厳しい国際情勢下とはいえ、防衛予算を際限なく増やしていいわけはない。軍拡競争の泥沼に陥らないためにも適切な歯止めが必要だ。防衛力整備に、いま一度「節度」を取り戻すべきである。
防衛予算の二〇一七年度概算要求は、米軍再編関係費などを含めて過去最高の総額五兆千六百八十五億円。安倍晋三首相が再び政権に就いて編成した一三年度以降、五年連続の前年度比増である。
一七年度概算要求には、新型三千トン級潜水艦(一隻七百六十億円)、F35戦闘機(六機九百四十六億円)、垂直離着陸輸送機オスプレイ(四機三百九十三億円)など巨額の防衛装備品(武器)取得を盛り込んでいる。
いずれも中国の海洋進出活発化に伴い、周辺海空域や島しょ防衛の強化を目的としたものだ。
また、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応し、ミサイル防衛関連経費千八百七十二億円を計上した。
国民の命と暮らしを守る使命を果たすため、防衛力を適切に整備するのは政府の役目ではある。
ただ、財源には限りがある。五兆円を超える巨額な予算だ。そもそも防衛予算はどの水準が妥当なのか、社会保障や教育など、ほかの予算とバランスは取れているのかなど、精緻な検証が必要だ。
安倍内閣は一三年十二月に閣議決定した中期防衛力整備計画で一四年度からの五年間の防衛予算の総額を「二十三兆九千七百億円程度の枠内」と定めている。
しかし、このまま防衛予算が増え続ければ、当初予算だけで二十四兆円弱という枠を突破する。毎年二千億円程度の補正予算分を含めればさらに膨れ上がる。
安倍政権が昨年成立を強行した安全保障関連法との関連も気掛かりだ。自衛隊の活動範囲が広がれば新たな装備や訓練が必要だ。政府は否定するが、防衛予算の膨張が避けられないのではないか。
政府は防衛費を国民総生産(GNP)比1%以内に抑える枠の撤廃後も「節度ある」防衛力整備の方針を堅持してきたが、安倍内閣が一三年に決めた新しい防衛大綱からは「節度」が消えた。
国際情勢の変化を理由に防衛力を増強し、軍事大国化の意図ありとの誤ったメッセージを発信すれば、周辺国に軍備増強の口実を与え、逆に緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。
地域の安定には、あくまで抑制的な対応と外交努力が必要だ。先の大戦のごとく軍事予算を聖域化する愚を再び犯してはならない。
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