欧州の銀行は、株価の投資収益率がうらやましいほど高い米国の銀行よりも、収益率が低い日本の銀行に似ている――。米JPモルガン・チェースのアナリストらは最新のリポートでこう述べ、欧州銀の収益率改善は難しいかもしれないと投資家に警告した。
■米銀に比べ劣る日・欧
欧州銀のバリュエーション(投資指標)はここ何年か、米国の銀行より見劣りしている。投資家が、金融危機後すぐにリストラをした米銀や米経済の強さを好感し、米銀への投資を増やしているからだ。
JPモルガンで欧州銀を担当するリサーチチームのリポートによると、このバリュエーションの違いは継続し、欧州銀は危機後に投資収益率が低迷する日本の銀行と同じグループに入ったという。
日本の銀行は不動産バブルが崩壊し、7000億ドル(約71兆円)に上る貸し倒れに見舞われた1990年代の金融システム危機から回復するのに苦しんできた。
それから約20年、日本の政策当局が最善の努力をしたにもかかわらず、日本の銀行株全体の2017年の予想PER(株価収益率)は8倍をわずかに超える水準で、PBR(株価純資産倍率)は約0.5倍にとどまっている。
欧州債務危機後、いまだ回復途上にある欧州銀も同じで、株価の予想PERは10倍、PBRはおよそ0.8倍だ。対照的に、米銀株はMSCI指数でみるとPERが11倍、PBRは1倍になっている。
リポートは、欧州と日本の中央銀行は量的緩和(QE)で資金を大量に供給したが、どちらの地域でも銀行は融資を伸ばせず、両中銀の政策効果は表れていないとみる。
リサーチチームを率いるキアン・アブフセイン氏は「QEとマイナス金利が継続するなか、(欧州銀と邦銀の)株価指標は収束していくだろう」と語った。
欧州も日本も金利の低下に伴い、銀行の預金と貸出金の金利差(利ざや)が縮小しており「QEの継続で、欧州銀も邦銀と同様、長期的に収益圧迫という2次的影響を受ける」ためだ。
アブフセイン氏は、欧州銀は日本と同じグループに入るだけでなく、むしろ「後れを取っている」という。その理由として、欧州銀は「日本の銀行が行ったコスト削減に手を付けていない」うえ、必要な「バランスシート(貸借対照表)の健全化」も実行していない点を挙げた。
By Laura Noonan(2016年9月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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