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藤川 大祐 助教授インタビュー (千葉大学教育学部助教授、NPO法人企業教育研究会理事長) 第2回 テレビゲームにもリテラシー教育を ――テレビゲーム好きの子どもはテレビゲームに対するリテラシーが高いとのことですが、それでも何か少年犯罪が起きると、テレビゲームが標的にされることが多いように思えます。その理由はどのようにお考えですか。 藤川:ある年代から上はテレビゲームを経験していないことが大きな理由でしょう。つまり、自分の幼い頃にテレビゲームがなかったのです。自分が経験していないものは悪者にしやすい。かつてのテレビもそうで、少年犯罪が起こるとスケープゴートにされていました。 しかし、現在はテレビを全く見ないという人は大変少数派です。ですから、テレビのせいにはしにくい。それで、テレビゲームを経験してこなかった世代は、テレビゲームをやるようになったから子どもがおかしくなったと考えると、納得しやすいのではないでしょうか。そこに科学的根拠がないとしてもです。 また、テレビゲームというのは、テレビと異なりやらない人とやる人に分かれるものでもあります。テレビゲーム世代であっても、やらない人にとっては、やる人に何か問題があるのではと考えがちなのです。そしてこれは、テレビゲームが多くの人に受け入れられ、影響力を持ってきた裏返しでもあります。 テレビゲームのリテラシー教育はどうなっていく? ――そうしたなかで、藤川助教授は今後どういったテレビゲームに関するメディアリテラシー教育をしていきたいとお考えですか。 藤川:メディアリテラシー教育をキャリア教育としてとらえ、「総合的な学習の時間」(注2)を利用し、テレビゲームを題材とした授業を行いたいと考えています。1〜2時間で完結させる授業ではなく、ある程度まとまった時間を取った授業を近い将来展開していく予定です。テレビゲームに夢中な子どもたちが、好きなことと将来のつながりがわからずに、知らず知らずのうちに不安になっているとしたら、そのヒントを与えられるような授業を増やしてあげたいですね。 テレビゲームを学校教育で扱うということ自体がなかなか難しいのですが、これだけ受け入れられているメディアに対して、接する時間を制限するという指導しか教師ができないというのもおかしな話です。 テレビゲームは大変な手間暇をかけて作られており、技術やアイデアが結集された素晴らしいものを、私たちは享受しています。私はメディアリテラシー教育を通じて、テレビゲームが好きな子どもたちが、将来ゲームクリエイターやその他のエンタテインメント性の高い分野の仕事に就き、いい作品や仕事を残してくれるような環境をつくっていきたいと考えています。 テレビゲームと子どものいい関係を保つには? ――保護者の方に向けて、テレビゲームと子どものいい関係を保つための提言のようなものがあれば、教えてください。 藤川:一番大事なことは、子どもが本当に好きでテレビゲームをやっているのか、惰性でやっているのかの区別をすることです。テレビゲームには、本当に楽しくてのめり込んでプレイしているときと、つい惰性でプレイしてしまうときがあるからです。常にドキドキワクワクしながら、テレビゲームを楽しんで欲しい。テレビゲームへの理解を深めるために、親が子どもと一緒にテレビゲームで遊んであげるのもいいと思います。 もし惰性で暇潰しにテレビゲームをやっているのを見つけたら、その時間は他のことに使うように促すのがいいでしょう。また、子どもが個室でプレイしている場合、惰性でテレビゲームをやっていても親は気づきませんから、なるべく個室にゲーム機を置くのは避けるべきです。 ――最後に、メディアリテラシーに興味を持った保護者の方が、メディアリテラシーを学ぶのにいい方法はありますか。 藤川:テレビゲームにおけるメディアリテラシー教育は、まだ始まったばかりで、それが一冊にまとまった本というのはありません。ただ、やらなくてはいけないことなどは概ねテレビと重なりますから、メディアリテラシーに関する入門書をいくつか読むのがいいでしょう。 (註釈) (注2) 「総合的な学習の時間」とは、「地域や学校、子どもたちの実態に応じ、学校が創意工夫を生かして特色ある教育活動が行える時間」および「国際理解、情報、環境、福祉・健康など従来の教科をまたがるような課題に関する学習を行える時間」のこと。 2000年から小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校にて段階的に導入がスタートした。子どもたちが各教科等の学習で得た個々の知識を結び付け、総合的に働かせることができるようにする狙いがある。 (プロフィール) 掲載記事への皆様からのご意見をお待ちしております。 |