チケット転売について思うこと
写真:山川哲矢
「自分の買ったものを他人に売ろうが、破いて捨てようが、私の自由ではないか」みたいなことを言われると、確かにそうかも知らんと思う。
けれども、組織ぐるみでゴソっと購入して転売サイトで売り飛ばしたり、個人が副業として人気公演のチケットを高額転売している様子をネットなどで見ると、なんとも言えない気持ちになる人は、ステージに立つ側にもそれを楽しむ側にもそれなりにいるのではないかと思う。俺は率直にそういう奴らを嫌悪している。
そもそも、チケットの販売についてはいろいろ思うところがあって、問題は転売だけなのかと考えてしまう。
例えば、チケットの購入と発券までにやたらと手数料を取られるのはどういうわけか。こちらがいくら頑張って「高校生以下500円キャッシュバック」を行って若い子たちにお金を戻しても、500円くらいの金額は手数料で脇腹をえぐられるようにワシワシと2回くらい取られてしまう。「それはいいのかよ!」という気持ちは俺にもあるし、実際に、マネージメントにねちねちと文句を言い続けている。それだけでなく、ツアーの度に、チケットを安くできないかとイベンターやマネージメントに問いかけている。
なので、「転売反対!」という広告にASIAN KUNG-FU GENERATIONの名前を載せてもらうときにも、ちょっとしたモヤモヤがあった。それ以外の部分で、こっちの努力も必要じゃない?と。
ただ、実際に転売によって価格が高騰してしまえば、機会はお金を持ってる人間だけのものになってしまって、(人気が集まっている時期の)自分たちのステージは閉ざされたものになってしまうだろうし、場合によっては空席などの原因にもなるだろう。前のほうにゴッソリと連番で空席があると、演奏中もなんだか心配になったりするのだ。
はっきり言えば、コンサート業界の側が定価(もしくは定価以下)のチケット転売サイトを運営すればいいのではないかと俺は思う。
もちろん、病気や仕事の都合でやむなく参加を断念せざるをえない人たちは、そういうところでチケットのやり取りをしたら良いのではないかと思う。運営費は、ここでこそ、手数料によって賄われるべきだ。正規の取引をちゃんと用意すれば、ある程度、違法な転売や詐欺などを抑え込むことはできるはずだ。
まあ、完全に駆逐することは難しいだろうけれど。
大体、音楽が「お金を持っているやつから順に楽しめる」ものになってしまったら悲しい。
俺の理想としては「中学生が頑張って小遣いを貯めたら買える」くらいのものであってほしい。それとは別に、無数の抜け道によって無料でも楽しめるようにしておいて欲しい。例えば、YouTubeなんて、最高じゃないか。タダじゃないけど、ツタヤもApple MusicもSpotifyも最高だ。こういう便利なツールを使って、どんどん音楽が楽しまれたらいいと思う。
Chance The Rapperというシカゴのラッパーがデビュー以来レーベルと契約せずに、HIP HOPと自分の信念に基づいてフリーで音源を公開しているのは素晴らしい。しかもこのクオリティ(まあ、すごいパトロンがいるのかもしれないけれど、俺が金出すよっていうヤツが出てくる文化的土壌も羨ましい)。
まあ、願わくは、そういった便利なツールを使いつつも、ときどき生の演奏を観てみたいだとか、レコードを買って手元に置いておきたいだとか、そういう興味を持ってくれたら嬉しい。中学生のときに好きだったバンドのレコードを大人になって買う、みたいな行為って、自分でやってみてわかったけれど、労働とその成果や報酬に対する喜びにつながるから、そんなふうにして音楽と付き合ってくれるのも嬉しい。
音楽にまつわる「お金」は持ってるやつ(レーベル含む)が出すもんだと俺は考えていて、それをぐるぐるまわして、どこかに偏ったりしないようにするのがいいんじゃないかと思う。まあ、アジカンは、プチロックスターみたいになった時期もあったので、今は一生懸命、現場や若手に投資する側の人間だと自覚している。
とか言いつつ、今回のソロのツアーのチケット代が5000円になってしまったのは心苦しい。内容に比べてというわけではなくて、金銭感覚として、ちょっと高いなと俺は思う。中学生の小遣いでは来れない。そもそも中学生はお前のソロの音楽聴かないよというツッコミもあるだろうけれど。
これに手数料だなんだってなったら、あっというまに6000円。オイオイ、って感じだよね。ドリンク代?何語デスカ?っつうの。
細かいけれど、4500円くらいが良かったんじゃないかと思う。たった500円で、随分違って感じる。このあたりは、バンドメンバーやスタッフへのギャラの支払いもあるから、俺の金銭感覚だけを頼りに決めようがないのだけれども。俺は率直に悔しい。500円あったら、帰りに安い酎ハイが2杯くらい飲める。
金銭的な問題でライブに来られないひとは、YouTubeにライブ動画をフル尺でアップしたので、それを楽しんでほしい。
ちなみに友達の海外のバンドのチケットの値段を調べてみたところ、NYだと30ドル(約3000円)、同じアメリカでもナッシュビルだと20ドル(約2000円)、スペインだと20ユーロ(約2300円)、フランスのパリだと33ユーロ(約3800円)と、都市によってバラツキがある。地面の値段や渡航費とも関係あるのかもしれない。まあ、日本より少し安い。
日本も東京だけチケット代が高い、というよりは地方公演を値下げしてはどうかとも考えた。大体、経済の状況が違う。何より、東京ばっかり羨ましいという嫉妬もある。アートにしろ演劇にしろコンサートにしろ、東京ばっかりでズルい。首都圏の住民からは「いろいろズルい代」をいただきたい。笑。
CDやレコードが売れない時代になって、ミュージシャンたちはコンサートで食べて行かなければいけない時代になったから、チケット代に関する感覚はこれから変わってゆくのだと思う。それこそ、俺のような主張がマイナスに働いて低価格競争が起きて、自分たちの首を絞めてしまうかもしれない。そのあたりについては、とても難しい。
ちなみに、俺のソロのツアーチケットはまだまだプレイガイドで売っているので、高額転売サイトで買う必要がない。ぴあに電話すればいいだけの話で。笑。「ゴッチさん、ブログや広告で高額転売に反対してたけど、そもそも転売されてない。意味わかんない」と思った人がいたなら、その通りだ。でもまあ、別に自分のコンサートでなくても、こういった問題に翻弄されている人は減って欲しいと願っている。
長々と書いてきたけれど、この種の問題はいたちごっごのように尽きないのかもしれない。ダフ屋なんて、四十路間近の俺が気がついた頃からいるし。
どうしたらいいのだろう。
うむ。
なんかLINEブログでよく見るようなやたらと改行の多い書き方になってきたけれども、結局のところ
「深刻にならずに、それぞれ楽しむ」
(もっとフォントでかくしたい)
ことがポップミュージックにとっては大切なことだと思う。
言葉にしないほうがいいことでもある、「楽しもう」だなんて。当たり前なんだから。こんなブログは無粋の極みなのだ。
まあ、問題に取り組むべきはいつでも「やっている側」で、「楽しむ側」である皆さんは目一杯に楽しんでほしい。どうやって食べて行くかについては、そんなもんはそれで食べてるやつらが考えい!でいいと思う。
俺は一方的にこれからも「愛」のようなものを発信し続ける。受け取るも受け取らないも、返すも返さないも、自由だよね。