これが、青春。
日本で名作扱いされた映画でも容赦なく酷評をしていくスタイルの米映画評論サイト"Rotten tometos"。そこで稀に見る高評価を獲得した”シングストリート 未来へのうた” 「はじまりのうた」や「ONCE ダブリンの街角で」の音楽映画監督の巨匠のジョンカーニー監督が贈るこの作品は、葛藤に苦しむ14歳の目を通して、鑑賞者を1980年代のダブリンに引き込んでくれます。
10秒でわかるあらすじ
時代は1980年代不況真っ只中のアイルランド 主人公は家庭崩壊寸前の夢も希望もない次男コナー。 都会モデル志望の少し大人びた少女ラフィーナに恋をします。
彼は好きな女の子の気をひくために、バンド(主にMV作り)を始めます。 しかし、彼はバンドのメンバーですらなかった、MVに彼女を出演させるためにバンドをつくるという謎のスタートを飾ります。
時代を彩った様々なロックバンドたちに触発され、バンド、そして自分自身を色付けていく。
映画素人の感想
最初はアイリッシュイングリッシュで何を言ってるの、あなた…という感じで始まって、 ただのよくある少し歌って終わりかなと思いましたが、途中から主人公のバンドが本物のバンドに見えてきて、同時に熱いものがこみ上げてくるのを感じました。
恋愛、いじめ、家庭事情、縦社会
いい意味での青春時代の苦悩、葛藤がよく表れています。 人生、何があるかわからないけど、それでも挑戦していく人たちは輝いているというのを思い知らされた一作でした。
バンドを作るのはわかる、オリジナルソングを作るのもわかります。けど、PVを高校生の段階で作ろうと思える人はどれほどいるのだろうか、それが、想い人のためだとしても…。
人とは違うことをやるではなく、目標のために全力でやる。そういう人たちは輝いているなと素直に思える映画でした。
良かったところ
長男がいい味出していた
映画の所々で、長男が次男に音楽とは何かを指南します。時には、今のお前には〇〇がたりないと言って、ロックバンドを弟に紹介し、感じ取らさせようとする。お前何者だよと何回思ったことか笑
昔は派手で、華やかで世界が自分中心に回っていたのを感じていたと言う長男だが、家庭状況などのタイミングが悪く世界に出れなかった。そんな長男であるからこそ、主人公、次男の背中を最後に押すのは長男でした。
歌の方もしっかりしていて、上手だなと感じることも。何より、主人公が兄から教えてもらったバンドにすぐ感化される笑
翌日にはそのバンドになりきって学校に登校する、時には化粧、時には染髪 そして学校で、教師、いじめっ子にしてやられる 。しかし、彼の気持ちもわからなくはなかったです。
例えば、ベッカムのヘアスタイル。 小学校の時にベッカムがかっこいいと流行った時に彼のヘアスタイルを真似するサッカー少年を君も見たことがあるのではないでしょうか? コスチュームにも手がかかっていて面白い。決して綺麗で華やかではありませんが、手作り感、ヴィンテージ感を感じました。垢抜けておらず、まだまだ青い部分がまた可愛く思えます。
残念だったところ
最後のボートでのシーンでの波、風が強すぎる
社会の荒波に飲まれていく若者を描いていたのだと思いましたが、文字通りベッタベタになっていました。
メンバーの深掘り
強いて言うなら、バンドメンバーの深堀をして欲しかったです。主に主人公とラフィーナ、主人公と歌詞を作る少年のシーンが多めで、メンバー間のやりくりももう少し見られたらよかったなと思いました。
結末
突然”ロンドンにいく(しかもボートで!!)”と思い立った主人公がヒロインとボートの上で荒波に飲まれながらびしょ濡れになるというラストでした。まさに彼らのいく未来を表しているシーンでは…。様々な困難にと直面し、そして沢山の人と助け合いながら、笑顔で乗り越えていく。
そんな彼らの物語がぼくには見えました。
総評
この映画は、音楽の力、仲間たちの絆そして際限のない若さの可能性を教えてくれます
それは決して音楽だけの物語ではありません。夢、反抗期、芸術や若々しい恋の物語でした。
そしてそれは、素晴らしくも儚い音楽のやり取りでした。
もちろん、同時に1980年台前半の愛すべき音楽たちへのオマージュも感じられ、音楽好きの人にとっても大満足間違いなしな一作です。
シングストリートがオススメな人
- いじめられっ子
- 世の中の疲れきっているサラリーマン
- 新学期を迎える学生
- 卒業する学生
- アイルランドに行きたい人
シングストリートが合わなさそうな人
- いじめっ子
- 音楽映画が嫌いな人
- バンドマン
- 夢や希望が嫌いな人