一言で言うと、誰のためなのか、何のためなのかが見えてこない調査だった。
内閣府は7日、15~39歳を対象にした「ひきこもり」実態調査の結果を公表した。6年前に行われた同調査と比較して、「39歳以下の“ひきこもり”群が15万人余り減少した」という今回のデータ。ただ、この間、指摘されてきた同調査についての様々な瑕疵については、まったく反映されない内容だった。
<内閣府は「ひきこもりの人への支援がある程度効いたのではないか」という能天気な成果ばかりを強調。今のひきこもりの実態とは、かなりかけ離れています>
このように、さっそく引きこもり当事者が800人以上登録しているフェイスブックグループページに書き込んだ当事者もいる。
● 40歳以上、主婦などの女性を排除 実態とかけ離れた“実態調査”
「ひきこもり」実態調査の結果を盛り込んだ『若者の生活に関する調査報告書』(内閣府政策統括官)によると、「ひきこもり」群の出現率は1.57%、全国で推計約54万1000人。前回調査した2010年の推計69万6000人(出現率1.79%)に比べて15万5000人ほど減少していたという。
調査は、15歳以上39歳以下限定の5000人と、同居する成人家族を対象に行われた。
ただ、「ひきこもり」層の高年齢化によって、すでに地方自治体の調査で半数を超えている40歳以上については、今回も調査対象から除外された。その一方で、同居する家族が新たに加えられた。
「ひきこもり」群の定義は、6ヵ月以上にわたって<趣味の用事のときだけ外出する><近所のコンビニなどには出かける><自室からは出るが、家からは出ない><自室からはほとんど出ない>状態で、前回時と同じだった。
一方で<統合失調症または身体的な病気>のほか、<専業主婦・主夫または家事手伝い>や<家事・育児をする>なども対象から外されている。
こうして「家事手伝い」や「主婦」という蓑に隠された引きこもる女性の存在もデータに反映されなかった。そのため、男女比は、「男性」63.3%、「女性」36.7%と、前回とほぼ同様の割合で男性が占め、性別で「セクシュアルマイノリティ」などを想定した男女以外の項目も設けられていなかった。
また、前回155万人と推計した「ひきこもり親和群」についても、今回は算出しなかった。
ちなみに、今回は「本人の回答のみで除外できない」「除外することが必須とも言えない」として、「統合失調症」と回答した者も含めた推計56万3000人も併記された。
● 「40歳以上は厚労省の仕事」 驚くべき内閣府の言い訳
「少子化による該当年齢人口の減少や統計上の誤差があるため、明らかにひきこもりの数が減少したとは断言できないが、人数的には改善があったように思われる」
会見した内閣府政策統括官の石田徹参事官(共生社会政策担当)は、そう強調した。
そこで、前回の調査で「ひきこもり」層に占める割合が23.7%と最も多かった35~39歳層について、どうとらえているのか? を尋ねると、こう答えた。
「そこは、調査対象から外れていますので、正直言ってわかりません」
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