HOME > レビュー > 【麻倉怜士のIFA 2016報告】Vol.06 音楽のイマーシブ化。Embrace Audio Labの「Xround」
2016年9月 7日/麻倉怜士
今年4月に香港で開催されたIFA 2016 GPC(Global Press Conference)で取材した台湾のスタートアップのオーディオ・ベンチャー企業が、IFAでサラウンド・エンハンスメント技術の商品化を発表。
いまオーディオ市場のトレンドとして、ハイレゾ化に並ぶもうひとつ動きが、「イマーシブ化」(『没入』の意味。サラウンドを指す)。音への没入感を高めるため技術開発が盛んになっている。
後者のひとつが、台湾・新北市のオーディオ系ベンチャー、Embrace Audio Lab社が開発したXroundテクノロジーだ。同社はオーディオ用DSP、ファームウェア、ハードウェア設計のエキスパートにより2015年に設立された。
「自動車用ハンズフリー電話用のDSP、カーナビの音響用DSPの経験者もいます。われわれの強みは、多方面の音響DSP技術が結集していることです」とCEOのペング・リー氏は言う。
Xroundテクノロジーは、2チャンネル入力をサラウンドに拡張する技術だ。2チャンネルのステレオ信号を解析し、その中に“隠された”サラウンド成分を取りだし、元の2チャンネル信号に加味することで、5.1チャンネル的な後方方向性を持った仮想サラウンドサウンドを再生する。ペング・リー氏が解説する。
「2つのスピーカーから、片方の耳には通常、順側チャンネルの音だけでなく、逆側のチャンネルの音(クロストーク)も到達します。
XroundテクノロジーではDSP処理でクロストーク成分を大幅に低減し、ピユアな音道をつくります。つまり右耳には右のスピーカーだけの、左耳には左のスピーカーだけの音が到達するのです。
そこに処理したサラウンド成分を載せます。入力された2チャンネル音声を時間軸方向に細かく刻み、位相成分などを分析し、各種の伝達関数も考慮し、ほとんどリアルタイムで、サラウンド信号を生成しています。
ユーザーは、DolbyやDTSといった、エンコード・サラウンド信号無しに、2つのステレオスピーカーや、ヘッドホンにて、サラウンドが楽しめます。対応する音声フォーマットは、現在は48kHz/24ビットですが、近い将来、96kHz/24ビットのハイレゾにも拡張する計画です」
つまり2つのスピーカーのみで、サラウンドを演じる仮想サラウンド技術のひとつだ。
製品展開は2つの方向だ。ひとつがゲームセンターなど遊戯施設向けの業務用サラウンドプロセッサー。「ENGINE」という名前で商品化した。日本のゲームメーカーとも取引を進めているという。
民生用としては、携帯プレーヤーやスマホと共に使う超小型のスティックタイプの外付けサラウンド・オーディオプロセッサー「XPUMP」をIFAで発表。本体の両端に3.5mmミニプラグを搭載。片側を携帯プレーヤーやスマホからアナログで接続。反対側にデスクトップスピーカーやヘッドホン/イヤホンをプラグインして、聴く。
2チャンネルは当然、2つのスピーカーに間に音場ができるわけだが、Xroundをオンにすると、後方、側方にあるべき音像は後方、側方から聞こえる。現在の商品はアナログ出力のみだが、次期商品は光デジタル端子を備えたいとしている。
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