「ゲーム脳の恐怖」という本がNHK出版から発行されました。日本大学森教授が執筆されたものですが、これの改善にお手玉遊びが役立つとのことでしたのでその掲載記事を探していましたところ、News Web Japan(http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/index.html) というHPに詳しく掲載されていましたので転載しました。
詳しくお知りになりたい方は以下のアドレスからお入り下さい。
10月23日号
http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2002_10_23/index.html
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男性にとってはうれしいような、目のやり場に困るような女性の過剰露出ファッションが流行りだして久しい。「見せブラ」などは当たり前。最近、目に付くようになったのは、たとえばかがみこんだ時にジーンズのウエスト部分からのぞいているパンツである。しかし、それがファッションとしての露出ではなく、無意識・無自覚でなされているとしたら、どうだろう? 実はここにも、外界に対する意識障害=「ゲーム脳」がかかわっているというのである。 |
■ ローライズパンツから始まった |
「コーディネイトをするときに、立ち姿は考えるけど、座ったときの姿なんて考えませんよ。だいたい下からだったら、まずいと思うけど、上のフチが見えている程度は気にしないし、それが赤だって、黒だって、見えてても、『まあ、いいか』って思いますよ。それにズボンだと、肉のたるみが浮き出るときがあるじゃないですか。お肉がたるんでるのを見られるよりは、(下着の)パンツの上を見られるほうがマシです。下着のパンツの線が見えるほうがよっぽど恥ずかしいですよ」(20代後半・女性会社員) パンツがのぞいてしまう主な原因は、2000年頃から流行り出した股上が浅いローライズ(lowrise)パンツだ。10代から30代、さらに40代の女性までもがローライズパンツを穿いている。 欧米から上陸したローライズは、アメリカの歌姫であるブリトニー・スピアーズ(20)がステージや撮影時によく穿いている。日本では、若い女性のファッション・リーダーとしても知られている浜崎あゆみ(24)やhitomi(26)が追随。 いつもローライズのジーンズを穿いているという20代後半のOLは、「男性の目などまったく気にならない」と言い放つ。 |
■ 自分の世界に陶酔 |
もちろん、男性からは「気にすべきだ」という意見もある。 しかし、女性からしてみると、脚が長くスタイルが良く見えるのは誰に見せるためでもなく、自分のためだという。 ファッション・コーディネイターの栗原登志恵氏は、日本人にとってローライズは着こなしが難しいという。 ローライズ用のパンツの値段は1500円から2000円強と、10代にとって下着としては少し高価で痛い出費だが、ノーブランドなら500円くらいのものも出てきている。
心理学者で法務省法務総合研究所の小柳武氏はこの流行を自己満足と分析する。 ローライズ用のパンツの売れ行きは上々、しかし、ローライズで若者は寸胴(ずんどう)になってきたと萩原みゆき氏(ワコール宣伝部)は、ワコール人間科学研究所の調査結果を解説する。 |
■ 脳の障害によるれっきとした病 |
外見としてのファッションではなく、人間の中身が変わってきたという説もある。理性の源である脳の前頭前野と人間の羞恥心は大きな関係があるからだ。脳の前頭葉の中にある前頭前野は記憶、感情、集団でのコミュニケーション、創造性、学習、感情の制御や犯罪の抑制を司り、さまざまな命令を出す司令塔である。 確かにここ数年、電車の中で化粧をしたり、道端や階段に座り込んでモノを食べている若者が目に付くようになり、羞恥心の欠如が叫ばれてきた。人の目を意識することのない若者たちが社会に蔓延(はびこ)る時代になったようだ。その延長にある社会とは一体どのようなものだろうか? 自己満足に閉じこもった独りよがりだらけの社会か、または価値観の多様性を尊重した成熟した社会か? ファッションでいえば、ローライズの次にやってくるブームがその答えをもたらすかもしれない。 |
10月30日号
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http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2002_10_30/index.html
先週のNews Web Japanでは「女性がパンツを見せる」原因として、ゲーム脳が関わっているということをお伝えした。しかし、ゲーム脳の恐ろしさはそれだけにはとどまらない。 「キレやすい」「集中力がない」「注意力散漫」「羞恥心欠如」「その日暮らし」「無気力」という症状がゲーム脳の特徴である。どこか思い当たるところがありませんか? |
■ 多くの嫌がらせも殺到 |
■ 老人性痴呆症と同じ脳波パターン |
