DAWユーザーにとって、外部ミキサーは重要なアイテムではあるけど、なかなかうまい組み合わせ方が見つからない……という人も少なくないと思います。そんな中、先日イギリス発祥のSoundcraft社が発売した12chのミキサー、Signature 12 MTKは、USB接続可能なアナログミキサーであり、DAW側からは14IN/12OUTのオーディオインターフェイスとして見える強力なアイテムなんです。
Lexiconのリバーブなど、高性能なエフェクト22種類を搭載するとともに、アナログ・ミキサーの名機、Ghostのマイクプリを採用したり、各チャンネルには3バンドのSapphyre Asymmetric EQを搭載など、ミキサーとしての性能もかなりグッとくる内容であり、USB接続においてはMac、Windowsはもちろんのこと、iPadでも14IN/12OUTで利用できるのも大きな特徴です。実際試してみたので、これがどんなものなのか紹介してみましょう。

Windows/Macとの連携はもちろん、iPadとも14IN/12OUTで連携可能なアナログミキサー、Soundcraft Signature 12MTK
Windows/Macとの連携はもちろん、iPadとも14IN/12OUTで連携可能なアナログミキサー、Soundcraft Signature 12MTK
Soundcraftは、業務用のミキシングコンソール、PA卓で数多くの実績を持つイギリスの名門メーカー。そのSoundcraftが新たに開発・発売を開始したのがSignatureシリーズというミキサーで10chのものから22chのものまで計6製品があります。このSignatureシリーズには、一般的なスタンダードモデルとDAW仕様に整えられたマルチトラックモデルの2種類があるのですが、ここで取り上げるのはもちろんマルチトラックモデルのほう。

アナログミキサーとしてみると12chの入力を持つSignature 12MTK
アナログミキサーとしてみると12chの入力を持つSignature 12MTK
Signature 12 MTK
Signature 22 MTK
の2種類があり、今回使ってみたのはデスクトップ環境にも置きやすい12chの製品です。実売価格で5万円弱と、最近激安になっているアナログミキサーの世界ではやや高めの価格設定ではありますが、上位機種のテクノロジーをふんだんに取り入れていることや、14IN/12OUTのオーディオインターフェイスであると考えれば十分納得いく内容ですよね。
横から見ると奥が少し高くなっている
サイズ的には388×106×388mmで5.9kg。奥がややせり上がった形状で、それなりの大きさがありますが、すべての入出力は上面に出ていて、電源ケーブル接続部も下面にうまく配置されているため、奥行きピッタリまでくっつけられる構造になっています。

電源ケーブルのコネクタは内側にある
コンソール面を見てみると、とにかくズラリとノブやスイッチ類がいっぱい並んでいて、なんとなくワクワクしてきます。フェーダーのストロークは60mmあるし、チャンネル幅も25mmあるので、操作はゆったりできそうですね。
電源ケーブルのコネクタは内側にある
コンソール面を見てみると、とにかくズラリとノブやスイッチ類がいっぱい並んでいて、なんとなくワクワクしてきます。フェーダーのストロークは60mmあるし、チャンネル幅も25mmあるので、操作はゆったりできそうですね。
まずはマイクやギターを接続して、モニタースピーカーやヘッドホンから音を出してみようと思ったのですが、それなりに大規模なコンソールなんで、ちゃんと手続きが必要になるんですね。コンデンサマイクは+48Vのファンタム電源をONにし、マイクプリアンプのゲインを上げていく必要もあります。

マスター出力にルーティングするにはMSTボタンをONにする
マスター出力にルーティングするにはMSTボタンをONにする
またマイクやギターを接続したチャンネルのルーティング先としてマスター出力を意味するMSTのボタンをONにしないと出ていきません。最初その辺を確認せずに、適当にボタンをプチプチやっていたので、うまく音が出ず、途中で誤って、AFL(After Fader Listen)なんてボタンを押して全体がミュート状態に陥ってしまい、壊れたかと焦ってしまいましたが、やっぱりちゃんとマニュアルは見なくちゃいけませんね。
各チャンネルの右側にはGROUP 1-2と書かれたグループマスター出力もある
1~6chのフェーダーは独立で、7/8、9/10、11/12はそれぞれステレオでという扱いになっています。また各チャンネルのフェーダーの右にはGROUP 1-2と書かれたグループマスター出力というものもあります。これは各チャンネルの1-2ボタンを押すと、ここにもルーティングされる形になっています。

各チャンネルごとにAUX1、AUX2、AUX3のセンドつまみが搭載されている
各チャンネルごとにAUX1、AUX2、AUX3のセンドつまみが搭載されている
このグループマスターとは別にAUX1、AUX2、AUX3という3つのバスが用意されて、各チャンネルからセンドで送ることが可能になっています。さらに、AUX3と切り替えの形で前述のLexiconのリバーブなどが入っているFX=エフェクトが用意されています。

LexiconのDSPを搭載したデジタルエフェクト22種類が利用できる
LexiconのDSPを搭載したデジタルエフェクト22種類が利用できる
このエフェクトにはリバーブ(ホール、ルーム、プレート、スプリング…)、ディレイ、コーラス、フランジャー、Lo-Fi、トレモロなどなど22種類から選べるようになっているので、使い出はありそうですよ。もちろん、各チャンネルには独立した3バンドEQが搭載されていたり、ハイパスフィルターのスイッチが搭載されているなど、とっても充実したコンソールになっていて、見ているだけでも楽しいですね。

