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オバマ氏の歴訪 もっとアジアで指導力を

 花道と言うには多難な旅である。

     任期中最後のアジア歴訪を続けるオバマ米大統領はラオスで演説し、自身のアジア重視政策(リバランス)の意義と成果を強調した。だが、主要20カ国・地域(G20)首脳会議に始まる一連の国際会議で、南シナ海問題や北朝鮮の核・ミサイル問題での進展が見られないのは残念だ。

     オバマ大統領の任期はあと4カ月余りと、いわゆるレームダック(死に体)状態にある。それが影響したとも言いきれまいが、G20が開かれた中国・杭州の空港に大統領一行が降り立った直後、ホワイトハウスと中国の当局者の間で口論が生じ、中国の空港当局者が「ここは我々の国だ」と叫ぶ一幕もあった。

     ささいな出来事に見えるが、米大統領の外遊では通常考えられないことだ。G20では南シナ海問題でオバマ大統領と中国の習近平国家主席の見解はすれ違い、何の進展もなかった。それだけに、この一件は米中の意思疎通の乏しさを象徴するような後味の悪さを感じさせる。

     ラオスでの東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を機に予定されていた米比首脳会談が中止になったのも異例だった。

     フィリピンの強圧的な麻薬取り締まりに批判的なオバマ大統領に対し、ドゥテルテ比大統領が侮蔑的な暴言を吐いたため米側が中止を申し出た。後に謝罪したとはいえ同氏の発言は著しく品格に欠けている。

     オバマ大統領は7月の仲裁裁判所の判決に基づいてフィリピン側と南シナ海問題を協議し、判決に反発する中国に両国の連帯を見せたいところだった。フィリピン沖のスカボロー礁では中国が埋め立ての準備をしているとの観測もあるからだ。

     大事な会談が中止になったのは残念だが、8日には東アジアサミットも開かれる。南シナ海や東シナ海における中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発をオバマ大統領はもっと積極的に論じ、関係国の賛同を得る努力をすべきである。

     ラオスでの演説でオバマ氏は、南シナ海で中国をけん制する「航行の自由作戦」を今後も続けると表明した。米比首脳会談の代わりに開かれた米韓首脳会談では、北朝鮮の脅威に対抗して国際的な連携を強めることで朴槿恵大統領と一致した。

     だが、それだけでは解決への枠組みとは言いがたい。歴史的な広島訪問で成果を上げたオバマ氏も、軍事が絡む駆け引きでは後手に回る傾向がある。中東情勢に関して「米国は世界の警察官ではない」と言明したことが、東アジア情勢に響いた印象もある。ほしいのは指導力だ。

     難問を放置してアジア政策の成果を誇ることはできない。

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