燃費に優れるハイブリッドモデル。しかし値段が高いぶん、元をとるまで時間がかかる。本企画では価格の高い輸入ハイブリッドモデルの、分岐点を探る!
トヨタがリードしたハイブリッド車。いまではヨーロッパ勢の追い上げもすさまじくドイツ勢を中心に猛烈な勢いでニューモデルを登場させている。しかし本誌でもよくやるようにハイブリッド車は値段が高いぶん、元をとるまでそうとう距離を走らなくちゃならない。
ちなみに、シエンタの場合は、価格差分を取り戻せるのは年間1万5000km走る人では、約15年もかかるという計算だし、フィットの場合も同じ年数使わなければ元をとれない。
じゃあ、値段の高い輸入車はもっと凄いことになるんじゃないかと思い立ったのが本企画。とりあえず電卓片手に計算してみたところ、結果は驚くことに!
ちなみに燃費計算はJC08モード燃費の80%で計算。レギュラーガソリン110円、ハイオクガソリン120円で算出してみた。
それではさっそくメルセデス・ベンツのコンベンショナルエンジンとハイブリッドモデルの比較から見てみよう。
トップバッターはCクラスセダン。C200アヴァンギャルドとC350eアヴァンギャルドを比較してみた。どちらもベースとなるエンジンはエンジン型式274の直4、2ℓターボ。価格差は176万円。燃費はJC08の8割とするとC200が13・2km/ℓ、C350eが13・8km/ℓとごくわずかの差だ。
これをベースに計算してみると、年間それぞれ1万5000km走ったとすると、1年で使用する燃料代の差は6000円。176万円の価格差を取り戻そうとすると、実に293年も使わなければ元がとれない。もはやクルマの耐用年数を完全に超えている。う~ん、これは凄い!
で、お次はBMWの2シリーズアクティブツアラー。比較は392万円の218iラグジュアリーと、488万円の225Xeラグジュアリー。ハイブリッドモデルの225Xeにはプラグインレンジ、EVレンジがあるが、ハイブリッド燃費消費率の17・6km/ℓをベースに比較してみると、1年間に使用するガソリンは225Xeが1071ℓ、218iは1119ℓとなり、218iとは燃料代の差は年間5766円。
これで価格差の96万円を取り戻そうとすると166年かかる計算となる。
同じような計算方法で、3シリーズの320iと330eを比較してみる。
両車直4の2ℓターボエンジンを搭載。実燃費は320iが12・3km/ℓ、330eが14・2/ℓ。価格は320iが489万円、330eが577万円で価格差は88万円だ。
年間ガソリン使用量の差は1万8960円となり、88万円の差額を取り戻そうとすると、46年でやっと元をとれる計算となった。
Cクラスや2シリーズに比べれば、少しは現実的な結果になったが、それでも半世紀使わないと元がとれないなんて……。50歳くらいで330eを購入したとすると、ご臨終の頃まで使ったとしても元がとれない計算だ。
ましてやクルマはある程度の年数が経つとモデルチェンジするから、元がとれるころには3代くらい進化しているのかもしれない。これはもう、本当にハイブリッドはお得なのかと疑ってもしょうがない結果だ。
BMWには5シリーズにもハイブリッドモデルが用意されているので、それも比較してみる。細かいことはすっ飛ばして結論だけ言えば、5シリーズの場合、926万円の535iラグジュアリーと、931万円のアクティブハイブリッド5を比較してみると、意外や意外、価格差はわずか6・3年で元がとれる結果に。
これは車両価格がたった5万円しか違わないからこういう結果になった。ついでに言えば実質燃費も535iが10・4km/ℓ、アクティブハイブリッドが10・9km/ℓとこちらの差も小さかった。
ただ、こうなると、「じゃあどっちを買ってもいいじゃん」という話になる。5万円高い複雑なメカを持つハイブリッドを買わなくても、「コンベンショナルな従来型のメカを持つ535iでいいよね」という話になってしまうことも。それに故障の確率も低くなるわけだし。
輸入車のハイブリッドモデルはやはりドイツ車が中心になってしまうが、次にVW、ポルシェのクルマで比較してみよう。
まずはゴルフ。同じ直4、1・4ℓをもつ、TSIハイラインと、GTEの比較。価格はTSIハイラインが328万9000円で、GTEが469万円だから約140万円の差。
前記のような計算式で元がとれるまでの年数を計算すると76年という結果に。
もう一台のVW車、パサートの場合は、こちらTSIハイラインとGTEの比較だ。価格差105万9000円を取り戻すまでは、なんと197年という計算に。
これがTSIハイラインではなく、価格の安いトレンドラインと比較するともっと長期的なことになった。恐ろしい話になってきました。
