武道談義

武道な小説あれこれ


さて、本日は俺が今まで読んできた武道な小説についてお話ししましょう。

俺は本が好きである。漫画を読むのも、テレビを見るのも、映画を見るのも好きだが、一番最初に覚えたのは本を読むことである。
もともと、我が家には「少年少女世界名作全集」という分厚い本が50冊があり、幼き俺はテレビを見ることを禁じられていたため、その本を読むしかなかった。
おかげで本を読むことにはそれほど苦にならなくなったものの、名作をダイジェストで味わったためもう読んだ気分になって、本物を読まなくなってしまった。


そんな中、いちおう「三国志」だけは後に吉川英治のものを読んだ。これが初めて読んだ武道小説のような気がする。
果たして「三国志」が武道小説かどうかはおいといて、とりあえず今まで読んできた中でめぼしい武道小説を紹介してみよう。


「宮本武蔵」吉川英治

もっとも、武道臭い話である。この中において武蔵はまるで修行僧や求道者のような人物として描かれており、剣の道を求めて修行するのである。
この本は、俺の父親が影響を受けたらしく、俺に全3巻の本を買ってくれた。小学生の時かな?
最初に読んだ感想は「あんまり面白くないな」というものであった。
当時の俺は、大河ドラマで「独眼竜政宗」をやっていた影響で、山岡荘八の「伊達政宗」にはまっており、戦国ものっぽいのが好きだったのだ。
そのため、あまり理解できなかったと思われる。その後2回ほど読み直したが、第一印象は拭えず、魂の愛読書にはなることが出来なかった。
ちなみに最近、井上雄彦が「バガボンド」という漫画を書いている。吉川英治原作の宮本武蔵の漫画なのだが、これはかなり面白い。こっちは魂の漫画になりそうだ。

余談であるが、宮本武蔵の著作に「五輪の書」がある。
武道マニアな俺は当然目を通してある。
こちらは、大学に入ってから読んだのだが、なかなか面白く読めた。俺は剣道が出来ないので、その心構え、体の使い方などを空手に置き直して考えたりしたものだ。
ちなみに、柳生宗矩の「兵法家伝書」も五輪の書と並べられる兵法書であるが、より心構えについての記述が多く、途中で飽きそうになってしまった。

さて、宮本武蔵を読んだ方は一応坂口安吾の「青春論」にも目を通しておくべきである。武蔵をコキオロシている。俺も友人に勧められたのだが、なかなか面白く読める。


「燃えよ剣」司馬遼太郎

新撰組ファンのバイブルといえる本である。俺の魂の一冊です。
俺は子供には宮本武蔵ではなく、この本を薦めるであろう。
土方歳三が、田舎の剣術道場の一剣士から、新撰組副長になり函館に散っていく一生を描いたものである。
なにしろ、俺は近藤勇の生まれた地で育ったんで、新撰組が好きなのである。
といっても別に地域をあげてお祭りがあるわけではなく(あるのは水木しげる)たまたま好きになっただけだが。
この本の中での土方歳三は宮本武蔵よりもわかりやすい思考をしているので、俺にも理解できた。
武蔵のような求道者は真似しようと思っても真似できない(大山総裁は別)、しかし、土方は我々と同じ人間であるということを主張するがのごとく悩み戦う。
また、己が強くなる以外のことでもいろいろと悩む。その辺が面白かった。
是非一読を勧めます。

さて、司馬遼太郎で他におすすめは、「新撰組血風録」「北斗の人」「世に棲む日々」など。
「北斗の人」は北辰一刀流の千葉周作の話。「世に棲む日々」は吉田松陰と高杉晋作の話。
俺は司馬遼太郎本人はあまり好きではないが、彼の書く本はやはり面白いと思う。
俺が大学で史学を専攻したのも彼の本の影響があるかもしれない。

「柳生兵庫助」津本陽

日本空手協会のN先生から薦められた本。
いろいろな剣豪と兵庫助が対決していくが、兵庫助強すぎ。宮本武蔵にも優勢勝ち。
しかし、間合いなどといったことが重視されており、武道小説としても楽しめる。
津本陽には、大東流の武田惣角のはなし「鬼の冠」、不遷流の武田物外のはなし「拳豪伝」などがある。
ただ、どちらかというと、娯楽小説であり主人公が基本的に強すぎるので、暗い話の好きな俺にはあわないところがあった。
しかし、それだけに爽快な読み応えである。


