来たれ移住者 徳島・上勝町が育成支援
モミジや梅などの「つまもの」、商品化
モミジや梅など料理の飾りに使われるつまものを山で採り、商品化する「葉っぱビジネス」を30年にわたって展開する徳島県上勝町が、町内の山林約30ヘクタールを買い取って商品に適した植物を栽培する計画に乗り出した。農家がそれぞれの私有地で採っているのが現状だが、高齢化が進んでおり、移住者らにも新たにビジネスを担ってもらう狙いだ。
上勝町の人口は1600人台。葉っぱビジネスに携わる農家は約200戸で、年収が1000万円超の世帯もある。しかし、平均年齢は70代に達しており、山に入ることが難しくなった人も多い。便利な生活を求めて街へ引っ越す世帯もあって町の人口はこの10年間で2割減っており、いかに移住者を増やすかが課題となっている。
だが、葉っぱビジネスは農家が所有する山で栽培したり、自生する葉や実を採ったりしており、移住者が土地を購入して栽培技術を習得するには年月がかかる。移住してきても安定した収入が得られず、数年で町を出る人もいるという。
そこで、1980年代に葉っぱビジネスを発案し、現在は契約農家に出荷情報を提供する第三セクター「いろどり」社長、横石知二さん(57)が「移住者が技術を学び、町のシンボルにもなる場を」と、町が買い取った山林に商品となる桜や梅などを植える構想を打ち出した。土地を持っていない人に栽培や収穫のノウハウを伝え、つまものを栽培しない区域は林業の研修にも利用して、山全体を人材育成の場とする考えだ。
町は中心部の杉林約30ヘクタールを買い取る予定で、そのうち約4ヘクタールの購入費として今年度予算に880万円を計上。来年度には植樹を始め、今後5年程度で残りの土地についても地権者との交渉を済ませる予定。
横石さんは「葉っぱビジネスの後継者を育てなければ、上勝町そのものが消滅しかねない。どうすれば若い人たちがここで暮らしていけるか、考え続けることが大切だ」と話す。【河村諒】