つづいて、同じドイツ勢のポルシェ。先代カイエンからハイブリッドモデルの投入が始まったものの、現在ハイブリッドモデルが用意されているのはそのカイエンのみで、以前あったパナメーラのハイブリッドモデルは現在ラインアップから外れている。
比較はSとSEハイブリッド。エンジンは前者が3・6ℓ420ps、後者が3ℓ416psと違いがあるものの、実質燃費はSが7・5km/ℓ、ハイブリッドモデルが14・0km/ℓ(編集部データ)。
この燃費の差で年間1万5000km走るとするとハイオクガソリンの使用量はSが200ℓ、ハイブリッドが1071ℓとなり、燃料代の差は11万1960円。
車両価格の差は27万円なので、カイエンの場合、3年を待たずに元をとることが可能。国産ハイブリッドを含めて元をとるまでは膨大な時間を消化しなければいけないものの、ポルシェの場合はわずか3年だ。つまりこれ、価格差が27万円ということと燃費のギャップがほかのクルマよりも大きいことが要因で、結論的にはポルシェの技術力が高いことを証明している。なにせ実質燃費がハイブリッドは2倍も違うからだ。
では最後に最新モデルのボルボXC90いってみよう。
押し出し感の強いフロントフェイスがなかなかカッコいいが、XC90は4モデルがラインアップしていて、最高峰モデルがハイブリッドのXC90T8ツインエンジンAWDインスクリプション。価格は1009万円とカイエンよりお得になっている。その下のグレードのT6AWDインスクリプションと比較してみると、T8ツインエンジンが実質燃費9・36km/ℓ、T6が12・24km/ℓ。これを基に年間ガソリン使用量を計算すると差額4万5360円。車両価格の差、100万円を取り戻すには22年という結果になった。年数的には長いものの、今回取り上げたほかのハイブリッドモデルと比較するとまだまだ短いほう。
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さてさて、こうしてみてきたハイブリッドモデル。元をとるまでにずいぶん時間がかかることが明白になった。はたしてこれって本当にお得なんだろうか?
もはやハイブリッドモデルはある種のステイタスになっていて、元をとるとかどうかの話ではなくハイブリッドに乗っていることがカッコよくて、なにより大事なことになっているのかもしれない。
それでもハイブリッド車をこれから買おうと思っているなら、コンベンショナルモデルの燃費との差がなるべく大きいものを買うのが得策といえそうだ。
当たり前の話ではあるが、ハイブリッドは燃費効率を高めるために開発された技術だ。トヨタのTHSはまさにその王道を行くハイブリッド。実用領域での燃費効率では、いまだこれをしのぐハイブリッドシステムは存在しないと言ってもいい。
'90年代の終わり、トヨタがTHSを開発していた当時、ライバルは最初それを冷ややかに見ていた。どのメーカーも「理論的に優れているが、コスト面で商品化は難しい」というスタンス。欧州メーカー技術陣のなかは「シティユース向けのニッチ商品」と酷評する人も珍しくなかった。
しかし、結果はご覧のとおり。世界中で燃費規制が強化されるようになると、モード燃費に強いハイブリッド化は避けて通れないトレンドとなる。このスタートの出遅れが、日本型ハイブリッド(≒THS)と欧州型ハイブリッドの違いを生むことになる。
ハイブリッド車の量産で先行するトヨタは、あらゆる面でコスト的に有利。これが商品企画に大きく影響する。
ハイブリッド車は、電池、インバータ、PCU、電動ブレーキ、電動エアコン補機類など、新しい部品が山ほど必要になる。それらをもっとも安く調達できるトヨタは、価格競争力に自信があるからマスゾーンが狙える。強いコスト体質がないと、プリウスやアクアのようなお手頃価格のハイブリッド車を大量生産することはできないのだ。
では、出遅れた欧州勢はどうするか? まずは、トヨタと競合しない高価格ゾーンのハイブリッド車から始めるしかない。
BMWのアクティブハイブリッド7やベンツのS400ハイブリッドあたりはその典型。モーター出力も電池容量も小さく、ほとんど「高級アイドル停止装置」と揶揄されたが、とりあえず商品化できるゾーンはそこにしかなかったわけだ。この延長に最近ブームとなっているPHEVがある。
ご存じのとおり、EUは130g/kmという厳しいCO2排出規制を行っているわけだが、EU当局はPHEVに関しては異例の優遇策を実施。EV航続距離が50kmあればCO2排出量を50%ディスカウント(!)というゲタを履かせている。
高級車メーカーを中心に、ここに怒涛の勢いでニューモデルが投入されている理由がコレ。欧州ハイブリッドもその内実はけっこう苦しいというワケでございます。
「ベストカー」2016年8月10日号より