「孤拳伝」今野敏

これぞ武道小説といえる本。
主人公は中国拳法の使い手。苦労をしながら強敵を破っていく。
そして登場する格闘家も千差万別。空手家、ボクサー、古武道家、ムエタイ、傭兵。
この本を読み終えると格闘技の知識がけっこうアップする。
お気に入りなのは、沖縄編で古流空手が出てくること。感動です。
全10巻、これを読み終わると中国拳法がとても強そうに思える。小説版「拳児」ってとこかな。
この作者は、ほかにも「惣角流浪」と言う武田惣角のものも書いている。
道場を開いている空手家でもあるらしい。

「獅子の門」夢枕獏

格闘技小説の先駆者(らしい)夢枕獏の作品です。
彼の格闘技小説としては「餓狼伝」が有名ですが、俺は「獅子の門」がイチオシです。
格闘技としてのリアリティを追求した「餓狼伝」とは異なり「獅子の門」はロマンがあります。
まぁ、気とかは出ないけどそれに近いものがある「餓狼伝」というものです。
ただ、問題がひとつ。
夢枕獏はすでにこの作品のことを忘れているでしょう。4巻以降が出る気配がありません。
残念です。

夢枕獏の他の作品と言えば「キマイラ」シリーズ。こちらは気が出ます。あと、仏教、中央アジアフリークにはたまらないでしょう。そう、俺のことです。
ほかにも、「サイコダイバー」シリーズの文成仙吉などは強いです。あぁ、関係ないですね、強さは。
「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」も、面白いです。社会人になったら読み直します。



後は番外編
他の武道小説をすぐには思い出せません。
思い出したら、また書きます。
というわけで、ちょっとでも武道っぽい奴を


「エイリアン」シリーズ 菊池秀行

菊池秀行です。この人のキャラクターは無茶苦茶です。新宿のせんべい屋が糸操ったり、ドラキュラの息子が剣ふりまわしたり。
もう人間業じゃありません。そんな中でエイリアンシリ−ズの八頭大だけは職業は人間離れしてますが、運動能力はオリンピック選手止まりです。それでも凄いけど。
日本舞踊の人にやられそうになったり、剣道部の主将とかとやり合ったりするときもあります。イヤー、ほほえましい。
菊池秀行の書くキャラでこんな人がいただろうか?いや、いない。とおもう。
しかし、菊池秀行は最近読んでいない。最後に読んだのは、菊池秀行が武道界の達人と対談するもの。けっこう面白かったような気が。


「アルスラーン戦記」田中芳樹

もうネタがない。アルスラーン戦記に出てくる武将でダリュ−ンというのがかなり強かったような、一騎打ちの場面で剣を折られても敵を倒すところが武道っぽいと思った。
田中芳樹の小説では「銀河英雄伝」が面白かった。シェーンコップという男がつよかった。
それはさておき、最近田中芳樹が量産している中国ものは、たいてい読んだあと記憶の彼方にいってしまうが、唯一覚えているのが「風よ、万里をかけよ」である。
主人公は男装の麗人、花木蘭、隋末唐初の話である。最後もきれいにまとまって、良い小説である。ちなみに沈光という武将がなかなか強い。


「古事記」太安万侶

いわずとしれた日本神話。
スサノオが人間離れして強い、あっ、神か。
そのほか、タケミカヅチもタケミナカタを諏訪湖まで押し出しにするほど相撲が強い。
さすが武の神様。ただ、もう一人の武の神様のフツヌシの噂はきこえない。何やってんだろう。
後、強いというかずるいのがヤマトタケル、相手の剣を木剣にすり替えたり、女装したり、正々堂々とはほど遠い。でも勝てばいいのかな。

「聖書」

いわずとしれた聖書。
強い奴がけっこう埋もれています。
まずはヤコブ。このひとは、天使と取っ組み合いをして引き分けてます。というか天使が逃げました。すごいっすね。
そして次にサムソン、超怪力で柱は引き抜くは、骨で人を殴りコロスは、むちゃ強いです。そんな彼も髪の毛を剃ると力が出なくなるというお茶目な面を持っています。
後はダビデ、少年の時に大男ゴリアテと一騎打ちしてます。しかも投石機だけで勝っちゃいます。王様になる奴は違うね。
まだ、いるかもしれないけど聖書は読むのを途中で挫折してしまったのでこの辺で。

 

とまぁ、そんな感じで武道な小説は世の中にいっぱいあります。
もし、みなさんも良い武道な小説を見つけたら俺まで連絡下さい。

それでは。