中国の習近平国家主席は5日、浙江省杭州市で行った韓中首脳会談を「大韓民国臨時政府当時、韓国の有名な指導者である金九(キム・グ)先生が浙江省で闘争を行い、中国国民が金九先生を保護した。金九先生の息子である金信(キム・シン)将軍が1996年に杭州郊外にある海塩を訪問した際、『飲水思源、韓中友誼』という書を残した」という発言で開始した。
「飲水思源」は「水を飲み、その源を考える」という意味で、中国・南北朝時代の文学者、ユ信(ユはまだれに臾)が滅亡した祖国・梁を懐かしんで書いた「徴調曲」の一節だ。「祖国を忘れない」という意味合いがあり、韓国の独立運動家、金九(キム・グ)先生が座右の銘とし、朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が正修奨学会に贈った揮毫にも記したことがある。飲水思源は「あらゆることの根源を思い、感謝しよう」という意味とも受け取れる。
習主席が韓国の抗日闘争を中国が支援したという文脈でこの成語を用いたのは、「誰のおかげで今の韓国があるのか考えろ」と促す狙いがあったと解釈可能だ。昨年12月に韓日間で慰安婦問題に関する合意が成立し、今年7月には韓米間でTHAAD配備が決まった現状で、韓国に対し、「米日と中国のどちらが韓国を助けたのか、ちゃんと判断しろ」と迫った格好だ。
習主席が韓中首脳会談で歴史を持ち出し、余韻を残したのは今回が初めてではない。2014年7月に韓国を初めて公式訪問した習主席はソウル大で中国の国家主席としては初めて大衆向けに演説した。演説では「明のトウ子竜将軍(トウは登におおざと)は朝鮮王朝の李舜臣(イ・スンシン)将軍と共に露梁海戦で殉職し、明軍の総司令官、陳リンの子孫が今でも韓国に住んでいる」と述べ、金九先生、尹奉吉(ユン・ボンギル)義士にも言及した。
光州出身で日帝(日本帝国主義)による強制占領期に中国に渡り、北朝鮮軍も好んで歌う人民解放軍軍歌を作曲した鄭律成(チョン・ユルソン)にも言及した。習主席は日本の韓半島(朝鮮半島)侵略の歴史を引き合いに出し、「そんな国と共にいられるのか」と問いかけた格好だ。
習主席の演説に登場した人物を見ると、抗日以外にも「韓中関係の根源を考えろ」という遠回しなメッセージを読み取れる。習主席は13年6月、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領による初の中国公式訪問、14年の自身による初の韓国公式訪問の際、いずれも統一新羅末期の文人、崔致遠(チェ・チウォン)を韓中友好のモデルとして取り上げた。
崔致遠は12歳で唐に留学し、科挙に合格後、官僚生活を送った。唐に反抗し農民反乱を率いた黄巣を討伐すべきと主張する「討黄巣檄文」でも知られる。このほか、習主席は新羅の王出身で唐に渡った僧侶、金喬覚(キム・ギョガク)、孔子の54代目で高麗の恭愍(コンミン)王と結婚した元の魯国公主(ノグクコンジュ)に従い韓国に来た孔紹などを韓中友好の象徴として取り上げた。