嵐とオーロラの木星の極地、探査機ジュノーが撮影

北極には無数の青い嵐、南極には巨大オーロラ

2016.09.07
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NASAの木星探査機ジュノーが8月27日、木星の北極を初めて撮影した。「ジュノーカム」による可視光画像。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL-CALTECH, SWRI, MSSS)
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 木星を赤外線で見ると、火の輪と渦巻く大火が交差する、ゆっくり回る溶けた球体のようだ。もちろん、これは木星本来の姿ではない。普通に可視光で見れば、太陽系最大のこの惑星は、大赤斑とさまざまな色の雲の帯が広がる、ガスがかった冷たい世界である。しかし、先ごろNASAの木星探査機ジュノーから送られてきた赤外線オーロラマッピング装置(JIRAM)による南極の画像は、冒頭に書いたような様子を写し出していた(下の写真)。

 心臓が止まるような激しい飛行に耐え、ジュノーは7月4日に安全に木星を周回する軌道に到達した。しかし、地球に映像を送れるようになるまでには数週間がかかった。なぜなら、生きるか死ぬかの軌道投入中に電源が切られていた機器類を再起動する必要があったからだ。(参考記事:「探査機ジュノーが木星周回軌道に、偉業を解説」

 送られてきた初期の画像には、8月27日にジュノーがはじめて撮影した木星の北極の画像も含まれていた。そこには、科学者の想像とはまったく異なる様子があった。低緯度に広がる木星らしい雲の帯もなければ、土星の北極にあるような六角形の嵐もなかった。(参考記事:「土星北極の六角形構造、カッシーニ撮影」

南極の巨大オーロラ。赤外線オーロラマッピング装置で撮影。赤外波長で見ると、木星の南極は荒れ狂う猛火に似ている(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL-CALTECH, SWRI, MSSS)
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 その代わり、木星の北極には雲の陰影があった。それらは想像よりも青い、無数の小さな渦だった。ジュノーが北極上空を急降下する際には、不思議な電波のざわめきも検出された。木星の巨大オーロラを生み出す荷電粒子によって生じた現象で、このような放射は1950年代ごろから知られていたものの、詳細に調査されたことはない。(参考記事:「系外惑星探索、今後はオーロラが手掛かり」

 ジュノーの共同研究者である米アイオワ大学のビル・カース氏は声明を発表し、「木星が、巨大なガスの世界にしかできない方法で、私たちに語りかけています」と述べた。(参考記事:「木星の大赤斑上空は1300℃、原因は嵐の音か」

 ジュノーは今後2年間で合計36の軌道から木星を調査する予定で、今回はその最初に過ぎないが、すでにいくつかのサプライズが隠されていることを物語っている。(参考記事:「木星周回軌道から初の写真届く、探査機ジュノー」

 いや、今回の発見自体は驚きではない。数十年に及ぶ探査により、太陽系の世界を知ることは人物を知ることに似ていることが、これまでに何度も示されてきた。つまり、時間をかけてそこに行き、近くで見ない限り、太陽を周回する惑星、衛星、その他の天体を詳しく知ることはできないのだ。

【フォトギャラリー】これまで撮影された木星とその衛星たち

文=Nadia Drake/訳=堀込泰三

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