また、EU内での難民の受け入れ分担については、10月2日にハンガリーで受け入れの是非を問う国民投票が予定されている。ハンガリー国民の多くは受け入れに否定的で、難民危機対応をめぐってはEU内での意見対立も再び表面化しそうだ。
メルケル首相は、来年秋の連邦議会選挙でCDUの首相候補として4選を目指すかについて、然るべき時期に発言するとし、まだ出馬の意向を表明していない。難民危機対応への不満を募らせるCSUの支持が得られないため、来年春以降に出馬表明を見送るとの見方も一部に浮上していたが、メルケル首相は今月2日、CDUの次期党首が首相候補になるべきと発言した。12月4―6日のCDU党大会の前後で出馬を表明する可能性が高い。
今のところ来年秋の連邦議会選挙でのCDUの優位は揺るがないが、今月11日のニーダーザクセン州の市町村議会選挙、同18日のベルリン市(州に相当)議会選挙、さらには来年3月と5月に予定される3つの州議会選挙でも、CDUの苦戦が続くようだと、CDU内でメルケル首相降ろしが始まる恐れもある。
最近の世論調査ではメルケル首相の続投に反対する回答が50%に達している。党内に有力な対抗馬はいないとされるが、万が一、メルケル首相が続投を見送れば、ドイツのリーダーシップをめぐる不透明感が市場の動揺を誘う恐れがある。
*田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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