日本アカデミー賞授賞式(4日・日テレ)を観た。そもそもこの賞自体、大手映画会社と一部権力のためだけの祭典で、真の実力を評価するものではないと思っていた。今年、最優秀作品賞を獲った是枝裕和監督も「他人事だと思っていたので、毎年テレビの前で悪口言ってました」と毒づくほどだから、推して知るべし。
なもんで、まさか安藤サクラが最優秀主演女優賞を獲るとは思ってもいなかった(テレビの前で思わず声を上げて拍手)。「どうせ映画界に君臨する爺たちが大好きな清純派女優を選ぶんだろ」とか「単館上映&低予算系はそもそもハブるんだろ」と思っていたので。
しかし、今年はなんだか別の思惑というか権力が参入したのだと痛感した。大手映画配給会社に日テレ、ジャニーズ事務所ががっちりタッグを組んだ模様。俳優は心の中で「マジか、やってらんねー」とぼやいていると推測する。新井浩文あたりが「最優秀賞落ちた、日本アカデミー賞死ね!」くらいなこと言わないかな。言わないよな。
そこで思いを馳せたのが、SMAPである。事務所の内部抗争で青息吐息の状態に追い込まれたのだが、メンバーが主演を務める連ドラが、今期よりによって2本ある。私自身はSMAPに関心がない。ドラマ出演作もほぼ褒めたことがない。が、日本アカデミー賞授賞式におけるジャニーズ事務所の権力のえげつなさに「いよいよSMAPもマジで干される5秒前」と身震いしたのだ。
あ、一応、紹介しとくね。草なぎ剛主演「スペシャリスト」は、濡れ衣着せられて10年10か月服役した刑事が受刑者の膨大な犯罪データを元に、手口を先読みして事件を解決していくっつう荒唐無稽系警察ドラマだ。草なぎはいつもお菓子をボリボリ食べ、相棒のおばさん刑事(パーマヘアがいつも変な南果歩)にどやされつつも、犯罪心理に精通したインテリという役どころ。
私の好みではないが、視聴率は高い。今後「相棒」みたいにシリーズ化するのかと思っていたら、件(くだん)の解散騒動という憂き目に。
もうひとつは香取慎吾主演「家族ノカタチ」。香取はローン組んで家を購入し、シングルライフを謳歌する男を演じている。不要な人間関係も結婚も望まず、自分のためだけにお金と時間を費やしたいのに、諸問題を抱えた父親(西田敏行)が押しかけてきて、生活も心も乱れるという物語だ。やっと適役に恵まれたと思った矢先に、解散騒動である。
SMAPのメンバー(の4人)が主演する連ドラは、これで見納めなのかもしれない。そもそもテレビ局が尻込みするだろうし。日テレなんかずっと前から切り替えてたよ、SMAPじゃないほうに。そのうち、日テレの聡(さと)い手腕が大衆から批判される時が来るかもしれないな。今のフジテレビみたいに嫌われる時が。
SMAPに興味はないが、「豪華客船に乗って悠々と海を渡ってきたのに、突然荒波の中へ放り出されたアラフォーの悲劇」という点にはちょっとだけ心を寄せる。ここからが正念場ね。
※草なぎ(「なぎ」は弓へんに剪)
※「スペシャリスト」(テレビ朝日系、木曜21時〜)
※「家族ノカタチ」(TBS系、日曜21時〜)
※「週刊新潮 2016年3月24日号」掲載