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武藤春光先生インタビュー (弁護士、帝京大学名誉教授) 第2回 表現の自由を最大限に尊重しつつ、 公共の利益を損わないように努める義務を負う ――2006年3月より旧レーティング制度(「全年齢対象」「12才以上対象」「15才以上対象」「18才以上対象」)から新しいレーティング制度(「A(全年齢対象)」「B(12才以上対象)」「C(15才以上対象)」「D(17才以上対象)」「Z(18才以上のみ対象)」)に移行いたしました。 武藤:「Z」区分が導入された新しいレーティング制度以降は、各自治体の理解も深まり、その後は家庭用ゲームソフトに関しては自治体ベースで個別に「有害図書類」を指定するようなことは起きていません。旧レーティング制度のころは、各自治体のこういった取り組みが盛んに行われていましたが、新レーティング制度導入以降は、各自治体もCEROの取り組みを信頼してくれた結果からなのか、また、関心がなくなったからなのかはわかりませんが、あまり問題として取り上げられなくなりました。いずれにせよ各自治体の理解が深まったことが、一番の大きな要因であると思っています。 ――今後の課題についてお聞かせください。
武藤:今後、CEROの審査するゲームの範囲をどこまでにするかという点です。これからは携帯電話やスマートフォンといったゲーム専用機以外でのゲーム利用が増え、ゲームの種類・選択肢が増えていくにつれ、みなさんがゲームに接触する頻度も当然増えてまいります。それに加えてこれまでの家庭用ゲーム機とは違ったゲーム利用というものも出てまいります。 ――最後に、表現問題に関する総括的なご見解をおうかがいします。表現者側には、「表現の自由」という権利があると同時に、「公共の利益を損わないよう努める」義務があると考えられますが、法律面からみた際に、「権利」と「義務」についてどのようなバランスが大事だとお考えですか? 武藤:ゲームの中での「わいせつ描写」や「暴力表現」などに対する基準は、時代とともに変わるものですが、CEROとしては、その時代の要請に適合する価値基準を明示するように努力しています。従って、その基準によって、個人であれ企業であれ評価されるわけです。ですから、その基準を超えるものは認められないというのが基本的なスタンスです。要するに、表現の自由を最大限に尊重しつつ、公共の利益を損わないように努めるということです。 武藤春光( むとうしゅんこう ) 昭和 4年 3月生まれ。昭和26年3月東京大学法学部卒業、昭和28年 4 月 横浜地裁判事補、昭和38年 4月 東京地裁判事、昭和41年 4月 司法研修所教官、昭和57年 4月 東京高裁判事、昭和59年 4月 新潟地裁所長、平成 3年 5月 広島高裁長官、平成 4年 9月弁護士登録(第一東京弁護士会)、平成 4年10月帝京大学法学部教授(平成15年3月より名誉教授) 掲載記事への皆様からのご意見をお待ちしております。 |