そこで、森教授は大学生にゲームをさせて実験してみると、β波が出ない者もいたという。その結果、β波がゲームをしてもまったく変わらないタイプの「ノーマル脳」、ゲームをやると下がるタイプの「ビジュアル脳」、β波が不安定で上下している「半ゲーム脳」、最初から低いタイプの「ゲーム脳」という四つのパターンに分類できたという。この中のβ波が低いタイプは痴呆症の脳波パターンと同様だったという。痴呆症の患者は前頭前野が働かなくなるということは定説になっており、実際、前頭前野の脳波の活動を示すβ波が低かったのである。 「ノーマル脳」のタイプ: 「ビジュアル脳」のタイプ: 「半ゲーム脳」のタイプ: 「ゲーム脳」のタイプ: 「β波は脳の局所的な活動なんです。前頭前野が活動すればβ波がでる。あるいは聴覚野でも音を聴いていればその部分のβ波がでる。脳の局所の部分の興奮を反映しているのがβ波なんです。β波の興奮度が高くなれば、脳が活発な活動しているという目安になる。逆にそこの活動性が悪くなればβ波は低下します。そこで、研究を進めていると、痴呆の方はβ波が低いという結果が出た。高齢者の場合、前頭前野から働きが低下していくのです」 森教授は、携帯メールを長時間やっている人やホラー映画やビデオを長時間見ている愛好者も前頭前野のβ波が低下しているという結果も得た。若くして前頭前野の働きが悪くなることを「若年性痴呆症状態」として、高齢者の痴呆症と同じ状態だと結論づけている(『ゲーム脳の恐怖』NHK出版)。これらの研究結果は、11月3日にアメリカ・オーランドでの脳神経科学会で発表され、それと同時にアメリカの全マスコミで公開されることになっている。 |
■ 前頭前野がにぶるとIQが落ちる |
ゲームが精神に悪影響を与えることは、残虐な少年事件が起こる度に囁かれてきた。1997年に日本中を震撼させた「酒鬼薔薇聖斗」事件がある。「さあゲームの始まりです 愚鈍な警察諸君 ボクをとめてみたまえ ボクは殺しが愉快でたまらない」という1通の挑戦状とともに土師淳君の頭部が中学校の正門に放置された。大人たちは「何故、こんな残虐なことを少年が……」と衝撃を受けた。ゲームの影響が行為に現れた事件といっていい。しかし、事件化しないまでも、ゲームは若者たちの脳に深く広く影響を与えていたのだ。 『平然と車内で化粧する脳』(扶桑社)で前頭前野と羞恥心の関係を結論づけた北大医学部の澤口俊之教授は、最近の若者の様子をこう危惧する。 さらに澤口氏は前頭前野の働きの低下で、社会に適応できない人が増えているという。 “すぐそこにある危機”は経済だけではなかったのである。このままでは、もし万が一、不良債権処理が何とかうまくいっても“日本沈没”は間近である。 11月13日号では「チェックリストであなたの脳を検証する」をお送りします。 |
11月13日号
http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2002_11_13/index.html
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ゲーム脳に関する問題を2回にわたって特集してきましたが、「2ちゃんねる」を含め多くの反響をいただいています。今回は青少年のみならず、日本を侵蝕しつつあるゲーム脳のメカニズムにより詳しく迫り、対処法のヒントにもなる簡易リストであなたの脳をチェックします。 |
■ 言ってもわからないヤツが急増のわけ |
内閣府の『青少年とテレビ、ゲーム等に係る暴力性に関する調査研究報告書』によると、ゲームで遊ぶ頻度が高い青少年ほど、暴力経験が増えるという結果が出ている。親からの無干渉といった要素もあるにせよ、テレビゲームの遊戯時間と暴力経験に相関関係が認められたのだ。(グラフ) 世界で最初に、脳の働きに対するゲームの影響を発表した東北大の川島隆太教授は、犯罪抑制力には前頭前野が重要な役目を果たすという。 前頭前野が退化すると学習能力の低下も招きかねないと日大大学院の森昭雄教授は警鐘を鳴らす。 |
■ テレビもコミュニケーション障害を生む |
ゲームだけではない、長時間のビデオやテレビの視聴も前頭前野に良い影響を与えないということが分かってきた。 「NHKが“新しいタイプの言葉遅れ”について、私のところに取材しにきたことがありました。コミュニケーションがとれない子供が増えているということで、事例を紹介してほしいということでした。事例を、スライドで全部説明しました。
『セサミストリート』についてもストーリー性がないため、幼児が見ても興奮するだけと指摘しておきました。取材した人は納得して帰られましたが、結局番組にはならなかったようです。 |
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■ 脳を活性化するゲームを考えよう |
子供だけではない、最近キレる大人も急速に増えている。警察庁の発表では刑法犯が平成8年以降、6年連続して戦後最悪数を更新しつづけている。経済的な不況でリストラや失業が蔓延し、国民の中に逼迫感が充満していることも原因の一つと思われる。 川島教授は大人がキレるのも前頭前野が働かないからだと解説する。 前頭前野が成長している幼児期を含めて、そこが正常に発達しないと中学生・高校生、さらには成人になっても目的意識、計画性のないその日暮らしの人間が増えてくることになる。しかし、今の日本の文化ではゲームを完全シャットアウトするのは無理である。川島教授はゲームの種類によって判断すべきと話す。 ところであなたは最近キレやすくなっていませんか? 大人でもあり得るゲーム脳かどうか、簡易チェックをしてみましょう。「正確に調査したいという場合は詳細なデータが必要」(澤口教授)なことは言うまでもありませんが、この項目が前頭前野を働かすヒントにもなっていますので、ぜひお試しを。 さて、簡易チェックの結果はいかがだろうか? 少しでもゲーム脳の傾向があった場合は、次週の“ゲーム脳から脱する法”を待ってもらいたい |
