルが低下した状態では出現することがある)、左右の差は少ない。正常成人においては10Hz中心に分布し、9〜11Hzの範囲にほとんどの人が含まれる。振幅は50μV程度で、大きくても100μV以下である。 その成因については次のような仮説が考えられているが、いまだに確定されたものはない。アルファ波のほぼ10Hzのリズムと漸増漸減現象からみて、以上の諸要素の組み合わせによるのではないかとする考えもある。 (1)ニューロンの自発的活動によるとする説 (2)脳幹部視床のペースメーカ機能によるとする説 (3)大脳皮質と脳幹部視床間の反響回路によるとする説 |
| Q2;アルファ波抑制(α-Attenuation)とはなにか? |
| 脳波は大脳皮質のたくさんのニューロンにある、さらに膨大な数のシナプス結合での電位変化(シナプス後電位)の集合であるマクロ的電位変動と考えられている。したがって、その空間的および時間的分散性のために一定の形状の波形にはならないのが常である。
大脳皮質の活性度が低下した時にはある程度の同期性がみられ、その代表的な状態が睡眠時の脳波である。 覚醒時においては、安静閉眼時にある程度同期性の高くなった波形であるα波がみられる。開眼することによって視覚情報を処理したり、何かを考えるなど精神的な負荷がかかったり、緊張すると、分散性が高くなる結果、同期性が低くなってα波の振幅が減少したり、消滅したりする。これが、α抑制とか、α-Attenuationといわれる現象である。Q3の図は、開閉眼による脳波の違いを解析したものである。 また、下の図は、精神的負荷として暗算をした時の脳波である。閉眼状態で、波形の中央部分から左側は安静時、右側は暗算中である。暗算中は閉眼であるのもかかわわず、α波が抑制を受けていることがわかる。 一般的には暗算のような精神的負荷がかかった状態ではこのようにα波は減衰するが、暗算の訓練を重ねた人では暗算中にもα波が出現していることもある。これは、脳が活動したからα波が出現したのではなく、おそらく訓練によって、脳全体を活性化させることなく選択的な活性化の状態で作業できるようになっているためにα波が減衰しなかったのではないかと思われる。同様のことは将棋などの上級者が考えてる時などにもみられることであるが、そうではない一般的な人では、精神的負荷がかかったり考え事をしている時には脳全体の同期性が低下し、このようなα波の減衰が起きる。 |