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高杉紳一郎先生インタビュー (九州大学病院リハビリテーション部 診療准教授) 第1回 周囲が驚いた整形外科医からリハビリテーション部への転身 ――はじめに先生にお聞きしますが、リハビリテーション(リハビリ)や転倒予防などの研究を始めたのはどういった理由からなのか教えていただけますか?
高杉: 実は私は、初めからリハビリ専門にスタートしたわけではなく、大学を卒業してずっと整形外科の医師として10年間過ごしてきました。臨床現場で骨折や関節炎などの患者さんの治療に携わってきたのです。もちろん手術も連日行い、そしてリハビリにも立ち会ったりしてきました。毎日患者さんを診察して、注射して、薬を出して、手術して、リハビリして……、それが整形外科医として当然の事のように思っていました。ところがある日、見方を変えて患者さんの立場になって考えてみたのです。患者さんは、注射されて、薬を飲まされて、手術されて、リハビリに取り組むわけですが、「この一連の行為を喜ぶ人は誰一人としていないのではないか?」という事に気づいた訳です。そうした課題意識を持ち続けた結果、最終的に「予防医学」という考え方にたどり着き、その大切さに目覚めました。今から18年ぐらい前のことです。 ――それまで医師として活躍されてきて、突然の転身に周囲の反応はどうでしたか?
高杉:それはものすごい反応でした。医者の中では、外科系からリハビリに移ることは“メスを捨てる”というのです。手術をせずにリハビリに移るというのはそれほど大きなことなのです。転身の理由を「健康を悪くしたのか?」「目を悪くしたのか?」などと同僚や先輩からも言われました。大学を卒業して10年間外科医として経験を重ねて自信がつき、手術もこなして、患者さんの病状に対して的確な診療ができる。そういった意気揚々の時期でしたから、なおさら大きな決断が必要でした。 高杉紳一郎( たかすぎ しんいちろう ) 1958年、 福岡県生まれ。九州大学病院 リハビリテーション部診療准教授、医学博士。昭和58年に九州大学医学部卒業。以後10年間は整形外科医として臨床診療に従事。平成5年から九州大学病院リハビリテーション部に勤務。整形外科医局長や健康科学センター講師を歴任。専門は、健康増進医学(特に転倒・骨折の予防)や、高齢者・障害者福祉。介護保険審査会委員。日体協公認スポーツドクター。 掲載記事への皆様からのご意見をお待ちしております。 |