11月20日号
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http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2002_11_20_2/content.html
前頭前野が正常に機能しない、いわゆるゲーム脳の危険について3回にわたって特集してきましたが、今回はそのソリューション(解決)編です。先週号の「簡易チェック」で「あなたは、注意が必要です」「あなたは、完璧に危険です」という診断結果が出た方々、お待たせしました。ご安心ください。努力すれば前頭前野は発達します。今回は実例と共に前頭前野を活性化させる方法をお伝えします。 |
■ お手玉による回復の実例 |
「お手玉をやったことにより、実際にゲーム脳が完全に回復しました」 お手玉がゲーム脳克服方法として見出されたキッカケは、学生からの“ゲーム脳患者”がいるとの通報だった。 この学生は、自分でもゲームのやり過ぎが元になって異常をきたすという因果関係がわかっていたという。そこで、彼にブロック(積み木)をやらせてみた。しかし、森教授が開発した脳波測定器(ブレインモニタ)の反応は、β波が微かに上がっただけでゲーム脳の状態は解消されなかった。 「お手玉は集中しないとできませんので、やらせたんです。そうしたら2週間でβ波が通常値にあがりました。しかし、すぐ元に戻ってしまい、安定しなかった。そこで3〜4ヵ月継続的にお手玉をやらせてからまた脳波を取ったら、今度はかなり安定してきたんです。ただまだ突然、意識がふっと消えたりするんですけどね。ゲーム脳の人は目の焦点が合わなくて、高齢者のようにぼうっとした表情になるときがあるんです。そのときは脳波がスーっと落ちるのですが、普通の人にはそういう症状は絶対に起こらないんです。今、10ヵ月近く経過しまして、脳波の状態も完全に安定し、人間も変わり、明るくなりました。よくしゃべるし、笑うし。友達からも変わったと言われ、自分自身も変わったと。誰が見ても変わったとわかるんです」 これまで360人のβ波をサンプルとして調べたが(10月30日号NWJ)、前頭前野にβ波が出にくく、ゲーム中になるとまったく出てこないゲーム脳の人が2割いたという。これらの人は総じて1日2時間以上ゲームで遊んでいた。 そうしたゲーム脳を治癒する“特効薬”はお手玉にあったのだ。 |
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■ ゲームは“癒し”でもあった |
一方、東北大の川島隆太教授は前頭前野を発達させるためには、読み書き計算が効果的だという。 「多くのコンピュータゲームは、前頭前野をあまり刺激しないということが科学計測ではっきりと現れています。ただしリズム・アクション系のゲームですと右脳は活性化されますし、一部のロールプレイング・ゲームでも前頭葉の活性化が認められています。それでもコンピュータゲームと大きく括ると、その7割から8割においては前頭前野は活性化しないんです。いい面としては視覚的な情報処理をする脳の部分は非常に活性化されますので、そこを鍛えることはできます。ただし、人間が人間らしい気持ちを持つ、コミュニケーションをする、ものを考えるという大事な作業をする前頭前野という器を育ててくれる刺激ではないといえます。人気が出るかどうかは別ですが、前頭前野を大いに活性化するようなゲームをゲーム会社が開発してくれれば、話が変わってきます」(前出・川島教授)
ゲームを有効に利用することも不可能ではないのだ。川島教授はゲームをしている時の脳と“癒し”時の脳の血流状態が酷似していると言う。 前頭前野の活発な活動のリミットは、人がどのくらい集中できるかということで計ることができる。集中力は大人のレベルでも40〜50分くらいで切れてしまい、1時間が限度だという。教育の現場で言われる集中力は、小学生では学年×10分がMAXだ。 「体の筋肉と置き換えてみるとわかりやすいのですが、使いっぱなしでは疲れてきて、効率は落ちますよね。そのために筋肉の中に乳酸がたまってきたら、私たちは苦痛を感じて休みをとるというシステムができています。脳もそれと一緒ですよ。疲れたなと思ったら、5分から10分脳がリラックスするような休みをとればいい。前頭前野を休ませるためにゲームをするというのは、有効だと思いますよ」 |
■ IQではなくPQの時代 |
北大の澤口俊之教授は、これからはゲーム問題に対して国家的プロジェクトとして対処したほうがいいと提案する。犯罪とゲームの深刻な関係も心配されているが、政府と企業と大学とが一体となって取り組まなければならない深刻な事態なのかもしれない。 ゲーム脳にはゲームで。「ゲーム立国」日本としては世界に先がけて研究を進め、前頭前野を刺激し、ゲーム脳にならないゲームを開発してもらいたいものだ。 |