DAW側からは14IN/12OUTのオーディオインターフェイスとして見える
DAW側からは14IN/12OUTのオーディオインターフェイスとして見える
というわけで、ここからがDTMステーションとしての本題。Signature 12MTKは、USBクラスコンプライアントなデバイスとなっており、アナログミキサーなだけに44.1kHzまたは48kHzまでとはなっているものの、14IN/12OUTのオーディオインターフェイスとしても機能するのです。

Windowsの場合はSoundcraftサイトからドライバをダウンロードしてインストールする
Windowsの場合はSoundcraftサイトからドライバをダウンロードしてインストールする
Macの場合はドライバ不要での接続が可能ですが、Windowsの場合はSoundcraftサイトからドライバをダウンロードしてインストールしておく必要があります。一方、iPadの場合は、Lightning-USBカメラアダプタを使っての接続となります。
iPadとはLightning-USBカメラアダプタを使ってUSB接続を行う
まずは入力側から見てみましょう。たとえば、Signature 12MTKの3chにマイク、Hi-Z対応の5chにギターを接続していたとしましょう。この入力は普通にミキサーとしてミックス処理してマスターへルーティングされるのとは別に、USB側の3chと5chにも流れていくんです。この場合は、マイクプリを経由した音がEQやフェーダーは通らずに直接WindowsやMac、iOSのDAWに届くので、音の加工はDAW側に委ねられるわけです。
では、なんでSignature 12MTKの入力は12chなのに、DAW側からは14INに見えるのか。実は13/14chはマスタートラックの信号なんです。つまり、Signature 12MTKでミックスした最終結果をDAWにも送ることができるというわけなんですね。

USB RTNボタンをONにすると、マイクやラインからの入力ではなく、DAW側からの入力に切り替る
USB RTNボタンをONにすると、マイクやラインからの入力ではなく、DAW側からの入力に切り替る
では、一方の出力はどうなっているのでしょうか?実はこれ、各チャンネルのマイクプリのゲインの下に、あるボタンが大きく関係しています。左側に100Hzと書かれたハイパスフィルターのボタンがあり、右側にUSB RTNというボタンがありますが、もちろん、このUSB RTN=USBリターンのほうです。
このスイッチをONにすると、マイクやラインからの入力は遮断され、PC側からの信号が行くようになるのです。つまり、PC側のDAWの各トラックの出力先を、Signature 12MTKの各チャンネルに振り分けておけば、そのミックス操作をこのミキシングコンソールでできてしまうわけなんですね。

iPadアプリであるAuria Proでは入力用、出力用ともに、マトリックスを設定する
iPadアプリであるAuria Proでは入力用、出力用ともに、マトリックスを設定する
もちろんフェーダーだけでなく、EQも使えるし、Lexiconのリバーブなども使えます。もっとも、Signature 12MTKはあくまでもアナログミキサーであって、フィジカルコントローラ機能などは持っていないため、このコンソールを操作した情報をDAW側で記録することはできません。ただし、最終的なミックス結果は、DAWに戻してレコーディングすることは可能なので、それを活用するのも一つの手ですよね。
iPad用のCubasisにおいては、トラックごとに入力チャンネル、出力チャンネルの設定ができる
こうした14IN/12OUTのオーディオインターフェイス機能としての連携をWindowsやMacのDAWで利用できるのはわかるけど、iPadでそんなこと可能なの?と疑問に思う方もいるかもしれません。確かにGarageBandや普通の録音アプリなどでは、2IN/2OUTとしてしか使えないのですが、Auria ProやCubasis、Multitrack DAWといったマルチポートのオーディオインターフェイスに対応したDAWであれば、しっかり14IN/12OUTのオーディオインターフェイスとして使うことができますよ。

Multitrack DAWでも各トラックごとに入力チャンネルを選択できる
Multitrack DAWでも各トラックごとに入力チャンネルを選択できる
このiPadの活用法として考えられる一つが、ライブ会場でのPAで使うというもの。あらかじめiPadのDAWにオケを仕込んでおき、それをこのミキシングコンソールにUSB接続一つで立ち上げることが可能です。必要に応じてステレオ2chでもマルチで出してもOKですよね。また、それと同時にステージからのボーカルを別トラックにレコーディングしたり、エア用に立てたマイクの音もレコーディングしておくと、いいかもしれません。使い方はいろいろと考えられそうですよ。
ところで、Signature 12MTKのコンソールパネルを見ると、PCやiPadと接続するためのUSB端子のほかに、平型のUSB端子も用意されているんですよね。最初見たとき、ここにUSBメモリでも接続してオーディオ再生などに使うのかな……なんて思ったら違いました。そう、USB Powerと書かれている通り、ここから5Vの電源供給ができるというものなんですよね。

USB接続のLEDライトを取り付けるのも手
USB接続のLEDライトを取り付けるのも手
が、最近よくあるUSBライトを接続しておくと、ライブ会場など暗い場所でも使えるわけですね。
ほかにもEQやAUXなど、説明していくとキリがないほどですが、ミキサーとオーディオインターフェイスを合体させたこの、Signature 12 MTK。なかなか使えるシステムだと思います。
【製品情報】
Soundcraft Signatureシリーズ製品情報
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