すでにアニメ業界にはその名を轟かせている新海誠(しんかい・まこと)監督の最新作『君の名は。』が8月26日から全国公開中だ。
真骨頂である、圧倒的な映像美と繊細な心理描写はそのままに、さまざまな伏線を張り巡らせた壮大なストーリーの本作は、まさにエンターテインメントど真ん中! 知る人ぞ知る存在から、超有名監督の仲間入りを果たすのか?
前編『僕はいつも思春期の人たちに向けて映画をつくっている』に続き、新海誠監督に話を聞いた。
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―これまでの新海作品の登場人物はやや浮世離れしている印象でしたけど、本作ではしっかりした“キャラ”を意識して制作されたのですか?
新海 登場人物に顔がない物語様式が一方にあるとして、今回ははっきりと、最初からいわゆる“キャラクターアニメーション”にしようと考えていました。今までは自分の力も足りていなかったんですけど、(テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などでキャラクターデザインを担当した)田中将賀(まさよし)さんと一緒に仕事ができたのもあり、キャラの個性を立たせた作品にできた。
―主人公の瀧(たき)と三葉(みつは)のいがみ合いもコミカルでした。
新海 それに関しては、『らんま1/2』の影響が大きいと思います。
―おー! 懐かしいです。
新海 乱馬(らんま)とあかねはどう見ても好き合ってるのにいがみ合ってしまう、こういう関係性はいいなあと、どこかで思っていたんでしょう。
―そもそも監督のアニメ原体験は?
新海 『天空の城ラピュタ』が初めて自主的に映画館に行った映画なので、原体験としては宮崎駿作品ですね。僕の作品に具体的な影響を与えているとしたら、背景のカラーリングでしょうか。鮮やかな空といい、白い雲といい、景色がこんなにもカッコよくて面白いものなんだと教えてもらったのは、ジブリのような気がします。
―じゃあ、しつこいですけど、後継者的扱いをされるのはやっぱりうれしいのでは?
新海 もちろん、うれしいですけど……それはもうはっきりと過大評価ですよ(苦笑)。僕の映画はどこまでも思春期の人に向けた作品。それに比べて宮崎作品は家族、思春期、老人、少年少女……と、ありとあらゆる要素が入っている。あのバランスで映画にできる人はほかにいないし、この先も出てこない。宮崎さんは唯一無二で決して届かない存在です。