オバマ大統領が中国・杭州に到着 米中首脳会談へ

オバマ大統領が中国・杭州に到着 米中首脳会談へ
アメリカのオバマ大統領はG20サミットに出席するため、中国の杭州に到着しました。オバマ大統領は3日夜、習近平国家主席と会談し、地球温暖化対策で米中両国がリーダーシップを示していく姿勢を強調するとともに、南シナ海での中国の海洋進出についても習主席に懸念を伝えるものと見られます。
オバマ大統領は、G20サミットが開催される中国の杭州に日本時間の3日午後3時半ごろ到着しました。オバマ大統領はこのあと日本時間の3日夜8時前から習近平国家主席との首脳会談に臨む予定です。

来年1月に任期を終えるオバマ大統領にとって、大統領としての訪中は今回が最後で、両首脳は夕食も共にする予定です。首脳会談では、国別の温室効果ガスの排出量で世界第1位と2位の米中両国が、地球温暖化対策でリーダーシップを示していく姿勢を示し、両国の協力の成果だと強調する見通しです。

またオバマ大統領は、南シナ海での中国の海洋進出や中国国内の人権状況について、習主席に直接、懸念を伝えるものと見られます。
今回の訪中についてホワイトハウスの高官は「オバマ政権の過去7年半の米中関係を振り返り、さらに協力できる分野を探るとともに、対立を和らげるために何ができるかを話し合う」と述べ、大統領にとって最後となる中国訪問を通して、米中両国の協力と今後の課題について幅広く話し合う方針です。

杭州は厳戒警備 マナー向上の条例も制定

G20サミットの開幕を4日に控え、中国当局は、会場がある杭州に厳しい警備態勢を敷いています。市内では各地に検問所を設け、通行する車両が不審物を積んでいないかなどを確認しているほか、市内に乗り入れる車の数も制限しています。会場や、各国の首脳が宿泊するホテルの周辺では広い範囲で道路を封鎖し、関係者以外の立ち入りを禁止していて、近くのマンションでも住民以外の出入りは禁じられています。

また、市内の大部分では今月1日から7日まで政府機関や学校などが休みとなっているほか、多くの商店が当局の指示を受けて営業を停止していて、ふだんは人が多く集まる繁華街や観光地も人通りが少なくなっています。地元に住む人たちからは「会議の成功のためには少しくらいの不便はしかたがない」という声がある一方、「治安を守ることは正しいが過剰な対応ではないか」という声も聞かれました。

一方、各国の訪問客らによい印象を与えようとする対策も行われていて、ことし3月からはG20サミットを念頭にマナーの向上を目的とした市の条例が制定され、市内各所に行列への割り込みをしないことなどを呼びかけるイラストや標語が掲げられています。

さらに、中国では大規模な国際会議などのたびに実施されてきた大気汚染対策が今回も行われ、市内の路線バスがすべて電気自動車などに変更されたほか、先月下旬から今月6日までの2週間近くの間、汚染物質を排出する工場には操業の停止が求められています。対象は、杭州の会場から100キロ以上離れた上海の一部の工場にも及んでいて、日系企業を含む外国企業も複数の工場で操業を停止しています。日系企業の責任者は、「生産への影響は、休日出勤や残業でカバーしなければいけない」と困った様子で話していました。

米元高官「対話と圧力の双方で」

オバマ大統領が就任して以降の7年半の対中政策について、政権1期目に、ホワイトハウスの国家安全保障会議のアジア上級部長を務め、対中政策のキーパーソンだったジェフリー・ベーダー氏は、NHKのインタビューに対し、政権の発足時に力を入れたことは、米中両首脳の対話を増やすことだったとしています。ベーダー氏は「米中関係の重要さを考えれば、下のレベルでの会合や日常の外交接触だけに頼ることはできない。首脳会談を定期的に開催する必要に迫られていた」と述べました。大統領就任最初の年の2009年に、オバマ大統領と当時の胡錦涛国家主席は、G20サミットなど国際会議の場などで3回の首脳会談を行い、大統領は、両国間の問題だけでなく、イランの核開発問題や北朝鮮への対応など、地球規模や地域の問題に中国の関心を引き付け、協力を引き出すことを意識したとしています。ベーダー氏は、「グローバルな問題は中国が反対すれば解決できない。イラン、北朝鮮、そして、地球温暖化をめぐる問題がその例だ」と述べ、イランや温暖化の問題では、米中両国の協力が成果を上げてきたと強調しています。米中の首脳どうしの会談は、その後もしばしば行われるようになり、2013年に習近平氏が国家主席に就任して以降、直接の会談は今回が8回目となります。一方で、米中間の協力が確実に進んできたにもかかわらず、尖閣諸島や南シナ海で中国の海洋進出の動きがやまず、緊張が続いていることについては「中国国内のナショナリズム、中国の国力、特に軍事力の伸長と影響力の拡大が、米中関係を複雑にし、より困難にしている。問題を解決するには、対話と圧力の双方を使わなければならない」と述べ、習主席を取り巻く国内の政治、社会情勢が、外交姿勢を強硬なものにしていると分析しています。今回の米中首脳会談について、ベーダー氏は「目の前には困難な問題はあるが、緊張した会談にはならないだろう。どのように米中関係を発展させてきたのか過去7年半を振り返るものになるだろう」と述べ、オバマ大統領にとって最後の中国訪問では、G20サミットを成功させたいという習主席の「メンツ」にも配慮するだろうという見方を示しました。

専門家は

また東アジア研究の専門家として知られるハーバード大学のエズラ・ボーゲル名誉教授は、NHKのインタビューに対し、「オバマ大統領は、就任当初から中国とよい関係を作ろうとしてきた。しかしアメリカの軍は中国について心配し、中国の政治家と軍もアメリカに対して厳しく、実際の関係は緊張し、よくならなかった」と述べました。その原因についてボーゲル教授は、中国側については、海軍の増強や習近平国家主席に海外経験が少なく、国際的な感覚が乏しいことを挙げる一方、アメリカ側については「『アジア重視政策』を発表したものの、かえって中国の反発を招いた。また中国が主導するAIIB=アジアインフラ投資銀行も支持すべきだった」と述べました。そのうえで今後の米中関係のリスクについては、両国が武力衝突する可能性は非常に低いとしながらも、「軍どうしの事故が拡大して国民感情が悪化し、両国の指導者が押さえられなくなる事態を懸念している」と述べ、来年1月に就任するアメリカの新しい大統領は、オバマ大統領と同じように習近平主席との対話に力を入れることが重要だと強調しました。