ノーベル賞発表担う研究所でスキャンダル
【ブリュッセル八田浩輔】ノーベル医学生理学賞の受賞者発表を担うスウェーデンの名門カロリンスカ研究所がスキャンダルに揺れている。研究所で「世界初」をうたった移植手術を受けた患者が立て続けに死亡し、執刀した医師には経歴詐称の疑いも浮上。この医師の採用に関与した元幹部2人が、ノーベル賞選考委員会の委員の辞職を求められる事態に発展している。
研究所では、2011〜12年にかけて患者の幹細胞を使って作製した人工気管を移植する手術を実施。メディアに「世界初」と大々的に取り上げられたが、手術を受けた患者3人のうち2人が死亡した。担当したマッキアリーニ医師に研究不正や採用時に経歴を詐称していた疑いなどが浮上し、調査委員会が検証を進めていた。
調査委は今月5日、同医師を2010年に採用する際、前職場などでの不評を知りながら採用したのは不適切だったとして研究所幹部の責任を指摘する報告書を公表。これを受けてスウェーデン政府は、採用に関与した研究所の元幹部2人にノーベル賞選考委員会(50人)の委員職を辞するよう求めた。マッキアリーニ氏は研究所を退職しているが、一連の疑惑は否定している。
研究所の元倫理委員長は現地メディアなどに対し、今年のノーベル医学生理学賞の授与を取りやめて賞金を遺族への補償にあてるべきだと提案している。捜査当局も手術の経緯などについて調べている。
今年のノーベル医学生理学賞は来月初旬に発表される。