日本と韓国の首脳が訪問先のラオスで会談し、北朝鮮情勢で連携を強めながら、日韓関係改善を進めることを確認した。難問の慰安婦問題でも意見交換を重ね、改善の流れを確実なものにしたい。
安倍晋三首相と朴槿恵大統領は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議に出席し、二国間会談で、北朝鮮の核・ミサイルへの対応や、慰安婦問題で日韓合意を着実に履行することを確認した。
昨年まで冷えこんでいた日韓関係が改善に動きだしたのは、北朝鮮による脅威の高まりが背景にある。危機感を強めたオバマ米政権が、関係を修復するよう日韓両政府の背中を押した。
北朝鮮は先月下旬から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と移動式車両を使った中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射したが、日韓とも事前に察知できなかった。
ミサイルが発射されれば、短時間で韓国と日本に到達する。米国も含めた三カ国が情報交換や共同訓練を通じて、即応態勢を整えることが緊急の課題になる。日韓は継続審議になっている軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結を急ぐ必要がある。
旧日本軍の慰安婦問題でも昨年末から進展があった。韓国側が被害者の傷を癒やし尊厳を回復する目的で「和解・癒やし財団」をつくり、日本政府が十億円を拠出した。被害申請後に死去した人も含めて計二百四十五人を対象とし、財団が昨年末時点の生存者には一人当たり約一千万円、故人の遺族らには約二百万円を支払う。
財団の説明によると、生存者四十人の多くは日韓合意に理解を示しているという。平均年齢は九十歳に近く、残された時間は多くはない。まず韓国側が被害者に対し、日本側の拠出金を受け取るように説得を続けてほしい。理解が得られた時点で、日本政府当局者が被害者に面会し、謝罪と慰労の言葉を伝えるべきだろう。
日本側はソウルの日本大使館前に設置された、慰安婦問題を象徴する少女像の撤去を求めるが、財団の運営に影響を及ぼさない対応が必要になる。
経済面でも八月末に関係改善の動きがあった。通貨下落などの緊急時に両国がドルなどの外貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」を再び締結するよう、議論を始めることで合意した。
歴史の懸案に向き合い、安全保障や経済で連携を強める。共通する課題で協力が進めば、未来志向の関係に道が開けてくる。
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