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「黒田バズーカ」限界でアベノミクス終焉のカウントダウン

水月 仁史
経済ジャーナリスト

「アベノミクスの果実」は急速にしぼんでいる

日本銀行が9月20、21日の金融政策決定会合で実施する金融政策の「総括的な検証」に俄然、注目が集まっている。焦点は8月で導入半年を超えたマイナス金利政策の評価にある。

しかし、目に見える効果は乏しく、一段と手詰まり感が強まっているだけに、日銀の次の一手が試される。8月26、27日、米ワイオミング州ジャクソンホールに各国中央銀行首脳らが参集した経済シンポジウムでの講演で、日銀の黒田東彦総裁は量、質、金利のいずれも「追加緩和の余地は十分にある」と強気な姿勢を崩さなかった。

マイナス金利の下限にも「まだかなりの距離がある」と述べ、マイナス金利政策の限界論を吹き飛ばした。市場関係者には「これ以上のサプライズは必要ない」と強気一辺倒の黒田総裁の姿勢に懐疑的な向きも多い。経済同友会の小林喜光代表幹事も「大きなサプライズを続けるのは意味がない。引くべきところに今きている」と指摘し、日銀への風当たりは強まる一方だ。

黒田総裁が「中央銀行の歴史の中で最も強力な枠組み」と豪語した今年2月に導入したマイナス金利を含む量的・質的金融緩和は、金融機関に企業や個人への貸し出しを促し、消費者物価目標2%の実現と経済押し上げを狙う。「デフレ脱却」を目指す安倍晋三政権には、黒田総裁が2013年4月の就任直後に打ち出した「異次元緩和」をはじめとする一連の「黒田バズーカ」は強力な援護射撃だった。

しかし、マイナス金利は「円安・株高誘導」への目論みも外れ、8月半ばには1ドル=100円を突破し、トヨタ自動車に代表される輸出型企業の収益に一段と下押し圧力が加わった。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公表した216年4~6月期の運用実績も、折からの株安から5兆2342億円の運用損と2期連続の赤字に陥り、安倍首相がことさら強調する「アベノミクスの果実」は急速にしぼんでいる。

日銀の引くに引けない大きなジレンマ

加えて、金融機関、保険会社の収益悪化を招き、副作用が際立ってきたのも現実だ。金融機関の体力低下で企業への融資姿勢が慎重になり、貸し渋りを起こすようなら、マイナス金利政策導入は不発に終わる。確かに、住宅ローン金利の低下や超長期社債の増加などマイナス金利による一定の効果はある。

しかし、ゆうちょ銀行は無料にしていた同行利用者間の送金について10月に手数料を復活するほか、運用困難でマネー・マネジメント・ファンド(MMF)が金融商品として姿を消すなど国民生活にも影響を及ぼし始めた。これではマイナス金利政策は当初の目的を外れ逆回転し出したと映る。

これに対し、黒田総裁は就任以降の金融政策について「総括的な検証」を表明するに至った。日銀は政府との連携を確認しており、量的・質的金融緩和は引き続きアベノミクスを支える。マイナス金利政策の一段の踏み込みは副作用が大きい。溯れば、マイナス金利政策は今年1月の日銀金融政策決定会合で審議委員の5対4の僅差で決まった。リフレ(インフレ喚起)派が押し切った薄氷の決定は、導入に伴う混乱の大きさを暗示していた。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」と、9月の追加利上げの可能性も示唆しているだけに、日銀の出方が注目される。手をこまねくようなら黒田総裁が量的・質的金融緩和政策そのものの限界を自ら認め、金融政策頼みのアベノミクスの限界もさらけ出しかねない。日銀は「総括的な検証」に向け、引くに引けない大きなジレンマを抱えてしまった。

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