前半、指示を出すハリルホジッチ監督=バンコク(共同)【拡大】
「突破確率0%」などと煽られる中で迎えた6日のタイ戦は、そうした「日本サッカー限界説」と対峙する試合だった。最終予選で最弱と観られる相手に敗れるようなら、監督解任という形でのチームの終わりも見えてくる。その中で指揮官が先発メンバーの選考でどんな決断を下すのかは明確なポイントで、浅野拓磨と原口元気というチョイスは少し意外でもあった。
ベテラン選手にとっての正念場は、代表での地位を得んとする選手にとっては千載一遇の好機でもある。UAE戦での大島に続いて経験の浅い選手を起用する形になったが、浅野も原口も期待に応えた。どちらも攻守の切り替えがしっかりしており、ボールを持ちたがるタイへのプレッシングの急先鋒として機能。タイのシュート数がずっと0本で推移していたのは彼らが守備に強度をもたらしたからこそだった。
特に原口は傑出していた。強烈なドリブルの破壊力は急に身に付いたものではないが、ユニフォームを汚すことをいとわない姿勢と攻守の切り替えスピードは別次元の域にまで成長を遂げていた。ダイビングヘッドで決めた先制点を含めて、レギュラー定着への一歩を踏み出したと言ってしまっても、決して過言ではないだろう。
最初の一歩でいきなり滑落してしまった日本にとって、ロシアへの道はなお険しい。次はホームのイラク戦からアウェイのオーストラリア戦という流れで、後者が容易に勝てる試合でないことを思うと、前者での勝ち点3が再び「マスト」になってくる。日本代表が依然として難局にあり、チーム状態が芳しいものでないことは指摘するまでもない。タイ戦でも“おなじみ”の決定力不足に加えて、終盤は守備陣がミスを連発して無用の混乱を招くなど猛省すべき要素が盛りだくさんだった。
ただ、こうしたタフな状況が、チームと選手を育てていくことがしばしばあるのもサッカーだ。うまくいっていない、「限界」を感じさせるときに代表監督はフリーハンドを得るものでもある。今回浅野先発に踏み切った1トップはもちろん、香川や本田の使い方にメスを入れたとしても、そう多くの異論は出ないだろう(負けても叩かれないという意味ではないが)。
実績のない選手を使って「限界突破」を図るのは博打には違いない。とはいえ、このままのチームでW杯に行ったところで、どのみち勝算はあるまい。そういう意味での「限界」は確かに見えている。いつかどこかで打たねばならぬ一手なら、ここからさらに打っていくという考えもある。
文=川端暁彦(Goal.com)