鎌倉幕府の成立に貢献した有力御家人「千葉氏」の功績を広める取り組みに、千葉市が力を入れている。市民の間でもあまり知られていない歴史に光を当て「地元愛」を高めるのが狙いだ。
1126年、桓武天皇の子孫とされる大椎常重が中央区にある今の県庁付近に拠点を置き、千葉氏を名乗ったのが市の始まりという。12世紀後半の源平合戦で、当時の当主千葉常胤(つねたね)は源氏に味方、鎌倉幕府成立後は有力御家人として東北から九州まで領地を与えられた。
「源頼朝をして『父』と呼ばしめた男」。市は常胤を主人公とする漫画冊子を作成し、市内の小学校に社会科の副教材として配布。8月には俳優千葉真一さんが常胤を装って町を練り歩くなど、知名度向上に躍起だ。
発案者は、常胤の子孫で「胤」の字を受け継ぐ千葉滋胤さん(83)。千葉商工会議所の会頭だった。戦後、全国各地から人口が流入し都市化する一方で、地元の歴史や文化を知る人が減ったと嘆く。「市内の祭りは千葉氏ゆかりのものが多い。祭りの由来や意味を知ってもらいたい」と話す。
熊谷俊人市長は、源平合戦の平氏とゆかりが深い神戸市出身。「神戸では平清盛はヒーローだが、千葉市民は地元への愛着が薄い。市が始まって900年となる2026年までに千葉氏を根付かせたい」と意気込む。
市は8月下旬、千葉氏の領地があった岩手や宮城、岐阜、佐賀などの自治体の関係者を招き、市内で「千葉氏サミット」を開いた。岩手県一関市の勝部修市長から「2回目以降はテーマを絞りサミットを継続したい」との声が上がり、熊谷市長は「日本遺産にしたい」と手応えを口にした。〔共同〕