ASEAN 南シナ海安定の「要」だ
南シナ海の安定を図るための要となるのは東南アジア諸国連合(ASEAN)の結束である。
ASEANと周辺国による一連の首脳会議がラオスで開かれた。
注目されたのは南シナ海情勢への対応だ。ASEAN10カ国の首脳会議では、複数の首脳が中国による埋め立てへの懸念を表明した。
中国は、ASEANとの首脳会議で法的拘束力を持つ「行動規範」の早期策定を再確認した。南シナ海での緊急事態を想定した外交当局間のホットライン開設や、艦船の衝突回避規範の採択も確認された。いずれも実効性を確保することが重要だ。中国とASEAN双方に真剣な取り組みを期待したい。
南シナ海における中国の権益主張を退けた仲裁裁判所の判決については、ASEAN内での温度差を改めてうかがわせた。
もっとも、ASEANはもともと多様な背景を持つ国々の集まりである。中国との関係も、領有権紛争を抱えるベトナムやフィリピンと、経済的な依存を深めるカンボジアやラオスなどでは大きく異なる。
それでも、中国ASEAN首脳会議の共同声明には「国際法に従った平和的な解決」という原則が盛り込まれた。仲裁判決には触れなかったものの、「法の支配」という普遍的な原則を確認したことは現実的な対応と言えるだろう。
ただ、この声明が、領土や主権の争いを「直接の関係国」による交渉で解決するとした点は気にかかる。南シナ海は海上交通の要衝であり、自由で平和な海であり続けることは国際社会の共通利益だ。「域外国」として日米を排除する論理に使うのならば受け入れがたい。
心配なのは、仲裁判決の当事者であるフィリピンの迷走ぶりだ。
ドゥテルテ大統領は、オバマ米大統領に対する暴言で首脳会談の機会を逃し、すぐに後悔を口にした。そうかと思えば、きのう行われた米国とASEANの首脳会議には姿を見せなかった。
フィリピンは、スカボロー礁での中国による新たな埋め立てへの危機感を表明している。ドゥテルテ氏の言動は、そうした切迫した状況を認識しているか疑わせるものだ。フィリピンの国益にも反する言動であることを自覚してほしい。
ラオスに集まったすべての国が共有できるのは「法の支配」という原則のはずである。一つ一つの国で中国と対等に向き合うことが難しいASEANの各国にとっては、大きな助けとなりうるものだ。
日米両国は、「法の支配」の原則に基づくASEANの取り組みを支えていきたい。